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今回は4ページ(!)構成です。本文の下の「

photo:@masamaxy

もくじ

ー いよいよ930に乗る日がきた
ー くり抜かれた岩の中にいるみたい
ー どうやら視界がぼんやりと
ー 「伊豆スカ」でリベンジ
ー まるで違う930と996の動き

いよいよ930に乗る日がきた

笹本編集長の930を借りることが決まり、
実際に借りるときが来るまでしばらくかかった。
東京は40年ぶりの長雨だったのだそうだ。

そしていよいよ930と996をしばらく交換する日。
いろんな想像をしたり不安な気持ちになったりで
実際のところ前日はほとんどうまく眠れなかった。

996の暖気を済ませて編集長のガレージに向かうと、
表の扉が開いていた。なかに真っ白な930が見えた。

「俺もしばらくのってないからさぁ。
 エンジン、かかるといいけどなぁ…」
ボソリと笹本編集長は言う。

笹本さん! 意地悪いわないでください!

キーを捻ると、ほら! すぐに目覚めた。

ヒュン、ヒュンーン、
ジャラジャラジャラジャラ……。
何度か回転が上下したあとに聞こえてくる
このアイドリングの音だけでも大満足。
ガレージの外にするりとでてくると、
より一層白いボディが輝いて見えた。

「じゃな」

え!

あっという間に笹本編集長は、
ガレージのなかに入っていった。

完全にひとりきりになった。
案の定、発進でエンストしてしまった。
本当はアクセルを煽ることなくクラッチ操作だけで
スッと前にでればいい(らしい)のだが、
ビビってちょっとアクセルを煽ってしまう。

煽ったら回転は一瞬のうちに跳ね上がり、
気がついたら、ストンと落ちきっている。
そんな短い間に慣れないミートなどできない。

幸運なことにそこは坂道だったので、
するするとニュートラルのまま進みながら
じわりとクラッチを離して何とか発進できた。

そこからポルシェ仲間のI君をはじめとする
いつものメンバーに見てもらうことにした。

くり抜かれた岩の中にいるみたい

その日はとにかく暑かった。
ちなみに借りた930は、クーラーが効かない。
詳しい筋に聞いてみたところ
「直せば冷たい風がでてくるが
 『効く』かどうかはべつの話」というのが
総合的な意見だった。

笹本編集長も「これ1台だけってわけじゃないし
暑い日にわざわざ乗んないから」というわけで
後づけのコンプレッサーをつけたりせずに
オリジナルのパーツを大切にしていた。

まあいい。
そもそもクーラーで車内をキンキンに冷やしながら
ハイウェイをタラタラと走るようなクルマではない。

おれはいま硬派なクルマに乗っているのだ。ふん。

そう自分に言い聞かせながら
首都高に乗って、いつもの辰巳PAに行くことにした。

それにしても930の味は濃かった。
音、におい、ステアリングの反応ひとつとっても
これまで乗ったどんなクルマよりも生々しい。

ボディはミシリともいわない。
本来クルマって、
土台や鉄板を組みあわせてできるものなのに
930にいたっては大きな岩をくり抜いて作ったような感じ。

ドアは薄く、自分の目の前にガラスがあるのに
金庫の中の入っているような気持ちになった。

その日は珍しく混んでいた。
東名川崎から高速に乗り、
いつもの辰巳PAに着くまで2時間以上かかった。

着くとI君のほかに、718ケイマンのM君、
ケイマンGT4のTさんも待ってくれていた。

彼らの第一声は「どうしたの⁈」だった。

どうやら視界がぼんやりと

彼らの第一声は「どうしたの⁈」だった。

「いやいや930乗っていくっていったじゃん!」
「違う! 違う違う! 顔!」
「え? なにさ」「いやいや鏡見て」
930の四角いドアミラーを覗くと
自分でもビックリするくらいまっ赤で、
しかもパンパンに腫れあがっていた。
熱中症の症状そのものだったのだ。

そこでアイスだの水だのマッサージだので
応急処置をしてもらい、あえなく解散。
たしかに帰ったときはふらふらだった。
膝も小刻みに震えていた。
気持ちだけは元気だったのに。

結局この日は、2ℓのスポーツドリンクと
1本の栄養ドリンク、Tシャツ2枚を消費した。

やっぱり、
クーラーがあったほうがいい、かも……。

ただ、ぼくには翌日、ミッションが控えていた。
それは伊豆スカイラインの往復だった。
ふっふっふ。

よほど疲れてしまったのか
気づいたら朝だった。

「伊豆スカ」でリベンジ

目覚めたら、体は羽のように軽く
きのうのことが嘘だったかのようにスッキリしていた。

真っ先にシャワーを浴びていざ出陣!
カバーをひっぺがしてロックキーをひねると、
あたかもドアの中でワイヤーが動いているような
ニュルンとした手応えが伝わる。
ドアを開けるとズチャっというし、
閉じるとパーンと室内に音がひびく。
これこれ! 

いそいそと伊豆へむかった。

ただしこの日は濃霧。
雨が降っているわけではないのにボディはびっしょり。
でも走り進めるほどに視界はクリアになり、
路面もきれいに乾いていた。

知りたいのはコーナーの動きだった。
「空冷ポルシェはより一層RR感がする」
というようなことを読んだか聞いたかして
それが本当なのかを確かめたかった。

「クーレイの時代ですね!」

930を見た伊豆スカイライン料金所のおじさんも
興味津々の様子で話しかけてくれた。
いつもと違う体験だ!

まるで違う930と996の動き

キューサンマルの動きは
最初のコーナーからまるで違った。
ステアリングを切っても
うまく向きが変わらないのである。
かといって、いつもより大きく切れば
曲がるというわけでもない。
切りすぎれば、リアが手におえなくなる予感が
ピリピリと伝わってくるのだ。

最初は肩から力を入れてグイグイ切り込んで
曲がっていったが、それでも曲がりづらい。

結果的に、シャカイチ号よりも手前で
ブレーキを踏んでしっかり準備をする。
それからステアリングを切るというより
コーナーの外から峰にむかってまっすぐ入り
たとえば左コーナーなら右後輪に
右コーナーなら左の後輪で蹴りだすようにして
ハンドルに頼らないままに抜けだすのが
自分でもラクだったし、
クルマもピタッと動いているような感覚があった。

曲がるためにステアリングを切るのではなく
曲がるキッカケを作るために
チョコンとステアリングを切るという感じだ。

ハンドル操作でどうにかなっていたぼくの996とは
まったく違う感覚だった。

身近なところでいうと
スーパーのカートも
(あれは厳密にいうと「リア操舵」か)
うしろでグイッと勢いをつけて
前でチョコンと向きを変えるキッカケを作っている。
(スーパーでそんなことを考えているひと
 いないとは思いますが)そんなイメージだった。

とにかくヒリヒリとしていた。

「はい、じゃああとは任せました」
といわれたあとで、
「ここから先は失敗しても自己責任ね」
と言い放たれているようだ。

一瞬、戸惑うのだけど、
そういうのって燃えるのである。
結局伊豆スカイラインを3往復した。
最後はわりといいペースだったと思う。

これ以上乗り続けるとミスするな
という直感があった。

自動販売機を見つけて、
クールダウンのために飲みものを買った。
しばらくしてドアを閉めた瞬間に、
初めて自販機がファンで唸っていることを知った。
それくらいに室内はピンと張りつめた静けさだった。

どうやら、そうとうワルイ体験をしたみたいだ。

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 この写真は991と930。
 30年以上も年が違うのに、
 よく似ていますね。
 注意してみるとあたらしいほうは
 窓の幅も上下に薄くなっています。

 だけど
 Cピラーからリアフェンダーへの膨らみは
 356とも996ともおんなじですね。
 マカンもパナメーラ・スポーツツーリスモも
 おんなじです。

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