YUKI、のん、Shiggy Jr.……“エッジ”と“ポップ”のバランス感覚備えたアーティストたち

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 “エッジの効いた音楽性をポップに表現する”ことを実現しているのは(私見だが)女性アーティストのほうが多いように感じる。既存のフォーマットやスタイルにこだわらず、自らのなかに生じた“これがカッコいい”“これをやりたい”という欲求に従いつつ、決してマニアックに陥ることなく、幅広い層のリスナーが楽しめるポップミュージックへと導く。そんなバランス感覚を備えた女性アーティストの新作を紹介しよう。

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■YUKI『フラッグを立てろ』

 ソロデビュー15周年イヤーを迎えたYUKI。『さよならバイスタンダー』に続く本作『フラッグを立てろ』表題曲(アニメ『3月のライオン』(NHK総合)第2シリーズオープニングテーマ)は、『3月のライオン』の“ひなちゃん”の状況とYUKI自身の過去の苦しい思い出を重ねながら、“自分だけの場所を見つけ、自分だけの旗を掲げよう”というメッセージを高らかに響かせるアッパーチューン。ギターロック、エレクトロを有機的に結びつけたカッティングエッジなサウンド、躍動感に溢れた旋律、そして、自らを奮い立たせ、“ここではないどこか”へ飛び出そうする意志を描いたボーカルは、閉鎖的な気分に陥りがちな現実を打破するようなパワーに満ちている。殻を打ち破ろうとする強い意思をカラフルなポップチューンへと昇華した、YUKIの真骨頂とも言えるナンバーだと思う。

■のん『スーパーヒーローになりたい』

 今年の夏に自身の音楽レーベル<KAIWA(RE)CORD>を設立。カセット、アナログでの『オヒロメ・パックEP』のリリース、『WORLD HAPPINESS 2017』への出演など本格的な音楽活動をスタートさせた“のん”の1stシングル『スーパーヒーローになりたい』。高野寛の作詞・作曲による表題曲「スーパーヒーローになりたい」は尖ったギターサウンドとポップなシンセサウンドが融合した、ニューウェーブ経由のロックンロール。<真夜中に叫びだした 私の中の野生よ>というフレーズには、“創作あーちすと”としても活動している彼女の奔放なクリエイティビティが反映されている。カップリングには自身の作詞作曲によるパンキッシュなナンバー「へーんなのっ」を収録。ユーモアと攻撃性がぶつかり合うようなボーカルも驚くほどに魅力的だ。

■Shiggy Jr.『SHUFFLE!! E.P.』(通常盤)

 Shiggy Jr.のレーベル移籍第一弾となる『SHUFFLE!! E.P.』は彼らが“徹底してポップであること”を明確に意図して制作された作品だと思う。80’sテイストを前面に押し出したダンスチューン「誘惑のパーティー」、グルーヴィーなロックサウンドと歌謡的なメロディがひとつになった「僕は雨のなか」、ヒップホップの方法論を取り入れたアーバンポップス「二人のストーリー」など楽曲の方向性はまったく異なるのだが、“ポップである”というスタンスを完璧に貫くことで、間口が広く、どんな趣味の人でも自然に楽しめるポップソング集として成立しているのだ。それを担保しているのはやはり、池田智子のボーカル。どんな音楽性にもナチュラルに適応し、ポップにアウトプットする天性のセンスは本作においてさらに向上しているようだ。

■桐嶋ノドカ『言葉にしたくてできない言葉を』

  桐嶋ノドカ自身が主演をつとめる映画『爪先の宇宙』の主題歌として制作されたニューシングル「言葉にしたくてできない言葉を」は、小林武史、ryo(supercell)という異色のWプロデュース楽曲。ギターロックとクラシカルな雰囲気が共存するサウンドメイク、感情の動きとリアルに重なるドラマティックなメロディライン、そして、濃密なエモーションを備えたボーカルがひとつになったナンバー。特に<だってわかんない><何が本当で何が嘘なの>という切実な思いが込められたラインからは、ボーカリストとしての彼女の覚醒ぶりが強く伝わってくる。去年の後半あたりに歌に対するモチベーションを見失いかけたという桐嶋だったが、言葉にならない思いをテーマにしたこの楽曲を歌うことで、その豊かなポテンシャルを完全に取り戻したようだ。

■iri『life ep』 DAOKO、ちゃんみな、泉まくら、chelmico、あっこゴリラなどと並び、新世代フィメールラッパーの一角を担うiriの新作『life ep』にはケンモチヒデフミ、mabanuaのほか、ヒップホップユニット“PSG”のメンバーにして、気鋭のトラックメイカーとしても注目を集めている5lackが参加。心地よい浮遊感を描くシンセと鋭利なビートが共存するトラックのなかで<壊れないでね ただ手を繋いで 歩けばfeel love>というフレーズが響く「Telephone feat.5lack」は、最新鋭のヒップホップマナーとJ-POP的なラブソングを絶妙な配分でブレンドした楽曲に仕上がっている。ハスキーかつセクシーな手触りを放ち、日本語を官能的にグルーヴさせるiriのラップも素晴らしい。(森朋之)