中村俊輔、サッカー史に残る“日韓W杯落選” 39歳の告白「落ちるのは当然だった」

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【天才レフティーの思考|No.6】2002年日韓W杯のメンバーから漏れ、世間の耳目を集めた当時を回想

 世界ナンバーワンの国を決める4年に一度の祭典「FIFAワールドカップ」(W杯)は、サッカー界最高峰の大会として知られる。

 日本代表は今年8月にロシア行きの切符を手にし、6大会連続6度目のW杯出場を決めた。各大会のW杯メンバー選考は大きな注目を浴びてきたが、J1ジュビロ磐田の元日本代表MF中村俊輔は「落ちるのは当然だったと思う」と2002年日韓大会に味わった失意の落選を振り返っている。

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 1998年フランス大会で悲願のW杯初出場を飾った日本は、02年日韓大会、06年ドイツ大会、10年南アフリカ大会、14年ブラジル大会に続けて出場。そして8月31日、難敵オーストラリア代表に2-0と勝利し、来年6月のロシア大会行きを確定させた。

 過去のW杯メンバー選考において、98年フランス大会ではFW三浦知良やMF北澤豪らが漏れ、06年ドイツ大会ではFW久保竜彦らが選外となり大きな話題を呼んだ。そして02年日韓大会で憂き目に遭い、世間の耳目を集めたのが中村だった。現在39歳のレフティーは当時を回想する。

「(横浜F・)マリノスでキャプテンを務めさせてもらったから、チームをまとめる難しさも分かる。それを考えると、2002年日韓ワールドカップの代表メンバーで自分が落ちるのは当然だったと思う」

「トップ下で使ってくれれば…」の強い思い

 中村は当時を思い浮かべながら、落選は当然と自ら口にしている。02年大会に向けてフランス人のフィリップ・トルシエ監督が日本代表を率いていたなか、02年5月17日午後3時30分に始まった会見で23人の大会登録メンバーを発表。トルシエ監督不在のなか、木之本興三・強化推進副本部長(当時)がメンバーを読み上げ、テストマッチで結果を残していた中村をはじめ、FW高原直泰、MF名波浩らが選外となった。

 とりわけ中村のリスト漏れは議論百出となったが、本人は「だって、ベンチで『くそっ』てやってましたから」と冷静に語っている。もっとも、トルシエ監督に反旗を翻していたわけではない。

「自分としては、ぶすっとしてるつもりは一切なかったです。ただ、自分をトップ下で使ってくれれば絶対にやれるのに…っていうギラギラした思いだけは胸に秘めていました」

 トップ下に強いこだわりを持ち、人一倍の自信も胸に秘めていた。ところが、トルシエ体制では左アウトサイドが主戦場となり、ボールタッチの回数も減少。指揮官へのアピールに燃える中村が、貪欲な姿勢を前面に押し出すのは自然の流れだった。結局、当時23歳のレフティーに非情通告が突きつけられたが、現在の中村は「今考えれば、その決断はよく分かる」と胸の内を明かす。

「秋田さんやゴンさんを呼んで…」と納得

 02年大会でサプライズ選出となったのは、長らく代表から外れていたベテランFW中山雅史とDF秋田豊だった。その煽りを受ける形となった中村だが、今となってはトルシエ監督の選考に納得しているという。

「トルシエ監督からしたら、ワールドカップは短期間の大会だから、秋田さんやゴンさんのように豊富な経験があって、リーダーシップを備えた選手を呼んでチームを盛り上げたいだろうし、今考えればその決断はよく分かります」

 横浜FMで11年シーズンから6年連続でキャプテンを務め、選手の立場ながらチームをまとめ上げる難しさも理解している。様々な経験を経て、中村の胸に去来する思いも移り変わっているようだ。

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【了】

大木 勇(Football ZONE web編集部)●文 text by Isamu Oki

神山陽平●写真 photo by Yohei Kamiyama