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もくじ

ー 911 R、いかにして「伝説」に?
ー ナナサン・カレラ人気、4つの理由 不遇のモデルも
ー 964RS、そして993RS 評価の違いとは

911 R、いかにして「伝説」に?

特別な911というのはこのクルマが生まれるのとほぼ同時に誕生しており、その最初のモデルとなれば、ある意味、全ての911の中でも最も特別なクルマだと言えるかも知れない。

1960年代を通じて多くの911がレースに参戦したが、1967年式911 Rは初めてポルシェが自身のレース活動のために製作したレーシング・モデルであり、当時の流行に従ってナンバー取得も可能だった。

ル・マンのプロトタイプカーである906から213ps 2ℓフラット・シックス・エンジン譲り受け、歴史上最も過激な軽量化を施された1台である。

最終的にフロントのバッジはステッカーに変更され、ドア・ヒンジはアルミニウム製、ホイールのセンターキャップも取り外されることとなった。

その結果は、これまでで最軽量の911として、なんと車重850kgの空冷ミサイルとなったのだ。残念ながら、ポルシェはわずか20台を生産したのみで、もし現在市場で販売されれば、その価値は最高で数百万ポンドにもなるだろう。

最近まで、1973年式カレラRS 2.7は正しいスペックとヒストリーがあれば£100万近くを支払う必要があったが、ありがたいことに、この価格は少しまともな水準にまで落ち着いてきている。

このクルマは模範的で最も素晴らしい911だと考えられているのだ。ではなぜ?

ナナサン・カレラ人気、4つの理由 不遇のモデルも

第1に、このモデルが真のホモロゲーション・モデルであることがあげられる。第2に、213ps 2.7ℓエンジンと、様々な軽量化策、更には見事に調整されたシャシーがもたらす素晴らしいドライビング。

第3に、このクルマは依然としてオーナーが真剣に走らせてみたいと思うに十分なマナーを備えていた。単なる気晴らし用のオモチャではなかったのだ。そして最後に、その特徴的な小さくけり上がったダック・テールだ。極めて美しい。では、その評判ほどに素晴らしかったのだろうか?

これは偉大な911の1台であり、稀にみるその技術の証しではある。しかし、その素晴らしさゆえの象徴性と、その評判が示すものとは別の話である。

対照的に、1988年のクラブ・スポーツは不当に評価されたままのモデルだろう。レースの為に作られたわけではなく、それほどコストも掛けられなかったし(実際、ベースとなったカレラよりも安価だった)、ノーマル車両と外観上の違いは殆ど無かった。

しかし、実際には賢明な選択によるアップグレードが行われ、完全に運転好きのドライバーのためだけに開発されたモデルだ。

ほとんど使い道の無いリア・シートや、パワー・ウィンドウ、サン・ルーフ、集中ドア・ロック、その他を取り去ることで50kgの軽量化を行った。

パワーは一切増えていないが、エンジンには新たなECUが組み込まれ、レッド・ゾーンが引き上げられると共に、一説にはベストのエンジンだけが使われた。

変更されたダンパーや標準装備のLSD、固められたエンジン・マウントも見た目は全くノーマルと見分けが付かなかった。

その結果はこれみよがしなものでなく、単に最適化されたという程度にとどまったが、ここにあのカレラと同じくらいに素晴らしい出自をもつ、真の傑作が誕生したのである。

964RS、そして993RS 評価の違いとは

1991年当時、964シリーズのカレラRSのロードテストを行った時はまったく違う評価をしていた。どうやら少し批判してしまったようだ。

このクルマは軽量化され、はぎ取られ、強化されたうえに10psの出力向上まで行われた。当時このクルマを好きになるべきだったのだ。

結局、ロードテストでは、サスペンションがあまりにも固すぎて、好きになれなかった。後にニュルブルクリンク周辺でこのクルマを走らせたときに、ようやく他の人々がこのクルマに何を見ていたのかが理解できた。

まさにレーシングカーを感じていたのだ。公道上では不快に感じたものが、サーキットでは驚くべきものとなって表れたのだ。

1994年に発売された993シリーズのカレラRSの素晴らしい点は、964のような我慢を強いる事が無かったことだ。専用の3.8ℓエンジンを積み、あらゆる軽量化が施され、993から採用されたマルチリンク式のリア・サスペンションによる恩恵は計り知れなかった。

しかし、公道上での刺激はもの足りなかった。

対照的に、乗り心地は良好で、スポーツ・サスペンションを搭載したノーマルの993よりもはるかに優れていた。サーキットでは出力の大幅な向上があったにも関わらず、964と殆どその速さにかわりはなく、その仕上げに甘さと難しさを感じた。

しかし、そんな事は重要ではなかった。このクルマも歴代911の中の特別なモデルであり、2.7カレラRSだけが運転をして素晴らしく、使い勝手がいいわけでもない。

ただ、これは後に続いたGT2バージョンには当てはまらないだろう。このクルマはマクラーレンF1を除けば、1990年代中盤に手に入れる事が出来たル・マンのレースカーの公道仕様に最も近いクルマだった。

こんにちの基準ではたいしたことはないと思うかもしれないが、436psのエンジンを非常に軽量なボディに積み、アクセルの反応はまさに野生そのものだった。

このクルマを運転するドライバーには慎重なうえにも慎重な操作が求められた。

その希少性も、現在でも崇拝されている理由だ。公道仕様は僅か57台しか生産されず、昨年取引きされた1台には£185万(2億7,695万円)の値が付いた。