降格圏の16位・甲府との勝点差は3。14位の清水は厳しい状況に追い込まれている。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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[J1リーグ32節]清水0-2札幌/11月18日(土)/アイスタ
 
 キックオフ直後から、試合展開は予想に反したものになった。
 
 順位は13位(札幌)と14位(清水)、勝点は3差。残留争いの大詰めで両者とも非常に気持ちが入っていたこともあり、白熱した接戦が期待された大一番。だが、蓋を開けてみると思った以上にパフォーマンスの差が表われ、札幌が2-0で完勝して16年ぶりのJ1残留を自力で勝ち取った。
 
 その要因として大きかったのは、ストロングポイントの生かし方の差だった。札幌の最大の武器は、1トップのジェイのポストプレーとそこに絡むチャナティップのドリブルや兵藤慎剛の精力的な動き出し。清水としても、そこは十分承知のうえで対策を練ってきたが、札幌がそれを上回る試合への入り方を見せた。
 
 清水のボランチ・河井陽介は、立ち上がりの展開について次のように振り返る。
 
「もう少し空中のボールを使ってくると思っていたんですが、足下でつないでくるボールが多くて、良いところまで来てからサイドに振られたり、少し目線を変えられてからクロスボールが入っていたので、そこは少し想定と違ったと思います」
 
 札幌は2ボランチや両ワイドも積極的に押し上げてジェイの足下に縦パスを入れ、それをジェイがしっかりとキープしたうえでチャナティップや兵藤に正確に落とすことで2列目が前を向ける状況を作り、清水の最終ラインを押し下げていく。また札幌はボールを奪われても素早く前からプレッシャーをかけ、清水のほうはラインが下がって前線との距離が開いているため、なかなかパスが前に通らず、札幌がすぐに奪い返す展開が続いた。
 
 したがって序盤は、パス回しを得意とする清水よりも、札幌のほうがポゼッションでも上回り、完全に主導権を握った。そうなると両サイドに大きく開いている右の早坂良太と左の石川直樹がフリーでボールを受けられる場面が多くなり、11分には石川の正確なクロスをジェイが圧倒的に高い打点で叩き込み、早い時間に札幌が先制。
 
 その後も札幌は攻勢を緩めず、39分にはチャナティップのドリブル突破を生かしてジェイが再び決定力の高さを示す。これで前半のうちに札幌が絶大なアドバンテージをつかんだ。
 清水は元々ロングボール攻勢の対応は得意ではなく、札幌は相性の悪い相手と言えるが、ジェイの高さだけでなく足下の技術やキープ力も存分に生かした札幌のほうが、明らかに一枚上手だった。
 
 札幌のもうひとつの武器はセットプレーだ。フィールドプレイヤー10人のうち8人が180センチ以上で、福森晃斗のキックも非常に質が高い。だが、清水は全員が集中して何とか対応し、セットプレーからはビッグチャンスを一度も作らせなかった。そこは収穫の少ない試合のなかでは、貴重なプラス要素と言える。
 
 ただ、攻撃面でのプラス材料は少なかった。札幌のプレッシャーが徐々に緩んできたなかで、清水がパスをつないで押し込む時間を増やしていったが、守る時は5-4-1のような布陣で球際も強い札幌の守備をなかなか崩しきれない。相手のゴール前が整っている状況でクロスボールを入れても、高さで勝つことはできない。
 
 そのためコンビネーションで崩すという意図は見えたが、細かいところでタイミングやパスコース、ファーストタッチの精度などが合わないことが多く、決定機には到らない。何度か惜しいところまで行く場面はあったが、「少し余裕がないので、結局最後のところが仕留められない」(小林伸二監督)という状況。後半には187センチの長谷川悠やスピードが武器の村田和哉、そして怪我から復帰したエースの鄭大世も投入したが、突破口を開くことはできないままだった。
 
 90分のなかで本当に決定機と言えたのは、回数の多かったセットプレーからの2回だけで、終わってみれば5試合連続ノーゴール。残り2試合で16位の甲府と勝点差3という苦境に立たされた。
 
 清水が自力でJ1に残留するためには、残り2試合を1勝1分以上で終える必要がある。守備に関しては、相手への対応を読み違えなければ修正は可能だろう。セットプレーの守備も改善されている。
 
 だが、勝つためには点を取らなければならない。そのために自分たちのストロングポイントをどう生かしていくのか。そのヒントとなるような具体的なコメントは、ショックの大きな敗戦の直後では出てこなかったが、鄭が復帰したなかで個の力に頼るのか、チームとしてゴールへの道筋を作れるのか。新潟戦までの中7日で、何か答を見出さなければならないだろう。
 
取材・文:前島芳雄(フリーライター)