めったに起きないが念のために心肺蘇生は覚えておこう

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心臓が予期せず鼓動を停止する「心停止」が起きる状況はさまざまだが、性行為中に心拍数が上昇しすぎるなどして心拍異常を起こし死亡する、俗にいう「腹上死」を思い浮かべる人もいるだろう。

心疾患の既往歴がある人が心停止を不安視し、性行為を含めて特定の行動を回避しようとすることもあるようだが、米シダース=シナイ・メディカルセンターのアーポ・アロ医師とサミート・チュー医師らが行った調査で、性交中に心停止を起こす事例は非常にまれであることが確認されたと、2017年11月12日に発表した。

発生率は10万人中0.28人

一見面白ネタのようにも見える研究だが、米国立心肺血液研究所(NHLBI)が資金を提供して行われた研究で、米国心臓協会の学術集会で発表された真面目な調査結果だ。

その内容は、2002〜2015年に収集された米北西部の医療記録データから、成人の心停止例約100万件を抽出。さらにその中から聞き取り調査に対応した4775人の記録をもとに、性行為と心停止の関係を分析するというもの。

聞き取りで性行為中もしくは性行為直後(性行為終了後1時間以内)に心停止を起こしたかを確認したところ、起こしたと回答したのは34人で、「性行為中」は18人、「直後」は15人、不明が1人だった。

また、1年間の性行為に関連した心停止が起きた事例と、その他の心停止事例の発生数を比較すると、年間発生率は10万人中0.28人となり、非常にまれな事例であることも確認されたという。

心停止を起こすのは圧倒的に男性が多く、今回の調査でも94%が男性だ。全心停止事例中でも性交中に男性が心停止を起こした症例は1%だったのに対し、女性は0.1%と10分の1になっている。傾向としてアフリカ系米国人が起こしやすかったという。

平均年齢は60歳以下で、「高齢者が性行為中に心停止する」というようなステロタイプなイメージはあまり当てはまらなかった。

性交中に心停止を起こした人の中には、心室細動や不整脈など心臓の状態が悪くなっている、心疾患の既往歴があり今でも服薬を続けているなどの例も確認されているが、健康な人と比べて特に発生率で有意差はなく、アロ医師は「誰にでも起きる可能性はあるが、きわめてまれである」と結論づけている。

心肺蘇生を受けられない人が多い

性行為で心停止を起こす心配はあまりないと安心(?)したいところだが、問題も確認されている。

性行為中の心停止を証言している34人は全員がパートナーにその瞬間を目撃されていたにもかかわらず、心肺蘇生(CPR)をすぐに受けたのは3分の1だけで、残りは緊急通報を受けて救急隊員が到着するまで適切な処置を受けていなかったというのだ。

AHAと国際蘇生連絡協議会 (ILCOR)が発表しているCPRのガイドラインでは、心停止を確認した場合、すぐに胸骨圧迫を行うことが蘇生率を高める最も重要なポイントとされている。

アロ医師も「状況に関わらず、突然の心停止を起こした人に対してはCPRを速やかに行うことの重要性について周知する必要性がある」とコメントしていた。