ドイツ、ボンで開かれていた国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP23)は、2020年以降の国際的枠組み「パリ協定」実行へのルール作り交渉の加速などを織り込んだ宣言を採択し閉幕した。

 しかし、ドナルド・トランプ米大統領が、協定脱退を表明、途上国の温暖化対策を支援する基金拠出を取りやめる方針を示すなか、先進国による資金支援が十分行われるのかという懸念が頭をもたげる会議ともなった。

 開催に合わせ、欧州などの研究チームは、世界の二酸化炭素排出量が、今年4年ぶりに増加に転じるとの予測を発表。

 最大の排出国中国での石炭消費が主な要因で、第2の排出国米国は減少しているものの、トランプ大統領は石炭産業拡大政策を進めているのが現実だ。

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氷の下に隠されていた恐ろしい生物

 アラスカ州、アリューシャン列島の港町ダッチハーバー。温暖化の影響など、シロイルカの生態研究のため、カニ漁船でベーリング海へと繰り出した大学教授と大学院生たち。

 ソナーを使って調査していると、氷下に正体不明の物体を発見する。引き上げてみると、それは氷結していたソ連の月着陸船。

 そんな宇宙船から飛行士の遺体が消えた。次々と未知の生命体に襲われる人々・・・。

 ベーリング海の漁業拠点、ウナラスカ島ダッチハーバーから始まる『X-コンタクト』(2015)は、冷戦時代のソ連の放射線耐性実験の産物が人々を襲うホラー。

 図らずも氷下から取り出してしまった有害体を葬るには、再び氷に閉ざされた海へと戻し氷漬けにするしかない。

 アラスカ沖で、90キロほどで陸を分断しているベーリング海峡は、100メートル以上海面が低かった2万5000年前から1万2000年間、1500キロほどの陸橋「ベーリンジア」だった。

 紀元前10000年頃、「温暖化」によりベーリンジアが水没してしまう前、現生人類はユーラシアからやって来たと言われている。

 国防上重要な役割を果たす地でもあるアラスカだが、もともと、ロシアの探検家によって「最初に発見」され、1741年に海峡にその名を残す探検家ヴィトゥス・ベーリングが「再発見」、やがて「ロシア領アメリカ」となったという経緯がある。

 しかし、植民地経営は利益を生まず、1867年、クリミア戦争に敗れ、財政的に窮したうえ、英国に奪われる危険を感じ、米国に720万ドルで売却したのである。

 その交渉をまとめた米国側代表がウィリアム・H・スワード国務長官。当時、米国民から「巨大な冷蔵庫を買った」などと痛烈な非難を浴びた。

 そんなスワードの名のつく半島にあるアラスカ西の果ての町ノームが、19世紀末になり俄かに人々の関心を集めるようになる。

 ノームの町に、サンフランシスコから船が到着した。酒場を経営するチェリーは、乗船しているはずのロイを迎えに出た。しかし、若い女性と一緒にいるのを見てご機嫌斜め。女性は判事の姪ヘレンだった。

 「gold commissioner」マクナマラは判事と組み、ロイの金鉱を横取りしようと企んでいた。所有権をめぐる裁判となっても、判決を待つ間、鉱山が生み出す25万ドルを横取りしてしまおうという魂胆だった・・・。

カナダで始まったゴールドラッシュ

 1896年、カナダ、ユーコン準州クロンダイク地方で金発見、さらに99年にはノームでも見つかり、ゴールドラッシュが始まった。一攫千金狙いの「Prospector」と呼ばれる探鉱者が、シアトルやサンフランシスコから船に乗ってやって来た。

 そんななかの1人レックス・ビーチが書いたベストセラー小説の映画化がこの『スポイラース』(1942)。ノース・ダコタの政治家アレクサンダー・マッケンジーが仕組んだ陰謀の実話をベースにしている。

 ゴールドラッシュに沸く地にあとからやって来た者たちは、すでに発見した者を妬み、同じ土地を含む鉱業権を申告して、横取りしようと企んだ。そんな「Claim Jumping」と呼ばれる手法に、政治的影響力を悪用する「権力者」も少なくなかった。

 マッケンジーはのちにサンフランシスコで行われた裁判で有罪となり収監されるが、結局、ウィリアム・マッキンリー大統領の恩赦で釈放されている。

 ノームのゴールドラッシュは10年余りで終わった。

 幸運なProspectorは金を得た。暴利を貪った「権力者」たちもいた。スワードの業績も再評価された。

 しかし、白人から差別を受け、彼らの食糧とされたカリブー、鮭なども減少、伝統的生活を踏みにじられた先住民たちには、ただの環境破壊でしかなかった

 北の果ての地の権力の腐敗を描く冒険小説「スポイラース」が人気を集めた1906年、大都会の食肉業界の不正を暴いたアプトン・シンクレアの「ザ・ジャングル」も世の関心を引いた。

 そのシカゴの巨大食肉工場の不潔な環境とリトアニア系移民労働者のどん底生活描写は世にショックを与えた。

 読者の驚きと非難の声は、時の大統領セオドア・ルーズベルトを動かし、すぐさま調査が命じられた。そして、連邦政府は新規制機関、アメリカ食品医薬品局を創設、純正食品・薬物法と牛肉検査法も成立した。

(1914年には映画化され、冒頭とエンディングにシンクレア自身出演もしているというが、フィルムは失われ、いま、見ることができないのが残念である)

 こうした、政治腐敗、巨大企業の不正、スラムの生活、差別など、社会の暗部を告発するシンクレアのような物書きたちは、「Muckraker(肥し熊手を使う人)」と呼ばれ、世論を喚起する存在だった。

世界の工場となった米国

 南北戦争後の急速な経済成長は、現代米国の基盤を作った。石油や電力といったエネルギーの恩恵を受けた第2次産業革命で工業インフラも急速に発達、米国は英国を抜き去り、「世界の工場」の地位を得た。

 経済界は「レッセ・フェール(自由放任)」の原則を貫き、長く続いた共和党政権下、連邦政府も、民間にあまり関与しようとしなかった。

 世はあからさまな利潤追求と物質主義におぼれ、富を誇示する者がはびこり、政治的腐敗が蔓延する金権政治の時代となった。

 米国人の多くは、巨大資産帝国を築き上げた実業家を理想化し、金持ちになることを夢見、資産形成に勤しんだ。

 そんな時代は、1873年のマーク・トウェインとチャールズ・ウォーナーの共著小説の題名から、「Gilded Age(金メッキ時代、金ぴか時代)」と呼ばれるようになる。表面はピカピカでも実際はただのメッキ、というわけである。

 大規模な都市化が進み、工業化も急速に進行。地域間、業種間、企業間、様々な格差が生まれ、ほぼ10年に1度、恐慌に見舞われる時代となった。

 そんな不安定な状況をチャンスに、実業家たちは競合潰しの様々な企業連合を進めた。

 まずは、生産量・価格などの協定「プール(カルテル)」、そして、弱小企業が強大な企業に事実上の経営権を委ねる「トラスト」、さらには「持株会社」。社会ダーウィン主義も批判をかわす理論として重宝された。

 こうして、巨大企業が市場を独占するようになり、ジョン・D・ロックフェラーのスタンダード・オイルのトラストは、石油業の90%を支配するまでになった。

 「どうしてこの土地に100万ドルも出すんだ?」

 ダニエルはスタンダード・オイルの担当者に尋ねる。さらに「輸送費を下げてくれるのか?」との問いには、

 「それは鉄道のビジネス。我々にはできない」と担当者。しかし、「鉄道の所有者は誰だ? もちろん分かっているさ、オタクらさ」とダニエルが切り返せば、

 「どこに貯蔵するんですか? パイプラインを敷いてユニオンオイルと取引? 石油の行先がなくなりますよ。私たちに任せれば、リッチになりますよ」との言葉・・・。

 アプトン・シンクレアの小説「Oil!」をベースとした『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(2007)の主人公ダニエルは、南カリフォルニアで石油を掘り当てている。そんな中小業者に、目前のカネを餌に、巨大企業が圧力をかけているのである。

ティーポット・ドーム・スキャンダル

 ウォーレン・ハーディング大統領時代のスキャンダル「Teapot Dome Scandal」をベースに石油産業の暗部を描いた小説「Oil!」の主人公は労働者や社会主義者などに同情的な男だが、映画で中心となるのはその父である石油長者。

 19世紀末に金・銀を掘りあてることに始まり、石油業界での盛衰を描く愛憎劇、1901年、テキサスのスピンドロップで最大級の油田が発見されてから、石油依存の時代「Age of Oil」へと突入していく頃の物語である。

 連邦議会では、1887年に鉄道を規制する「州際通商法」、1890年には大会社が単一産業を支配することを妨げる「シャーマン反トラスト法」が制定された。

 しかし、実効性に乏しく、規制は遅々として進まず、スタンダード・オイルも、1892年に違法判決が出ても、97年ニュージャージーで持株会社として再編成された。

 ルーズベルト大統領は多くの「悪い」「トラスト潰し(Trust-busting)」に出た。

 そして、スタンダード・オイルは、1911年、連邦最高裁からの解体命令で、34の新会社に分割されることになる。それは、在任中44の巨大企業に対し訴訟手続をとったルーズベルトが大統領職を退いた後のことだったが、口火を切ったのはルーズベルトだった。

 しかし、そんなルーズベルトも、「企業を潰すことを望むわけではない。企業が公益に資するようにさせるのだ」と語り、巨大企業支配自体は容認。「Square deal」を掲げ、一般市民がその政策の下で正当な分け前を得ることができるとし、「良い」トラストとは折衝を重ねた。

 資本主義のあり方への批判が高まり、各地で「Progressivism(進歩主義、革新主義)」と呼ばれる改革が推進される「進歩主義の時代(Progressive Era)」が始まった。

 政府の規制に賛同し、社会制度を改革、新秩序を作ろうという「進歩主義者、革新主義者」たちは、社会主義者と違い、資本主義を、巨大企業支配さえ否定しなかった。

 1908年の大統領選にルーズベルトは出馬しなかった。そして、政策「後継者」と考え支持した長年の友人ウィリアム・ハワード・タフトが大統領となった。

 公職を退いたルーズベルトは、アフリカでサファリを楽しみ、欧州を旅行した。アウトドア好きで知られるその様子は、モロッコでの米国人誘拐事件を描いた『風とライオン』(1975)でも見られる。

米国の公園制度確立に貢献した大統領

 「谷では我々の方が侵入者」と発言し、イエローストーンの大自然の中でハンティングを楽しむ姿から、産業が自然を過度に破壊することを止めようと策を講じ、自然保護計画を進め、今日の公園制度を作るのに貢献した人となりも見えてくる。

 タフト大統領の政策は、ルーズベルトの考えとは違うものとなっていった。共和党内の進歩派もタフトの再選を望まなくなり、再びルーズベルトを担ぎ出すことになった。

 しかし、共和党大会で指名を受けたのはタフト。ルーズベルトは進歩主義政策を掲げ結成した「進歩党(Progressive Party)」から立候補した。

 一方の民主党は、1909年、プリンストン大学学長からニュージャージー州知事となり、進歩主義政策を推進していたウッドロウ・ウィルソンが、党大会での46回もの投票の末、指名を勝ち取った。

 1912年の大統領選はウィルソンが圧勝、ルーズベルトは2位に終わった。議会も民主党支配となり、ウィルソンは、進歩主義政策を推し進めた。憲法修正第16条が批准され、所得税が制度化された。連邦準備制度も創設された。

 1914年、欧州で第1次世界大戦が勃発。米国は中立の立場をとり、1916年の選挙戦も、その主張を押し通したウィルソンが再選された。

 しかし、実際には、連合国側への物資・武器供給や戦費貸与が行われており、中立とは言い難かった。外貨を獲得、米国経済が潤う現実もあった。

 1917年、カリフォルニア州サリナス。父アダムから死んだと聞かされている母ケイトが、モントレーで酒場を営んでいることを知り、独りで会いに行くキャル。

 アダムは、冷凍レタスを東部に送る新事業に失敗、多額の損失を出してしまう。兄アロンばかりを可愛がる父の関心を引こうと、戦争勃発なら価格が高騰するという話を聞いたキャルは、ケイトから借りた5000ドルを元手に、大豆に投資・・・。

 いまや伝説とも言えるキャル役のジェームズ・ディーンの演技が光る『エデンの東』(1955)は、旧約聖書のカインとアベルの物語をなぞったジョン・スタインベックの長編小説の映画化で、映し出されるカリフォルニアの農地の雄大さも印象的な一篇。

 農業の進歩から生産量が大幅に増加、20世紀初頭には農産物価格の低迷が始まるなか、第1次世界大戦勃発による英仏への食糧支援などの戦時バブルで、米国農業は活気づくことになる。

 すぐに終わると思われていた戦争は長期化、英国は米国の参戦を要望したが、孤立主義の米国は応じなかった。

メキシコへの電報が宣戦布告の契機に

 1915年5月、ニューヨークから英国に向け大西洋を航行中の英国客船ルシタニア号が、ドイツ潜水艦の発した魚雷により沈没。1000人以上の乗客が死亡、その多くが非戦闘員で、128人が米国人だった。

 それでも、ウィルソンは、1917年1月、「勝者が敗者におしつける平和」ではなく「勝利なき平和(Peace without victory)」を訴えた。

 しかし、もし同盟が実現すれば、米墨戦争で失った領土を奪還するため一役買うという、ドイツ帝国外相アルトゥール・ツィンメルマンからメキシコ政府に送られた電報が暴露されると、1917年4月6日、ついに宣戦布告する。

 開戦を伝える新聞。アダムの友人でもあるドイツ系移民グスタフの店が投石を受ける。祭りの喧噪のなか、グスタフがからまれ、もみ合いに巻き込まれたアロンを助けようとするキャル。しかし、最後には兄弟喧嘩となってしまう。

 アダムの誕生日に、キャルは、大豆で儲けたお金をプレゼントした。しかし、「アロンの婚約のような清く嬉しいプレゼントがよかった」と、「戦争を利用して儲けたカネなど受け取れない」とアダムははねつける。

 ショックを受けたキャルは、アロンをケイトのもとに連れて行った。信心深く、世の不正や汚れを嫌うアロンは、現実に直面し、泥酔し、暴れ、出征する若者たちの乗る列車へ・・・。

 「The war to end war」とのキャッチフレーズは、若者たちを戦場へ向かわせた。募兵には「Johnny get your gun」との文言も使われた。

 『ジョニーは戦場へ行った(原題=Johnny got his gun)』(1971)の主人公、コロラド出身のジョニー・ボナムも欧州の戦場へ行った。

 ジョニーは塹壕で爆撃に遭った。一命はとりとめたが、四肢を失い、聴力も視力も嗅覚もなくし、話すこともできなくなった。

 軍は「研究」のため、ジョニーの命を保った。そんなジョニーには意識があった。しかし、意思を外部に伝えるすべがなかった・・・。

 志願兵に加え、南北戦争以来初の徴兵となる「選抜徴兵法」が制定され、終戦までに280万人が徴兵された。米国史上初の国外への大規模派兵で総力戦を戦った米国人12万6000人が命を落とした。

 米国の参戦は連合国有利に働いた。しかし、東部戦線では、革命の結果、ロシアが離脱。誕生したボリシェヴィキ政権は、「平和に関する布告」を出し、即時停戦を呼びかけるなど、和平の主導権を握ろうとした。

ヴェルサイユ条約

 ウィルソンは、米国主導の和平実現のため、1918年1月、連邦議会演説で「14か条の平和原則」を発表した。その第14条には「国際平和機構の設立」があった。

 ドイツは、1918年11月、「14か条」を条件に、休戦協定を締結した。しかし、それは、大戦中、主要国が結んだ条約協定に反する内容でもあった。

 翌年初め行われたパリ講和会議では、ジョルジュ・クレマンソー仏首相、デビッド・ロイド・ジョージ英首相などを前に、ウィルソンは様々な譲歩を余儀なくされた。

 1919年6月、ヴェルサイユ条約調印。各国での批准手続きへと進んだ。

 米国では、上院外交委員長である共和党のヘンリー・C・ロッジが中心となり、孤立主義に反すると猛反発。自らの主張を国民に知らせるため、ウィルソンは全国遊説に出た。

 そんなさなかの1919年9月、コロラド州プエブロで、ウィルソンは倒れた。脳梗塞。重い麻痺が残った。

 1920年1月、ヴェルサイユ条約発効。米国は批准しなかった。しかし、「14か条の平和原則」第14条は、ヴェルサイユ条約第1章「国際連盟憲章」として条文に織り込まれ、国際連盟設立という形で結実した。

 ウィルソンがプリンストン大学学長からニュージャージー州知事に転じるところから始まる半生記『ウィルソン』(1944/日本劇場未公開)は、1920年の大統領選で圧勝した共和党ウォーレン・ハーディングが国際連盟加盟否定の声明を出したことを聞き、その翌年、新政権へホワイトハウスを明け渡すウィルソンの姿を最後に終幕となる。

 ハーディングは「Return to normalcy(常態への復帰)」を唱え当選した。しかし、それは不正の蔓延する世への復帰ともなった。

 大統領がらみのスキャンダルとしては、ウォーターゲート事件と双璧とも言われる「Teapot Dome scandal」に世は揺れ、国有油田をめぐる収賄と不正融資に関与したとして、内務長官アルバート・B・フォールが、初の収監された閣僚となるのである。

 温暖化が進み、陸地が水没してしまった未来の地球。独りさすらうマリナーは、人口浮遊都市「オアシス」へやって来た。しかし、ミュータントであることを知られ、死刑宣告を受けてしまう。

 その時、武装集団「スモーカーズ」が襲撃してきた。戦いのさなか助けてくれたヘレンと少女エノーラとともに、マリナーは海に出た。

 ところが、エノーラには伝説の陸地「ドライ・ランド」の手がかりとなるタトゥーがあり、スモーカーズは執拗に追跡してくる・・・。

1995年に始まったCOP

 テーマパークのアトラクションもある人気作『ウォーターワールド』(1995)の舞台となる未来の地球では、人々は「Atoll」と呼ばれる人工浮遊都市で生活している。

 そして、まだ温暖化について世の関心も薄かった1995年、COP1開催の年に制作されたこの作品のクライマックスは、悪役たちの拠点である巨大船での戦い。最後、沈み行くその船には「Exxon Valdez」の文字がある。

 1968年、北極海(ボーフォート海)沿岸のプルドーベイ(Prudhoe Bay)で油田が発見された。

 北極海は凍結することから、この米国最大の油田からの運搬のため、1977年、アラスカ州南部の港町Valdezまで1300キロにわたる「トランス・アラスカ・パイプライン」が建設された。

 そこには、凍土があり、野生動物が移動する小道もあるため、パイプラインの半分は高架となり、自然への配慮がなされた。

 しかし、1989年、原油タンカー「Exxon Valdez」が、アラスカ南岸のプリンス・ウィリアム湾で大量の原油流出事故を起こしてしまう(Exxonはスタンダード・オイルの遺伝子をもつ企業の1つ)。

 沿岸は1600キロにわたり汚染された。環境回復は困難を極め、30年近く過ぎた今でも、沿岸の一部では、砂浜を掘れば流出した原油が現れるという。

 アラスカは、1950年代には水爆実験場にとの計画も持ち上がったが、自然保護運動が高まるなか、中止となった。

 20世紀後半、観光が重要な収入源となり、自然保護も重要な課題となった。

 開発と自然保護のバランス取りはアラスカの重要課題。特に「北極野生生物国家保護区(ANWR Arctic National Wildlife Refuge)」の「1002 area」と呼ばれる地域における化石燃料掘削をめぐっては、政争とさえ言える状況が続いている。

 そんなANWRでかつて1度だけ試掘が行われ、議会の承認を経て掘削が始まる、との設定なのが『地球が凍りつく日(原題「The last winter」)』(2005/日本劇場未公開)。

 気温上昇の続くアラスカで、環境監視メンバーを含む専門チームによって、掘削が始められることになった。しかし、チームの1人が、「何か」を見た証言映像を残し変死してしまう・・・。

地球温暖化への影響が大きいメタンガス

 永久凍土が融け、恐怖を引き起こす油井の「何か」は、ホラー映画の想像の産物だが、実際、凍土が融けることで、大気に放出され問題となると考えられているのがメタンガス。

 二酸化炭素をはるかに凌ぐ温室効果ガスであるメタンが大量放出されれば、さらに温暖化が進み、そのため凍土が融解、またメタンガスが放出されるという悪循環となる。

 永久凍土が融け傾いた樹木「Drunken tree」や倒壊した家屋の写真を提示しながら、地球温暖化についてユーモラスに解説するアル・ゴア元米国副大統領の姿がある映画『不都合な真実』(2006)は、気候変動がもたらす様々な問題を世界に知らせようと奔走する様子を追い、アカデミー長編ドキュメンタリー映画賞を受賞したドキュメンタリー映画としては記録的な大ヒット作。

 様々なショッキングな現実と予測が提示され、多くの人の環境への意識を変えたこの作品では、当時、マンハッタンで建設中の「9/11Memorial Site」が水面下に沈む可能性を指摘、ゴア元副大統領が訴えかける。

 「テロ以外の脅威にも我々は備えるべきでは?」

 「そんな『主張』は『ひどい誇張』『バカげてる』と随分と物議をかもした」と、公開中の『不都合な真実2 放置された地球(原題「The inconvenient sequel」)』(2017)は語る。

 しかし、その地は、2012年10月、現実に、ハリケーン・サンディの来襲で水浸しとなったことも映像が示す。

 温暖化は人類にとって不都合な真実と実感する異常気象にたびたび遭遇する現実があっても、対策はなかなかうまく進まない。

 それでも、危機を訴え、問題に取り組むリーダーを養成するセミナーを開き、精力的に世界を飛び回るゴア元副大統領を追う映画は、前作から10年経ち、さらに積み重ねられた問題を次々と提示する。

 映画のクライマックスは、2年前のCOP21でのパリ協定採択。

 エネルギーへのアクセスができない者が数多いインドでは、成長のためには安価なエネルギーが必要、「先進国が150年やってきたことを自分たちもやる権利」を主張する。そんななか、交渉、説得を重ね、歴史的合意を得ることになるのである。

 そこで終われば映画としては収まりがいい。しかし、現実は違った。

トランプ大統領の登場で再び・・・

 「経済再生」「雇用拡大」「America First」を掲げ当選したドナルド・トランプ政権となり、自国がパリ協定からの離脱を表明する事態に陥ってしまうのである。

 京都議定書の、国際連盟のデジャブ・・・。

 それでも、希望をもって、理想を掲げ、進む。誰もが自分のできること、今できることをやる。我々は温室効果ガスを出さないと動かない社会に生きていることは事実である。

 資本主義を否定するのではなく、より良い世界を作る環境ビジネスで利益を得ればいいと、太陽光発電が爆発的増加を見せるチリの例を挙げ、経済と環境を両立させることは可能、とゴア元副大統領は語る。

 トランプ政権は、4月、バラク・オバマ政権が課した北極圏の米国海域での掘削規制を覆す大統領令に署名した。7月にはイタリア石油大手ENIに試掘開始を許可、12月からボーフォート海で開始する予定となっている。

 しかし、もし、「Exxon Valdez」のような原油流出事故が起きれば、その除去は困難を極める。その地へのアクセスも、氷から石油を除去する手だても通常よりずっと難しいからだ。

 こうした「経済を支えるエネルギー」をめぐる論争では、それが自分にとって不都合な真実であろうと、都合のいい事実であろうと、あからさまな既得権者のみならず、政治家、学者などの言葉を聞くとき、『不都合な真実』でゴア元副大統領が引用したアプトン・シンクレアの言葉を思い出してみるといい

It is difficult to get a man to understand something when his salary depends upon his not understanding it.

 そして、もう1つ、懐疑派へのたとえとして引用されたマーク・トウェインの言葉は、自身への戒めにもなるので、そう心して生きていきたいものだ。

What gets us into trouble is not what we don’t know. It’s what we know for sure that just ain’t so.

(本文おわり、次ページ以降は本文で紹介した映画についての紹介。映画の番号は第1回からの通し番号)

(1344)勝哨灰鵐織ト (1345)スポイラース (593)(再)ゼア・ウィル・ビー・ブラッド (592)(再)風とライオン (1346)エデンの東 (586)(再)ジョニーは戦場へ行った (1347)ウィルソン (1068)(再)ウォーターワールド (1348)地球が凍りつく日 (264)(再)不都合な真実 (1349)不都合な真実2  

勝哨灰鵐織ト


1344.勝哨灰鵐織ト Harbinger down 2015年米国映画

(監督)アレック・ギリス
(出演)ランス・ヘンリクセン、カミーユ・バルサモ

 地球温暖化のシロイルカの生態への影響などの調査のため漁船でベーリング海に出た研究者たちと漁船乗組員たちが遭遇する未知の生命体との戦いを描くホラー。

スポイラース


1345.スポイラース The Spoilers 1942年米国映画

(監督)レイ・エンライト
(出演)マレーネ・ディートリッヒ、ジョン・ウェイン、ランドルフ・スコット

 ゴールドラッシュに沸くアラスカを舞台に、酒場の美人経営者の助けを得て、判事と組み乗っ取りを目論む行政官から金鉱を守る男の闘いをオールスターキャストで描くレックス・ビーチのベストセラー小説4度目の映画化。

ゼア・ウィル・ビー・ブラッド


(再)593.ゼア・ウィル・ビー・ブラッド There will be blood 2007年米国映画

(監督)ポール・トーマス・アンダーソン
(出演)ダニエル・デイ・ルイス、ポール・ダノ

 20世紀初めの南カリフォルニアを舞台に、石油を掘り当てた男の紆余曲折の半生を、アカデミー主演男優賞を受賞したダニエル・デイ・ルイスの名演、『ブギーナイツ』(1997)『ザ・マスター』(2012)のポール・トーマス・アンダーソン監督で描くピューリツァ賞作家アプトン・シンクレアの小説の映画化。

 モデルとなった石油王エドワード・ドヒニーが息子へ贈ったというビバリーヒルズの豪邸グレイストン・マンションでも撮影された。

風とライオン


(再)592.風とライオン The wind and the lion 1975年米国映画

(監督)ジョン・ミリアス
(出演)ショーン・コネリー、キャンディス・バーゲン

 列強ひしめく20世紀初頭のモロッコで起きた米国人誘拐事件をめぐるセオドア・ルーズ米国大統領とベルベル族部族長との駆け引きを『ビッグ・ウェンズデー』(1978)のジョン・ミリアス監督が描く実話をベースとしたアクション劇。

 ただし、実際には、誘拐されたのは本作にあるような妙齢の女性ではなく初老の男性。以前米国籍だったものの事件当時ギリシャ国籍であることが作戦中発覚していながら「米国人救出劇」として作戦は続けられたという。

エデンの東


1346.エデンの東 East of Eden 1955年米国映画

(監督)エリア・カザン
(出演)ジェームズ・ディーン、ジュリー・ハリス、レイモンド・マッセイ
(音楽)レナード・ローゼンマン

 第1次世界大戦参戦前後のカリフォルニアを舞台に繰り広げられる親子、兄弟の愛憎劇を『欲望という名の電車』(1951)『波止場』(1954)のエリア・カザンが描く、カインとアベルの物語を下敷きにしたジョン・スタインベックの長編小説の映画化。

 日本では、早世したジェームズ・ディーンの人気と相まって、ヴィクター・ヤング楽団演奏によるテーマ音楽がラジオのヒットチャートで記録的大ヒットとなった。

ジョニーは戦場へ行った


(再)586.ジョニーは戦場へ行った Johnny got his gun 1971年米国映画

(監督・原作・脚本)ダルトン・トランボ
(出演)ティモシー・ボトムズ

 戦場で爆撃を受け、四肢を失い、視覚も聴覚も嗅覚も失い、話すこともできなくなりながら、「研究」のため、病院で生かされた若者ジョニーの物語。

 第1次世界大戦後、15年にわたり主人公のような状況にあったという英国人将校の話をもとに、『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』(2015)でその半生が映画化されたダルトン・トランボが発表した小説を自ら映画化した衝撃作。

1347.ウィルソン Wilson 1944年米国映画(日本劇場未公開)

(監督)ヘンリー・キング
(出演)アレクサンダー・ノックス、ジェラルディン・フィッツジェラルド

 プリンストン大学学長からニュージャージー州知事に転じ、第28代米国大統領となったウッドロウ・ウィルソンが、国際連盟に米国が加盟せず失意のなか退任するまでを家族愛を織り交ぜ、『聖処女』(1943)『慕情』(1955)のヘンリー・キング監督が描くアカデミー賞10部門ノミネート5部門受賞作。

(再)1068.ウォーターワールド Waterworld 1995年米国映画

(監督)ケヴィン・レイノルズ
(出演)ケヴィン・コスナー、デニス・ホッパー、ジーン・トリプルホーン

 地球温暖化が進み、水没してしまった未来の地球で繰り広げられる、伝説の陸地「ドライ・ランド」への手がかりとなる少女をめぐる争いを『ファンダンゴ』(1985)『ロビン・フッド』(1991)に続き、ケヴィン・レイノルズ監督と主演ケヴィン・コスナーのコンビで描いたアクション大作。

地球が凍りつく日


1348.地球が凍りつく日 The last winter 2006年米国・アイスランド映画(日本劇場未公開

(監督)ラリー・フェセンデン
(出演)ロン・パールマン、ジェームズ・ラグロス、コニー・ブリットン

 地球温暖化の進むアラスカの野生生物保護区を舞台に、かつて試掘された油井で起こる怪奇現象の恐怖を『ヘルボーイ』(2004)のロン・パールマン主演で描くホラー。

不都合な真実


(再)264.不都合な真実 An inconvenient truth 2006年米国映画

(監督)デイヴィス・グッゲンハイム

 「一瞬だけ大統領だった男」アル・ゴア元米国副大統領が、地球温暖化を警告するため世界中を駆け巡る姿を、その生い立ちを織り交ぜ描くアカデミー長編ドキュメンタリー映画賞受賞作。

 本作製作の翌年、ゴアはIPCCとともにノーベル平和賞を受賞した。

不都合な真実2


1349.不都合な真実2:放置された地球 An Inconvenient Sequel Truth to Power 2017年米国映画

(監督)ボニー・コーエン、ジョン・シェンク

 『不都合な真実』から10年、気候がますます極端化するなか、世界を飛び回り、温暖化問題について講演し、リーダーたちを養成するアル・ゴア元米国副大統領が、COP21でパリ協定採択のため奔走する姿を描くドキュメンタリー。

筆者:竹野 敏貴