NormCore Fümiが語る、ソロとバンド活動の違い 「“芸術”と区切って活動できたら」

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 Fümi(Vo)、Tatsu(Vn)、Natsu(C・Gt)の3人で構成されるシンフォニック・ロックユニットのNormCore(ノームコア)が、メジャーデビューシングル『それでも僕は生きている』を11月22日にリリースする。

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 メンバー全員が音楽大学出身という華々しい経歴を持つ彼ら。シングル表題曲は、現在放送中のTVアニメ『EVIL OR LIVE』(TOKYO MX)のオープニングテーマに起用されており、声楽を学んできたFümiによる鮮烈極まりないハイトーンボイスと、ロックの激しさとクラシックの優美さを併せ持ったドラマティックなサウンドによって、ネット依存症のため地獄のような更正施設に強制収容された主人公たちの絶望的なストーリーを劇的に彩っている。

 そんな注目ユニットの発起人でリーダー格のFümiは、UMI☆KUUN名義の活動でも知られるシンガーソングライター。YouTubeやニコニコ動画への動画投稿で支持を集めるほか、作詞/作曲/映像制作などもみずからこなすマルチクリエイターだ。すでにソロで幅広く活躍する彼が、なぜNormCoreという新たなプロジェクトを始動したのか? その理由からデビューシングルに込めた思いまで、Fümi本人に話を訊いた。(北野創)

■「みんなが得意なことをやるのが一番」

――まず今回新たにNormCoreというユニットを立ち上げた理由を教えてください。

Fümi:UMI☆KUUN名義では、例えば『ニコニコ超会議』というイベントで松崎しげるさんと一緒にMCを務めさせていただいたり、『Japan Expo』に公式リポーターとして参加するなど、いわゆる芸能寄りな活動が多いこともあってエンターテインメントな音楽をやってきたんですけど、僕は音大出身で声楽を学んでいたので、スタッフの方に「そういう経歴を活かせる音楽をやってみたら?」という提案をいただいたんです。で、せっかく新しいことをやるのであれば、他の人にはできない自分たちだけの切り口の音楽ができればと思って、僕の大学時代の後輩2人に声をかけて立ち上げたのがNormCoreなんです。UMI☆KUUNでやってることが“芸能”だとしたら、NormCoreでは“芸術”と区切って活動できたらと思ってます。

――NormCoreというユニット名の由来は?

Fümi:“ノームコア”というのはファッション業界でよく使われる言葉で、“Normal(普通)”と“Hardcore(究極)”という言葉を合わせた造語なんです。スティーブ・ジョブズが着てたようなシンプルな着こなしのことを言うんですけど、僕自身が単純にそういうファッションを好きということもありますし、単語の響きにすごく惹かれたんですね。“究極のシンプル”みたいな感じでいいかなとも思いましたし(笑)。

――“シンフォニックロックユニット”と謳われてますが、どのような音楽スタイルなのでしょうか?

Fümi:僕はもともと久石譲さんやスタジオジブリの音楽がすごく好きで、そういったオーケストレーションの要素とロックサウンドを融合させたようなイメージというか……。例えばいまの深夜アニメで流れる音楽は、シンフォニカルなロックと相性が良いじゃないですか。そこは自分の経歴が活かせるものでもあるので、いいなあと思ったんです。それとFall Out Boyみたいなオルタナロックも好きなんですけど、彼らもイントロでオーケストラにリフを刻ませたりしますし。

――アニメ音楽やアニソンにはオーケストレーションを導入した曲が多いので納得ですが、オルタナロック的なバックボーンというのは意外でした。

Fümi:僕はQueenがいちばん好きなんですけど、世界には彼らに影響を受けたアーティストがたくさんいるんです。そのなかには、My Chemical RomanceみたいにUKっぽくまとまっている人がいれば、Panic! At The DiscoのようにUS流に消化したような人もいて、Queenのいろんなエッセンスが世界中に散らばってると思うんです。そういった次世代のQueen的な音楽を聴くのも好きですし、フレディ・マーキュリーはオペラが好きだったりとか、Queen自体もシンフォニックな要素がありますからね。

――なるほど。それとユニークなのが楽器編成で、Tatsuさんがバイオリン、Natsuさんがクラシックギターと、他のグループではあまり見かけない珍しいメンバー構成ですよね。

Fümi:これは音楽性の話から少し離れるんですけど、僕がメンバーを決めるにあたっていちばん重視したのは信頼関係なんです。僕は自分で楽曲を作詞作曲しますし、MVも自分で監督したり、どなたかに編曲をお願いする場合も細かく指示を出すタイプなので、例えばプロジェクトを継続していくなかで時間にルーズな人がいるとすごくストレスを感じるんです。その意味で、この2人となら一緒に気持ち良く仕事をできると思ってメンバーに誘いました。

――まず人がありきなんですね。

Fümi:そうなんです。それと編成については、例えば彼女(Natsu)はエレキギターも弾けるんですけど、シンフォニックロックユニットというコンセプトだからといって無理に専門ではないエレキギターを弾く必要はないんじゃないかと思っていて。ある時、ノームコア好きな人が集まるサイトで、“本当に個性的な人は、何も着飾らなくてもありのままで個性的だから、必要以上に何かをがんばったりすることはない”といった意味合いの言葉をみつけたんです。それと同じで、みんなが得意なことをやるのが一番なんじゃないかと思うんですよ。

――集まったみなさんが得意な楽器を持ち寄った結果、現在の編成になったと。そういう意味でもお互いの信頼関係の上に成り立ってるユニットなんですね。

Fümi:Tatsuくんは僕の「歌ってみた動画」に「メシおごるから協力してよ」みたいな感じで参加してくれたり、本当に良い奴なんですよ(笑)。それに2人とも、音楽的にこれは弾けないみたいなことは一切言わないんですね。クラシックの音大出身の人はプライドの高い人が多いので、「僕はそういうの無理です」と言う人が多いんですよ。でも2人は本当にピースフルで、良いものは良いってちゃんと理解してくれる人なんですよね。あと、昔からの仲でもあるので「Fümi先輩はイカれてる」「普通の会話は通じない」ってことも理解してくれてますし(笑)。

■「音大時代、軽く引きこもりになった」

――デビューシングル『それでも僕は生きている』の表題曲はTVアニメ『EVIL OR LIVE』(TOKYO MX)のOPテーマに起用されてますが、どのように作っていかれたのですか?

Fümi:最初は『EVIL OR LIVE』のEDテーマということでいただいたお話だったので、まずアニメの台本を読み込んで、物語のディープで絶望的な内容を上手く引き立てられるような楽曲にしたいというところから始め てデモを聞かせたら『EVIL OR LIVE』のスタッフさんが気に入ってくれて急遽OPテーマにしていただけました。

――『EVIL OR LIVE』という作品に初めて触れたときの感想は?

Fümi:最初は登場人物たちの心情を読み取ろうと思ってたんですけど、普通におもしろい内容だったので、いつの間にか何も考えずに楽しみながら読んでました(笑)。“ネット中毒”を大きなテーマにした作品なんですけど、僕も愛媛から上京して音大に通っていたとき、カルチャーショックで軽く引きこもりになって、ネットゲームばかりやってたことがあるんです。アニメの登場人物たちと同じようにFPS(ファーストパーソン・シューティングゲーム)やMMO(大規模多人数型オンラインゲーム)にはまって、ひたすら初心者狩りをしたり、しょーもないことで時間をつぶしてて(笑)。なのでアニメの描写を見てると胸が痛いというか、すごく感情移入できる部分があったんです。いまの日本にはそんな気持ちに思い当たる人が結構いると思いますし、そういう意味でも面白い作品だと思いました。

――歌詞では、その『EVIL OR LIVE』の主人公にも当てはまるような、欲望に溺れて絶望的な状況に陥っていく人の心情が描かれています。歌詞を書くにあたって心がけたことはありますか?

Fümi:落としどころとしては、ある意味どうとでも取れる単語だったりニュアンス、表現をなるべく選んで作るようにしました。例えばタイトルにしても、もしこれが「それでも僕は生きていく」というタイトルだとしたら希望的なニュアンスになると思うんです。だけど「それでも僕は生きている」の場合、<こんなに最悪な世界でも僕は生きている>と言えばそこに希望は感じ取れないし、<君に裏切られたけど、それでも僕は生きている>だと少し希望を持った感じになって、いろんな意味合いに取れると思うんですよ。だから、なるべく受け手によっていかようにも解釈できる単語や表現を選んで作っていきました。

――そこにはどのような意図があるのでしょうか。

Fümi:まず、今回の曲はタイアップが付いていて、多くの人の耳に触れる機会があるので、いろんな人に共感してもらえるようにしたかったんです。それに、いまの若い子はなるべく決め付けた言い方にしないほうが、言葉を咀嚼してくれると思うんですよ。

――たしかにこの曲の歌詞は、終盤で少し希望のようなものが見えてきますけど、結局ラストは希望を掴んだのか、絶望のままなのか、判別できないまま終わりを迎えますね。

Fümi:いまの若い子はネットを通じて体験はしてなくてもいろんな情報を知ってるから、希望を持って終わるようなお決まりのパターンは嘘臭く見えるだろうし、「それでもがんばってればなんとかなる」みたいな言葉は刺さらなくなっていると思うんです。でも、やっぱりみんな希望が見えた瞬間があるからこそ、上手くいかない恋愛でもまた相手に連絡してみたり、ネットゲームで次こそは目当てのものが出ると思って課金を繰り返すわけで(笑)。それに対して自分で止めを刺すのか、誰かに刺してもらうのかはそれぞれの選択だと思うし、アニメも主人公がハッピーになるのかバッドになるのか曖昧に展開していく内容なので、その意味でも結末を決め付けない感じにしたいと思ったんです。

――サウンド面ではへヴィーロック寄りの激情的な楽曲になってますが、バイオリン+クラシックギターというメンバーの楽器編成から考えるとかなり攻めたアレンジですね。

Fümi:例えばバイオリンが一切登場しない曲もアリだと思うし、その場合、彼は別にシンセのパッドを叩いててもいいと思うんですよ。例えば僕の好きなHurtsという2人組のユニットも、いつもはピアノを弾いてる人がたまにギターを持つことがあったりしますし、あまり編成には捉われすぎず、柔軟に、まずは曲の世界観を優先する感覚ですね。

――とは言いながらも、この曲はバイオリンが前面に出てますし、中盤からアコギの調べが目立ってくる構成で、3人それぞれの個性がしっかりと出ています。

Fümi:やはり最初の曲だったので名刺的な要素は入れたかったんです。とはいえ、最初の曲なのでまとめるのに手間取ったのが正直なところですけど。僕の歌に関しても、歌詞のニュアンスがちゃんと伝わるけども、押し付けがましい感じにならないように良い塩梅を探しつつ。

――Fümiさんの特徴であるハイトーンが存分に味わえる内容ですよね。特に終盤が凄まじくて、高音のパートがずっと続くなか、そこからさらに声のトーンが上がるのには驚きました。

Fümi:そうなんです! まさにそこを言ってほしくて(笑)。最初だからってセーブするんじゃなくて、一回できるところまで出してみようという思惑でトライしました。

■「足し算でなく掛け算でアニメに関われるように」

――この曲のMVは、Fümiさんみずから監督もされてるとのことですが。

Fümi:はい。アイデア出し全般からロケーションやシチュエーションも全部自分で決めて、スイッチカッティングや素材の連結の編集も自分でやってます。色調補正やタイポライトの演出はプロの方にやってもらって。今回、三木(フルネーム)さんという映像作家の方とどうしても一緒に仕事をしたくてお願いしたら、「やれるところまで一緒にやろう」とおっしゃっていただいて、最終的な完パケ作業も2人で漫喫に入って5時間ぐらいずっとラップトップで作業して完成させたんです(笑)。

――それはすごいですね(笑)。どのようなコンセプトで作られたのでしょうか?

Fümi:MVも『EVIL OR LIVE』の世界観とリンクさせていて、アニメの第1話は主人公が自殺しようとするところから物語が始まるんですけど、MVも僕がビルの屋上から飛び降りようとしてるドラマ風のパートから始まって。なるべく足し算でなく掛け算でアニメに関われるように考えて撮りました。

――普段から動画共有サイトに動画を投稿されてますが、そういった制作経験も活きましたか?

Fümi:そうですね。YouTubeは自分ひとりでやってるので、時間と予算をどれだけ削っておもしろいものを撮るかというアイデアがいっぱい増えてくるんですよ。なので今回みたいに会社から制作費用が出る場合は「何でもできるじゃん!」って思えるんですよ(笑)。ビルのシーンはここ(ビーイング本社)の屋上で撮ったんですけど、それだと予算はいらないし時間の制限もないですからね(笑)。

――カップリングの「天空の涙」は一転して感傷的なバラードですが、どのようなイメージで作られたのでしょうか?

Fümi:僕は基本的に曲の作り置きをしないタイプなんですけど、この曲はちょうど3〜4年前にフラッと作ってた曲で、「それでも僕は生きている」が仕上がった段階でカップリングをどうしようかと思ったときに、何故かピンポイントでこの曲のことを思い出してしまったんです。僕が自分でピアノを弾きながら作ったデモを、田尻(尋一)さんというすごく音にこだわりを持たれてるマニアックなアレンジャーの方にお願いしたまま止まってた曲だったんですけど、今回改めてブラッシュアップして、2人の演奏を加えて仕上げました。

――なぜこの曲がカップリングにはまると直感したんでしょうか?

Fümi:僕の中で「それでも僕は生きている」は“絶望寄りの絶望”という感じなんですけど、「天空の涙」は“希望寄りの絶望”みたいなイメージで、憂いの質感としては似てるなと思いまして。あとは、お決まりではあるんですけど、アップテンポのカップリングはゆったりしてた方がバランスがいいかなというところです。

――歌詞の詩的な表現や、最終的に希望が見える終わり方は、表題曲とも対照的な内容になってますよね。

Fümi:この曲を作った頃は大学を卒業して、若造から少しは成長して、世の中とか音楽業界のことをいろいろ知るようになった時期で。みんな辛いけど、その部分は表に出さずになんとか人生を歩んでいってることが見えてきて、辛いけどいい結果があればいいよなあっていう、ちょっとブルージーな気持ちで作った曲なんです。もちろん僕もそうですけど、誰しも生きるならポジティブでいたいと思うだろうし、常々は無理だとしてもいつか未来があると思って、いまを楽しめたらいいというマインドですかね。

――アレンジ的にはオーボエのような音も入っていて、よりクラシック音楽の雰囲気に近い意味でのシンフォニックなサウンドになってますね。

Fümi:ひと口にシンフォニックといっても定義が広いと思うので、そのフィールドのなかではこの曲も表現のひとつとして許容範囲なのかなと思って。NormCoreで曲を作る時はシンフォニックというテーマから絶対外れないようにしてるんですけど、とはいえ足回りにEDMの要素を入れることもあるかもしれないですし、Clean Banditの「Rather Be」もストリングスが入っていてシンフォニックなものだと僕は思ってるので。

――そういう解釈であれば、本当に幅広い音楽性に挑戦できますね。

Fümi:まあ「ウワモノでストリングスが鳴ってればいいんかい!」ってなっちゃいますけど(笑)。

「映像と関わる形で音楽をやっていきたい」

――おもしろければ何でもアリだと思います。今回のシングルでNormCoreが本格始動したわけですが、ユニットとしてこの先どのようなビジョンを思い描いていますか?

Fümi:僕はアニメが好きなので、まずは今回のようにアニメ作品の楽曲で印象を残して、いろんな人に知っていただきたいというのがいちばんのところです。それにもっと映像やアニメーションとの化学反応というところで音楽をやっていきたいというのはありますね。例えばRADWIMPSさんが『君の名は。』でやっていたみたいに、映像を作っている方と協議して作品を作っていくのはすごいことだと思うので。劇伴じゃなくても、インストとかアニメのなかで使われるようなトラックも作れたらと思ってるんです。映像と関わる形で音楽をやっていきたいので。

――『EVIL OR LIVE』では声優にも初挑戦されたとのことで、ひとりの表現者としてもますます幅広い領域に足を踏み入れてますものね。

Fümi:あまりどういう風になりたいとかはなくて、とにかくみんなと楽しい時間を共有できたらという思いでやってるだけなんですけどね。子どもの頃は指揮者になりたいと思ってたんですけど、先生に無理って言われて諦めて(笑)。次は『もののけ姫』を観て久石譲さんみたいになりたいと思って、音大を目指してピアノを弾いてたんですけど、それも無理って言われて。でも声楽であれば、男性の場合は声変わりもするので高校生から学び始めても間に合うと知って、勉強して音大に入ったんです。そこからいまの人生の道筋に入り始めたので、やっぱり最初は音楽だったんですよね。

――声楽を学ばれたことが歌手への道に繋がって、その音大で出会った人たちと新たにユニットを組むことになって。音楽愛がいろいろな可能性に広がっていってるわけですね。

Fümi:NormCoreも「アーティスティックなことにも挑戦してみたら?」という助言もあって、そんなに深いところまで考えずに始めたユニットだったんですけど、いざやってみたら、僕はこういうことをやりたかったんだなっていうことに気付いて。もちろんみんなと楽しい時間を共有するのが好きでいろんなことをやってきたんですけど、やっぱりそもそもは音楽が好きなので、NormCoreでは自分のルーツに向き合う作業もできますし、本当に楽しみながら活動してます。(北野創)