11月18日のJ1リーグ第32節。佐賀県鳥栖市のベストアメニティスタジアムで、サガン鳥栖対FC東京の一戦が行なわれている。

「J1でプレーしたことは自信になる。これを上を目指すきっかけにしたい。(負けている展開だったので)やってやる、と思ってピッチに入り、緊張もなかった」

 この試合で、17歳6カ月でのJ1デビューを果たしたFC東京のMF、平川怜はこう語っている。梶山陽平の記録を抜いて、クラブ史上日本人最年少記録を更新。ボランチにケガ人が出たことで急遽、ベンチに入り、後半27分からピッチに立った。下部組織育ちのホープがトップチームに加わったことは、来季に向けて朗報と言える。

「イバルボには吹っ飛ばされていたけど、遜色ないプレーだった」「ボールが持てるし、顔も上がっていた」「練習から実績を積んでいたから驚きはない」……と、味方も敵も、そのデビューには及第点を与えている。


サガン鳥栖戦でひと足早くデビューを果たした平川怜(左)と久保建英

 平川の後には16歳の久保建英が控えている。久保も今シーズン中のJ1デビューが秒読みだ。バルサ帰りの新鋭には、”国民レベル”の大きな期待がかかる。

 しかしFC東京はこの日、戦術的にほぼ破綻した状態で敗れている。若い力が育っているのは間違いないが、果たしてそれは希望なのか?

「J1リーグ優勝、アジア制覇」

 FC東京は首都のクラブとして高い目標を掲げてきたが、今シーズンは「アジアチャンピオンズリーグ出場権」と現実的に下方修正している。しかし結局、その目標にも遠く及ばなかった。

 9月には公式戦5連敗で10位に沈み、篠田善之監督を解任した。その後はコーチから昇格した安間貴義監督が引き継いだが、現在も12位に低迷。なによりサッカーの形すら見つけられず、迷走したままシーズンを終えようとしている。

「東京はどうしたんだろう?」と、対戦した鳥栖の選手たちが訝(いぶか)しむほどの内容だった。

「パスをつなぐ」

 FC東京はそれが基本路線のようだが、論理的に無理があった。FC東京の3バックは、自らプレスを外して縦パスを入れたり、ボールを持って運んだりするようなタイプではない。しかも鳥栖戦は、3人とも中央に絞ったポジションを取るので、ボランチが落ちる余地もなく、ボール回しに動きが出ず、ひどく窮屈だった。ビルドアップでもたつくと両ワイドの選手が下がらざるを得ず、結局5バックになって後ろが重くなり、ボールをつなげるどころではない。

 そもそも選手同士の距離感に悪さが目立った。守備のサポートでお互い不具合が生じ、パスも距離が長すぎてカットされ、あるいは距離が狭すぎてプレスの網にかかる。3人が残って7人で攻め、中盤を相手に使われ、カウンターを浴びるなど、攻守はちぐはぐだった。

 前半34分の鳥栖の決勝点は象徴的だろう。

 鳥栖はイバルボが一度失ったボールを自陣で取り返し、1人外してから縦パスを入れ、そのまま駆け上がる。右サイドに田川亨介が流れてボールを受け、落としたボールを小野裕二がフリーでスルーパスを送り、”出没した”イバルボがゴール前で1人をかわす。GKとの1対1のシュートは外すも、こぼれ球を福田晃斗が押し込んだ。

 この局面で、FC東京は全ての対応で後手に回り、スペースを有効に使われていた。

 FC東京では、先発に復帰した橋本拳人が中盤でスペースをカバーしつつ、バランスをとっている。さらには3列目からゴール前に顔を出し、際どいシュートも放った。その奮戦によって、どうにか完全な破綻を食い止めていた。

 しかしチーム戦術は機能していなかったに等しい。前線では、能力の高い選手が個の力で可能性は見せたが、どれも単発だった。

「FC東京は右で作って、ボランチをフリーにし、左の太田宏介からのクロス」

 鳥栖陣営はその形だけを徹底的に警戒。何度か危うい場面はあったが、それをしのぐと、試合のイニシアチブを握っている。後半途中、鳥栖は5-3-2に切り替えたことで受身に回る時間が増え、FC東京が攻めた印象は残ったが、決定機はほとんど作らせていない。

 アディショナルタイム、FC東京は交代出場の大久保嘉人が1点を返したが、相手のディフェンダーの凡ミスを拾ったもので、次につながる気配のないゴールだった。大久保自身、全く覇気を欠いた。マジョルカ時代から取材しているが、鳥栖戦ほどプレーに入っていない姿は初めてだ。

「東京の選手は、もっと自信を持ってプレーすべき」

 大久保はそう言い続けてきたが、チームとしての調和が見えず、選手ひとりひとりが何をするべきか、見失っている状況に近い。

 これで、若手の才能を伸ばすことができるのだろうか?

「久保はいい形でボールが入れば、チャンスは作れる選手ですね。ボールの置きどころがいいし、パスセンスもあって、J1でもできるはず。ボールを持ったら違いを出せますからね」

 J3でも一緒にプレーした橋本は、デビューが待望される久保についてそう語っていた。

「久保は若いからフィジカルとか守備の部分では弱さはあるけど、それを補ってあまりある攻撃力はありますよ。足りない面を見るよりも、よさを出させてあげたい。チームとして、彼を活かせるようなシステムや戦い方が必要になると思いますけど」

 この日、デビューした平川も堂々としたスキルを見せつけている。ポテンシャルは間違いないのだろう。あとはJ1でプレーを重ねて実力を身につけ、才能を爆発させることだが……。

 来季に向け、FC東京は古参選手たちが移籍や引退を表明している。新監督にはガンバ大阪を率いた長谷川健太氏が有力と言われる。チームが変革期にあるのは間違いない。

 次節、11月26日のサンフレッチェ広島戦では久保のJ1デビューが濃厚と言われている。

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