広島捕手の今季成績一覧

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強打の捕手として期待された中村亘佑、育成6年経て支配下登録も1軍出場なし

 中村亘佑は、横浜商科大高校時代は強打の捕手として知られた。高校通算46本塁打のスラッガーは、プロ志願届を提出し、9月に広島カープ入団テストを受けて合格。2009年育成ドラフトで2位で指名され、広島に入団した。

 入団時の評価は、「ゆったりした構えからのフルスイングで長打を放つ打撃はもちろん、強気のリードで投手を引っ張り、捕手としての資質もある」というものだった。

 当時、広島の捕手陣は層が厚かった。

倉義和 35歳
石原慶幸 31歳
上村和裕 27歳
山本翔 26歳
白濱裕太 25歳
曾澤翼 22歳
中村亘佑 19歳 育成

 広島は伝統的に年齢差のある2人の捕手を併用し、徐々に世代交代をしていく傾向がある。2009年はベテランの倉が43試合、石原が124試合に出場。石原はWBCにも出場するなど不動の正捕手だったが、打撃のいい曾澤が14試合に出場し、次世代の捕手として台頭しつつあった。

 中村はルーキーだった2010年は2軍で20試合に出場、27打数5安打3二塁打、打率.185の成績だった。2011年は2軍で54試合に出場し、83打数14安打、打率.169。捕手としては6試合、一塁で11試合の出場にとどまり、代打やDHでの起用が多かった。

 2012年、曾澤の1軍起用が増えて32試合に出場。後継捕手争いに決着がつきつつあった。そんな中、チームは中村に実戦経験を積ませるために、四国アイランドリーグplusの徳島インディゴソックスに派遣した。

 広島は若手選手やドミニカ共和国カープアカデミー出身の外国人選手を、しばしば四国ILに派遣する。年俸は広島持ちだが、派遣選手は独立リーグで優先的に起用される。この年、中村は徳島で49試合に出場、152打数38安打2本塁打39打点、打率.250を記録した。

1軍昇格を目指した8年間、今オフはトライアウトを経て次のチャンスを探る

 しかし、育成選手との契約は最長3年間という規定の下、2012年オフに自由契約となるも、広島と再契約。その後、中村は2013年、2014年と自由契約になっては育成契約を結びなおした。

 この間、当然ながら一度も1軍出場はない。育成選手は支配下に昇格できない場合、大半が2〜3年で姿を消していくが、中村は6年も育成として在籍し続けた。球団側は、少なからず捕手としての可能性を見出していたのだろう。

 苦節6年。2015年オフに朗報が届いた。球団は2016年から中村を支配下登録すると発表。背番号は3桁の「126」から2桁の「68」に変更された。 

 育成時代より1軍昇格へ一歩近づいたが、それでも1軍までの道のりは遠かった。2016年は2軍で58試合に出場、115打数25安打1本塁打10打点、打率.217。そして、今季は37試合、32打数8安打0本塁打0本塁打8打点、打率.250。2017年は守備固めと代打での出場が多かった。

 10月26日に行われた今年のドラフト会議で、広島は今夏の甲子園で1大会6本塁打の新記録を作った強打の捕手、広陵高校の中村奨成を引き当てる。これに伴い、中村亘佑は戦力外となった。同姓の選手に押し出された形での戦力外で話題になったことは記憶に新しいだろう。

 8年を過ごした2軍通算成績は、265試合424打数87安打4本塁打40打点、打率.205だった。

 11月15日、マツダスタジアムで行われた12球団合同トライアウトに中村の姿があった。金森敬之(ロッテ)から中前打、信楽晃史(ロッテ)から四球、高木伴(オリックス)から遊ゴロ、岩本輝(元阪神)から左翼線に二塁打を放った。通算3打数2安打で12球団のスカウトにアピールした。 

 地元広島のファンは、8年間1軍には一度も出場することがなかった26歳に、温かい拍手を送った。(広尾晃 / Koh Hiroo)