福島 Jヴィレッジ付近に新駅構想、その目的は? 原発事故からの復旧受けJR常磐線に
福島第一原発事故の影響によるかつての避難区域内に、JR常磐線の新駅構想が浮上しました。なにを目指しているのでしょうか。
あの「Jヴィレッジ」、もともとはサッカー施設
福島県内を走るJR常磐線に、新しく駅を設置する動きが浮上しました。福島県双葉郡の8町村で構成される双葉地方町村会が2017年11月、県に要望したもので、場所は広野町と楢葉町にまたがるサッカー施設「Jヴィレッジ」付近といいます。
Jヴィレッジは東京電力などの出資で建設、運営されていた施設です。2011(平成23)年3月に発生した福島第一原子力発電所事故ののちは、その収束に向けた作業のための拠点として活用され、一時は東京電力福島復興本社も置かれていました。原発事故後、楢葉町、広野町ともに全町避難を余儀なくされていましたが、広野町では2012年4月、楢葉町では2015年9月に避難指示が解除されました。
かつて常磐線特急「スーパーひたち」に使われた651系電車。現在は、いわき〜竜田間で普通列車として走っている。写真はイメージ(画像:photolibrary)。
双葉地方町村会に、新駅構想について詳細を聞きました。
――新駅はどのような場所に造るのでしょうか?
Jヴィレッジ付近ではありますが、具体的な場所は今後JRさんと詰めていくことになります。Jヴィレッジは楢葉町と広野町にまたがっており、原発事故後、この付近は福島第一原発から半径20km圏内に位置する「避難指示区域」と、30km圏内に位置する「緊急時避難準備区域」の境目になっていました。
――なぜ新駅を設置するのでしょうか?
避難指示が解除され復興を進めるなかで、(広野町、楢葉町が属する)双葉郡を象徴する施設であるJヴィレッジの利便性を向上させる目的があります。駅から距離があるため、これまで施設利用者はおもにバスを使っていました。
Jヴィレッジは2019年の施設全面再開(一部は2018年夏に再開予定)に向け復旧工事に着手しており、あわせてサッカーJ1の公式戦が可能な規模に拡張することが計画されています。日本代表の合宿なども行われるようになるかもしれません。Jヴィレッジの再開と新駅の設置が、交流人口の増加に寄与すると考えています。
進む復興 新駅には通勤・通学需要も
――現地の状況はいかがでしょうか?
住民の方も戻ってきており、新駅の設置は、いわゆる「交通弱者」の通院や買い物などを助けられると考えています。Jヴィレッジ付近にある広野火力発電所(東京電力のグループ会社が所有)の通勤需要が見込めるほか、広野駅付近に高校も新設されましたので、その通学需要もあるでしょう。
――現在の進捗と今後のスケジュールは?
県知事に対して要望したばかりですので、新駅の設置やJヴィレッジの拡張についても、具体的にはこれから検討していきます。ただ、いずれの要望も2020年東京オリンピック・パラリンピックまでの整備を主眼に置いたものです。国が掲げる「復興オリンピック」という趣旨にも合致することと考えています。
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JR常磐線は東日本大震災ののち、福島県・宮城県内における多くの区間で不通となりましたが、Jヴィレッジ付近を通る広野〜竜田間は2014年6月に運転を再開しました。JR東日本は、2020年3月までに富岡〜浪江間を復旧させ、全線で運転を再開させる見込みです。
【地図】新駅設置が構想されているJヴィレッジ付近
福島県広野町と楢葉町にまたがる区間で、常磐線の駅間では広野〜木戸間にあたる(国土地理院の地図を加工)。