投入後は味方にプレスのかけ方を指南するなど、さっそくピッチ上の指揮官ぶりを発揮。いぶし銀の輝きを放った。(C)TOKYO VERDY

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[J2リーグ42節]東京V2-1徳島/11月19日/味スタ
 
 70分ごろ、東京Vのベンチが少し慌てた様子を見せる。接触プレーで負傷したボランチの井上潮音がピッチに座り込み、続行不可能となったからだ。
 
 ここで投入されたのが、百戦錬磨の大ベテラン・橋本英郎だった。
 
「まずは指示されたことをやろうという感じでした。あとは、ドゥ(ドウグラス・ヴィエイラ)とアラン(・ピニェイロ)がプレスの部分で多少戸惑っていたので、そこを整理して、ハッキリしてあげた」
 
 冷静に試合を振り返った背番号27の強みは、戦況を分析できる戦術眼だ。その鋭さは、弊社ウェブサイトの連載でも度々披露しているとおり。この日もまさしくピッチ上の指揮官として味方に的確な指示を送り、徳島に逆転を許さなかった。
 
 そしてその戦術眼は、ほかの部分でも活かされていた。
 
「投入された時は、選手に他会場の結果を伝えませんでした。ピッチで戦う選手がどういう感情でいるのかわからなかったし、気持ちを揺さぶる必要はなかった。どう反応するかもわからないので、伝えて良いことがあるとは思わなかった。勝たなければいけない状況だったなら、伝える必要があったとは思いますが」
 
 橋本の投入から17分後に決勝弾が生まれ、昇格プレーオフへの進出が決定した。準決勝で4位・福岡とのバトルに勝利したうえで、6位・千葉が勝ち上がれば、決勝は味スタで迎えることとなる。この点については、笑みを浮かべながら次にように話す。
 
「みんなは味スタに戻りたがってましたけど、僕はあまり戻りたくないですね。ホームで千葉と戦うことになれば、僕らは引き分けでも昇格が決まる。『勝たないといけない』という感覚が薄れるし、そういう試合は僕らには良くない。チャレンジしていくことが重要で、今日の試合もそう。引き分けで良いなかでもチャレンジしたことで、徳島に勝利できた。アウェーで勝ち切る試合のほうが良いと思います」
 
 初の昇格プレーオフを戦う東京Vにとって、Jリーグ通算434試合に出場してきた大ベテランの存在は頼もしい限り。チャレンジの気持ちを忘れない38歳とともに、まずは福岡戦の勝利を目ざす。
 
取材・文:梶山大輔(サッカーダイジェスト編集部)