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もくじ

前編
ー 高性能クラスのリーダー、ついに動く
ー 最大514ps、最小420ps
ー 高性能と高機能
ー ワゴンに乗っているのを忘れる走り

後編
ー ウェットで絶大な4WDの優位性
ー 積載状態でタイムアタック
ー 速さか、広さか、それとも…
ー 番外編・伏兵現る

ウェットで絶大な4WDの優位性

この2台にRS4はどう割って入るのか? とりあえず単純加速では遅れを取ったものの、それくらいの差は現実の路上じゃほとんど関係ない。RS4だって凄まじく速いクルマだ。

コイツはそれまでの高性能アウディにあったよろしくない伝統を完全に破壊することに成功した。すなわち加速はキョーレツだけど突出しているのはそれだけ……みたいなことは全然なくて、本当にロードカーとしてのバランスが取れている。

具体的にはこうだ。ステアリングはM5と同じくらいダイレクトで正確。乗り心地ではわずかに勝ち。それとこのクルマを公道上で不安定にすることができるドライバーがいたとしたら、その人はある意味天才。

それくらいRS4は安定している。つまりM5と完璧に対等なハンドリングを備えたアウディなわけで、それはひと世代前なら考えられなかったことだ。  

そして、以上のことは全部ドライ路面での話だというのを忘れてはいけない。ウエットのアスファルトの上なら、残る2台がRS4に追いつける可能性は限りなくゼロだ。

そんなわけで、RS4が80年代前半から続くアウディ製4WDのなかで最高にバランスがよくて、最高にアンダーステアが出ないクルマだっていうのは認める。

だけど、RS4の4WDが後輪重視だなんていうアウディの発言は信じない。リアが勝手に出たり、または振り出して楽しいクルマでは絶対にないから。  

ワゴンとしてネガティブなのは車内空間。RS6が出るまではこのクルマがアウディのラインナップのなかでいちばん大きいワゴンだったはずなのに、ほかの2台に比べると、というか比べる気にならないくらいの空間しかない。

狭くて短くてキャビン全体もこぢんまりしている。M5はその反対。リアウィンドウが傾斜しているから中に収まるのがラブラドル・レトリバーあたりだと頭回りが少々窮屈かもしれないけれど、これ以上の大きさが欲しい家族はたぶん少ない。

少ないながらもそういう家族がいたとしたらE63を勧める。  

E63と比べてしまうと、ほかの2台は使いやすさとキャパシティはハッチバック並みでしかない。ワゴンではなく。今回のクルマにはヘンテコな傘立てがついていてそれが少なからず場所を取っていたけれど、Eクラスはとにかく広大だ。

さらにリアシートもワゴンらしさバッチリな感じで、座面のクッションを起こしてシートバックを倒すダブルフォールド式になっているのはE63だけだった。

ほかのはシートバックが倒れるだけで、本当の意味でのフルフラットにはならない。ついでに言うとE63は後席のレッグスペースも広い。

積載状態でタイムアタック

ドライのストレートでヨーイドンしたら確かにRS4がいちばん遅いかもしれない。けれど雨が降ったら話は別だ。実際にMIRAのテストコースに水をまいて確かめてみよう。  

クワトロのRS4では何も考えずに5000rpmでドカッとクラッチをつなげばいい。それだけで97km/hに4.6秒で到達する。素晴らしい。E63はも同じく4.6秒で、これはメーカーの公称値と同じ。

A/Tとトラクションコントロールのおかげで誰でも同じタイムを出すことができる。いちばん手を焼いたのはM5だった。何回かのトライののちに出したベストは5.1秒でほかの2台にはおよばなかったけれど、決して遅いタイムじゃない。ほかが速すぎただけだ。

さてここからが本番。MIRAまでやってきた本当の目的は、3台の積載状態の性能をテストしたかったからだ。

350kgの水と砂利を積み込んだ状態でRS4が出した0-97km/h加速タイムは、空車時の約1秒落ちの5.4秒。対するBMWは5.6秒で大健闘。3台中いちばんタイム落ちが少なかった。

そして最速は5.3秒のE63。速いにもほどがある。コイツはもしかしてホットロッドなのか?  

予感的中。ハンドリング・コースに場所を移してのタイムアタックではホットロッドE63はまるで振るわず、1分10秒6という3台中最低のタイムにとどまった。M5はそれより2秒以上も速い1分8秒0を記録。

グリップもステアリングの切れ味もいい。ベストラップはRS4の1分7秒3。しかしながら乗っていて愉快なことはほかの2台の半分も起こらなかった。だから速いわけだけど。  

そしてRS4は、350kgのウエイトを積んだ状態でさえほかの2台の空車時よりも速かった。記録は1分7秒9。M5は重量配分の変化でターンインがスムーズになったけれどリアの慣性重量が大きすぎて安定性に欠け、タイムは1分8秒8止まりに。1分11秒5のE63も似たような感じだった。  

いちばん楽しめたのはM5。けれど全天候型のスプリンターはRS4。これがここでの結論だ。

速さか、広さか、それとも…

そろそろ結論を出そう。  

まず家族がすごく多くて荷物も比例して多くてペットもいる人。そんな人にはメルセデス・ベンツE63。これが最高。

加速は強烈なのにオールラウンドな性能ではいちばんパッとしないのはナンだけど、人と荷物と動物を運搬するには文句なし。ユーティリティ重視ならこれを選んで間違いない。

次にBMW M5ツーリング。M5サルーンのリアアクスルの上に余分にガラスとスチールパネルを追加したのはもしかすると失敗だったんじゃないかという心配は杞憂だった。

ドライビング・フィールはほとんどサルーンに遜色ない。速く走ることにかけてはM5がベスト。僅差でアウディRS4を凌いだ。  

M5はガンガン回りたがるエンジンと、それをガッチリ受け止めるシャシーを備えている。ただしそれは同時にゆっくり走るにはまるでむいていないクルマだという意味でもあって、いかなるシチュエーションにおいてもスーパーなエステートであるためにはちょっとかもっとネガティブな要素だ。

RS4ではなくてM5を選ぶかどうかは、RS4の車内空間で足りるかどうかで決めていいんじゃないかと思う。  

そしてRS4だけど、これについて僕は少しばかり困惑している。なぜなら今回の3台のなかで僕にとっていちばん特別な感じがしたのは何を隠そうコレだったからだ。

シャシーとキャビンのベースは1クラス下だけれど、そのどちらも単に納得できるというレベルをはるかに超えたところにある。さらに最高のドライバーズシートを備えてもいる。  

そしてここからがホントにホントの最終結論。そいつを出すにあたって、選ぶ目安になることを期待して個人的な好みを少しだけ加えることにした。  

まったく手間いらずのトランスミッションとコンコルド級の高性能を備えたラージでオールマイティなワゴンということになれば、E63以外の選択肢はありえない。

運転が楽しいクルマが好きだけど、それなりのスペースが必要なこともたまにはあるというならM5ツーリングを選ぶといい。

けれど僕としては家族用のパッケージをもう少し効率的に使うことにして、つまりたとえば愛犬に少しダイエットさせるつもりで、RS4を選びたい。コイツは最高のオールラウンダーだ。

番外編・伏兵現る

E63、M5、それにRS4。どれも非常にいいクルマだが、もう少し切れ味が控えめでもかまわないのでその分だけ安いワゴンが希望なら、こんなチョイスはいかがだろうか。

クライスラー300CツーリングSRT8。オーストリアで製造されているが、ボンネットの中身は当然ながらアメリカ製の6.1ℓV8のHEMIだ。  

430psの最高出力と58.0kgmの最大トルクは本編中の3台にも遜色なく、0-97km/h加速を5.0秒でこなし、最高速は270km/hに達する。  

このSRT8を日本のワインディングや市街地で乗り回すとなったときに問題になるとすれば、2035kgの車重と5015mmの全長だろう。

まだ日本には正式導入されてはいないが、その予定はあるそうだから、それまでじっくり悩むとしよう。