最後に清水商が選手権に出場したのは2011年度。そこから数えると、6年ぶりの大舞台になる。写真:吉田太郎

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「清桜頑張れ!」「清桜頑張れ!」。
 
 エコパスタジアムのスタンドから鳴り響く「清桜サンバ」が、雨中で我慢の戦いを続ける清水桜が丘イレブンの背中を後押ししていた。

 かつて選手権で相手チームを飲み込んできた「清商サンバ」の系譜。選手権優勝3回の清水商の伝統を受け継ぐ形で2013年に開校した清水桜が丘は、伝統の青いユニフォーム、魂を込めて我慢強く戦い抜く選手たち、そして「清桜サンバ」とともに、開校後初となる選手権の舞台に駆け上がった。
 
 静岡県内3冠を目ざす静岡学園との決勝戦。降りしきる雨のなか、1万325人の観衆を集めた注目カードは、序盤からボールを支配して攻める静岡学園に対し、清水桜が丘はMF白井海斗主将を中心に鋭いカウンターを狙う展開が続いた。
 
 前半30分に静岡学園のMF渡井理己(徳島ヴォルティス入団内定)に4人抜きゴールを決められてしまった清水桜が丘だが、名将・大瀧雅良監督が「(勝因は)徹底できたところですね」と振り返るように、失点後も守備の集中力を切らさない。前半アディショナルタイムにカウンターから1年生FW松永颯太が決めた同点ゴールにより、イレブンが勇気づけられたのも大きかった。

 それ以降も圧倒的にボールを支配されながらも、相手のパスコースを消し続けると、中央に入ってくる相手をCB藤村永遠やMF築地健人らが次々と潰して見せる。そして、カウンターの怖さも示し続け、相手に2点目を許さなかった。
 
 延長戦も含めて100分間を継続して守り切った清水桜が丘。最後は「PKで負けても誰のせいでもない。こういう舞台で蹴ることは人生でもないこと。楽しんでやろう」と白井が声がけして挑んだPK戦を4-3で制し、桜が丘として初の全国切符を勝ち取った。
 
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 現在の選手たちが入学した際、すでに校名は変わっていた。彼らにとっては「清商」の名前は意識するものではあったものの、目ざしてきたのは名門復活よりも新たな歴史を作ること。優勝後、大瀧監督は「後ろを振り返ってもしょうがないから、前を向いて行かなければいけない」と語り、白井は「(初優勝できたことは)後輩にもこれからプラスになっていくと思う。ひとつ歴史を刻めたので、もっと全国で名前を知ってもらえるようにしていきたい」と決意を新たにする。

 とはいえ、彼らは「伝統の力も持つ初出場校」。戦力的には全国トップクラスではないかもしれないが、大瀧監督の言うところの「魂」、逆境でも諦めることなく戦い抜く力を持ったチームなのは確かだ。主に指揮を執るのは片瀬晴城コーチ(かつて清水東のMFとして選手権優勝)で、現代の選手たちに沿った会話を大事にするアプローチを続けてきた。そこから彼らは継続することの大切さを習得。そして、それをピッチで表現できるチームになった。
 
「みんなで我慢してやり続けるというのが桜が丘の良さなので、その良さを出してより多くの試合できればいいと思います。出るからには優勝を目ざしていきますが、一つひとつしっかり試合に集中したい」とは白井の言葉。特別な伝統を持つ初出場校が今冬、全国の舞台で躍動する。

取材・文:吉田太郎