今年、結成11年目を迎えたHilcrhymeが2カ月連続シングルをリリースする。10月18日発売の「恋の炎」はラテンの情熱的なダンスチューン、11月22日発売の「涙の種、幸せの花」は<僕が君の居場所となろう>と励ます、彼ららしさがつまった心温まる楽曲だ。そのほか大ヒット曲「春夏秋冬」の8年後を描いた「アフターストーリー」等も収録されていて、TOCが「リミックスも入れると6曲入っているから、ミニアルバムと言ってもいいくらい」というほど、彼らの多面的な魅力がこのシングル2枚に凝縮されている。自分たちの強みを生かしながら、新曲のなかで今までにない試みもおこなったという2人。オリジナルとしては昨年11月の「WARAE〜In The Mood〜」以来のシングル。結成11年目の船出を切った彼らが今作に込めた想いとは。【取材=桂泉晴名/撮影=片山 拓】

女性をエスコートする男性を提示

――「恋の炎」は一目で恋に落ちてしまった男女を描いた、情熱的な大人な曲ですね。

TOC この曲はアダルトな感じなんですが、Hilcrhymeらしい歌詞が書けたと思っています。決してプレイボーイではなく、わりと純愛で、歌詞では1人の女性のことを頭から最後まで描いているので、普段のHilcrhymeの大人版といった形ですね。

TOC

――言われてみれば、主人公は一途な人かもしれないです。

TOC そう、結局は一途なんです。たくさんの女性が出てきているわけではなく、1人なので。そして、女性をエスコートする男性をちゃんと提示したかったんです。そういう男がかっこいいと思っているし、とくに若い子に「ちゃんと女性をリードしてあげなよ」というのを曲で伝えたかったんです。

――それはなぜですか?

TOC 今は女性の方が強いような気がしますが、女性をエスコートできる男が、僕は一番かっこいいと思っているんです。顔とか性格じゃなくて、甲斐性ですね。この曲には「そういう男になろうぜ」というテーマもあるし。

――エスコートする男性と聞いて、どんな人をイメージしますか?

TOC ジェームズ・ボンドですかね。

DJ KATSU ああ、なるほど。でも最近の若者は、ちょっと前には「草食系」とか言われたりして、結構消極的な男が多いというイメージはあります。たまたま、20歳くらいで「彼女がほしいという願望はまったくない」みたいな人たちと連続して2、3人遭遇して。最近の若者では多いのかな?と思ったんですよ。まあ、僕たちが20歳くらいのときは、すごくギラギラしていたから。

TOC でもそういう草食系の人たちは、たぶん自分たちの世代にもいたんじゃないかな?

DJ KATSU そうかも。ただ僕の周りにいなかったから、今になって若者側でそういう人たちに立て続けに会って、ジェネレーションの違いを感じました。

――確かに若い人はお酒を飲まない、車は買わない、といった傾向もありますし。あまり欲がない。

DJ KATSU 単純に景気が悪くて、今、若者が車を買いづらい状態になっているというのもあるし。

TOC あと流行ですよね。僕たちが若い時はアメ車とか、大排気量のものがかっこいいとされていたし。それに女性もひかれるというのがあったんですよ。「絶対にいい車に乗りたい」とか、「乗せたい」とか。

DJ KATSU

――欲を切り捨てすぎると覇気がなくなるから、「恋の炎」くらいガンガンいった方が生き生きできますね。

TOC これはだいぶむき出しに語っていると思います。

――「恋の炎」のサウンドはラテン系ですが、どのように作っていったのでしょうか?

TOC まずDJ KATSUの作ったトラックはつねに20曲くらいストックがあるんですが、そのなかで一番うまくラップが乗りそうだった曲にラフでのせてみたら、すごく手ごたえがあったんです。それで「これをシングル化しよう」となり、いろいろギターを足したりトレンドの音をちょっと取り入れて。でも僕らは90年代後半から2000年前半に始めたので、そこらへんで流行っていたビートとかも入っていて、いろいろミックスしていますね。

――DJ KATSUさんがこのトラックを作られたのは、いつごろだったのですか?

DJ KATSU これはたぶん4、5年くらい前です。ずっとストックしていたトラックが急にチョイスされて、ラフが上がってきたんです。結構いい感じになっていましたね。今はラテンやトロピカルがはやっていますし、自分も結構好きなので。そういうテイストに仕上げようと話していたときに、2000年前半、まだHilcrhymeとして活動する前に、クラブで流行っていたレゲエとかと同じ感じのリズムの曲があって、クラップの雰囲気が合いそうだから、「ちょっと入れてみない?」ということになり、それで結構連チャンして叩いている音が入っているんです。ディワリリディム(DIWALI Riddim)というんですが。

TOC レゲエはビートのことを、リディムというんです。それでリディム1つ1つに名前が付けられていて、すごく目立ったリディムがディワリというんですが、それと同じ作りになっていますね。

DJ KATSU そのディワリリディムでいろいろなアーティストがいろいろな曲を作っていて。

TOC ディワリ以外にも、ドロップとか、ガーディアン・エンジェルとか、向こうの人が考えてつけているんですが、すごくいっぱい名前がありまして。レゲエの人はビートに名前をつけちゃうんですよね。それにいろいろなミュージシャンがのる。だからまったく同じオケで、いろいろな歌があるんです。

DJ KATSU そのリディムだけで1枚のコンピレーションみたいなアルバムがあったりして。たまたまディワリのキックと「恋の炎」の最初のラフが同じリズムで、せっかくだからクラップも足してみようかということになり、ちょっとアレンジはしているんですが、そういう2000年代のダンスホールみたいな感じにしました。あと、ギターの雰囲気はちょっとスパニッシュというか、もともと打ち込みでギターを入れていたものを、デビュー当時からお世話になっているギタリストの武藤良明さんに弾いていただいて。とくに3番のあたりは、スパニッシュギターの雰囲気でお願いしました。

――今のトレンドだけではなく、2000年代のサウンドを取り入れているんですね。

TOC 逆に今っぽさはあまり意識してはいなかったんですよ。たぶん今っぽさを作るんだったら、4、5年前のトラックを選ばないと思うんです。それよりいいグルーヴが出れば、機材が全部違うから70年代でも80年代でもちゃんと今の音になるので。最近いろいろなミュージシャンの人と話すんですが、80年代、70年代のリバイバルというかオマージュをしても、結局2017年の音になると思いますね。たとえば映画『ラ・ラ・ランド』とかは70年代のテイストをすごく入れていますが、現代の映画だし、それがすごく前衛的だと思うし。音楽もきっとそうなんだと思います。

――なるほど。でも今は選択肢がたくさんあるから、選択するのが難しそうですね。

TOC 僕たちの音楽はたぶんパソコンで作っているから、選択肢が半端じゃないんです。

DJ KATSU 音はほぼ無限にありますよね。たとえば一つの音色を選んでも、そこからシンセだったらちょっとしたパラメーターをいじるだけでも、音はガラっと変わりますし、シンセのチョイスもめちゃくちゃいっぱいあります。プラグインも、昔だったら機材の置き場に限度があったのが、今はパソコンの中に納まるから無限に増やせるんですよ。だからと言っていっぱい増やしても全部を把握できないから、結局気にいったものを選ぶことになるです。選べる幅はめちゃくちゃ広いからこそ、単純に「こういうのを作りたい」というイメージすることの方が大事ですね。そのイメージがあれば、あとはイメージに合う音を探していって作り込んでいきます。

8年経った今だからこそ書けること

――そして2曲目の「アフターストーリー」は、2009年の大ヒット曲「春夏秋冬」とつながっているそうですね。8年を経って、どんな変化を描きたいと思われましたか。

Hilcrhyme

TOC “8年”は、例えば当時15歳だった子が23歳になっているから、もう結婚して子供がいたりするくらいの変化を伴う年月だと思うんです。この曲は実際に「春夏秋冬」という曲で描かれていた男女2人の8年後を想像して書いたものなんですが、子どもが生まれたりすると、子どもへの愛情がすごくなっていって、いつのまにか夫婦の2人の時間が減っていったりしますよね。でも1番大事なのは、2人の愛情だと思うんです。「春夏秋冬」から8年経って時が流れても、色あせない思いを、僕は曲にして残したかった。それで、これを聴いて反応してくれた人には8年前も思い出してほしいし、大事な人への思いというのは、ずっと変わらずに持っていてほしいです。さっきの女性をエスコートするという話に通じるんですが、たまには2人の時間を作ってあげて、また2人でどこかに行ったりすることが1番大事なんだよ、というのをこの曲で伝えたかったですね。

――サウンド的には、「春夏秋冬」とどうリンクさせようと考えられましたか?

DJ KATSU 「春夏秋冬」とテンポも違うしコード感も全然違うんですが、コンセプトが「春夏秋冬」の続きということだから、楽器の構成をピアノとウッドベース、ストリングスとか、そういうのは、寄せて意識して作っています。

TOC この曲は僕が作ったんですよ。

DJ KATSU そうそう。これはめずらしく歌先行なんです。TOCが先に歌メロを作ってきて。

TOC そうです。コードも僕だし。

DJ KATSU それを僕がアレンジしました。結構コードは違うんですが、リズム感は「春夏秋冬」のBメロにちょっと寄せたり、あと3番が終わった間奏で「春夏秋冬」のイントロが入っていて、これは完全に狙いましたね。雰囲気もある程度近いものにしようというのは、意識してやっています。

――そういえば、昨年のインタビューではTOCさんは「春夏秋冬」の第2章は全然イメージがわかない、と言われていましたが、どんな心境の変化がありました?

TOC それは忘れていました(笑)。ちょうど「春夏秋冬」がモチーフになって『春夏秋冬物語』という映画になる、と聞いたタイミングで主題歌を書いてほしいと言われて。「春夏秋冬」の8年後を書いたら面白いんじゃないかなと思ったのがきっかけです。

TOC

――映画化が大きかった?

TOC 映画化と、8年経ったから、もういいかなという感じがしましたね。たとえば「春夏秋冬」を書いた直後に続編みたいなのを書いていたら、自分の中ではいやらしさしかないですよね。そりゃ売れるかもしれないけど、やっぱり自分で書きたいと思うか思わないかというところを、1番大事にしたいので。8年経った今だったら自分の中で抵抗なく書けるな、と。あと、この8年で感じてきたことも形にできるし。それはHilcrhymeの新しいものとして世に伝えたいな、と思って。だから前回のインタビューの1年半前だと、まだそうは思えなかったのかもしれないです。

――3曲目に収録されている「Magic Time」は、みんなで歌う楽しいナンバーになっています。

TOC これはサンリオピューロランドのタイアップソングで、テーマパークに来てくれるお客さんに魔法のようなひと時を提供しよう、と思って作りました。僕たちもライブに来てくれたお客さんに、その時間だけはもうすべて忘れて楽しんでほしいと思っているので。その愛想いを歌詞にしたから、子どもだったり、恋人だったり、家族だったり、いろいろな方々にこの曲を楽しんで欲しいです。

――後半はコーラスでますます盛り上がります。

TOC 2番サビあたりからワーッと増えていって、最後みんなで合唱しています。こういう試みも初めてなので、ライブでみんなに歌ってほしいですね。やっぱりテーマパークということが頭にあり、パレードでキャラクターとみんなで歌って踊っているイメージがあったから、たくさんの人に歌ってもらうということに辿り着いたんです。

DJ KATSU この曲は1回サンリオピューロランドで披露しているんですが、そのときお客さんは初めて聴いているから、まだ大合唱するとこまでいっていないんです。ただそれが定着して、ライブで披露すると大合唱が起こるようになったらいいな、と思います。

――ちなみにお2人は小さいころテーマパークに行った記憶はありますか?

TOC 小さいころは、あまり行ってなかったですね。新潟には遊園地はいくつかあるんですが、サンリオピューロランドみたいなテーマパークはないですね。

――観覧車に乗ったりとか?

TOC ジェットコースターに乗ったりとか。やっぱり最初に行った遊園地は衝撃的でした。高いところとか、すごい速度のジェットコースターとか、非現実的じゃないですか。それを曲にしたつもりです。

The Hilcrhymeみたいな1曲を出したかった

――そして11月には「涙の種、幸せの花」がリリースされます。ドラマ「さくらの親子丼」の主題歌でもありますが、どういうふうに作られましたか。

DJ KATSU

TOC きっかけはドラマなんですが、The Hilcrhymeみたいな1曲を出したかったというのはありますね。自分たちの1番得意としている部分を改めて書きたかったので、そのいいきっかけをいただきました。ただ、書き下ろしはドラマの世界とリンクしないといけないから、台本を何回も読みましたし、すごくいい話だったので、これは相当なメッセージが必要だと思いました。また、エンディングで使われる曲なので、見る人がほっとするような曲にしたいと思いましたね。見終わった人が満たされるような曲になれば、成功なのかなと思って、それで「居場所」というテーマで書きました。

――これは「恋の炎」とは違って、ギターとTOCさんの声が呼応しているような、かなりギターの存在感を感じました。

DJ KATSU ドラマサイドの皆さんと全員で集まったときに、最初から「アコースティックギターで泣かせるような曲にしたいね」という話になったんです。それで、ギターがひき立つようなイメージで作り、TOCの歌が入ってからは、結構歌に寄せていきました。この曲は段階を踏んでデモをアップデートしているんですが、最後に鳴っているオルガンみたいな音は、ストリングスにするか、オルガンにするか、何パターンかやって、いろいろ試行錯誤した結果そうしたんです。最終的にオルガンの音が泣かせる雰囲気に合うな、ということになりましたね。

――結構、音が重なって聴こえるから、鳥のさえずりに聴こえたりとか、すごく不思議な感覚でした。

DJ KATSU そうなんですよね。結構、効果音みたいなのを使っています。シングルには〔Violin&Piano Ver.〕も収録されているんですが、生のヴァイオリンの他に、ちょっとした効果音も入れていて、それがうまく重なってくると、ただの効果音がパーカッションみたいに聴こえたりしてくるんです。

――すごい化学反応ですね。

DJ KATSU 昔から効果音が好きで、デビュー当時の音源から結構効果音はそこらじゅうに入れているんです。この曲も、ドラマの自分的なイメージでそういう音をイントロから入れているんですが、そこはHilcrhymeらしさの1つなのかな、と思っています。〔Violin&Piano Ver.〕だと、ビートもまったく入っていないので、本当に歌詞がより入ってくるから、ぜひそちらも聴いてほしいですね。

Hilcrhyme

――今回2カ月連続シングルを出されますが、お2人にとってどういう意味があると考えていいますか?

TOC だいぶ振り幅は広い2枚になったと思いますね。リミックスも入れると6曲入っているから、ミニアルバムと言ってもいいくらい。あと「恋の炎」の初回盤にはツアーファイナルの映像が1時間半分収録されています。ミニアルバム+ライブDVDという意味でいうと、この2カ月連続のリリースは、今まででも1番濃いんじゃないかと思っています。

――シングルだと思って油断していたら(笑)。

TOC そうですね(笑)。ぜひここから入ってきてほしいというところもあります。Hilcrhymeの今が、一番わかりやすく表現されているのかなと思っています。

――まさに11年目があらゆる形でスタートしています。

TOC 期せずしてそうなったというか。これは決して狙ったわけではなく、スタッフともディスカッションしながら色々と精査していったら、こういうリリースになりましたね。Hilcrhymeを聴くうえで、すごくわかりやすいと思う。

DJ KATSU 去年Hilcrhymeは結成10周年を迎えて、今年11年目に突入しました。改めて1年目のようなフレッシュな気持ちでやっているので今までやっていないことに挑戦していくし、これ以上のことを来年以降、もっとやっていこうと思っているので、その辺も期待していてほしいです。

通常盤 初回限定盤

インタビュー撮り下ろしカット

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Hilcrhyme
MV

作品情報

東海テレビ・フジテレビ系全国ネット「さくらの親子丼」主題歌
Hilcrhyme 22nd SINGLE「涙の種、幸せの花」
2017年11月22日(水)リリース
▽収録曲
M1涙の種、幸せの花
M2涙の種、幸せの花[Violin&Piano Ver.]
M3恋の炎 [TeddyLoid Remix]
M4涙の種、幸せの花 -Original Instrumental-
M5涙の種、幸せの花 [Violin&Piano Ver.]-Original Instrumental-
M6恋の炎 [TeddyLoid Remix] Original Instrumental-
【初回限定盤(CD+DVD)UPCH-7370/1,700円+税
 DVDには「涙の種、幸せの花 」-MUSIC VIDEO-収録
【通常盤(CDのみ)】UPCH-5930/1,100円+税

東海テレビ・フジテレビ系全国ネット「さくらの親子丼」
10月7日(土)スタート(全8回)
毎週土曜日23時40分〜24時35分
東海テレビ・フジテレビ系全国ネット「さくらの親子丼」主題歌