中国では共産党の習近平総書記(国家主席)の権威付けの動きが進行している。一方で、習総書記について「偉大なる首領」と、故毛沢東主席を思わせる形容をした新聞のインターネット公開ページが閲覧できない状態になるなど、奇妙な現象も発生している。資料写真。

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中国で習近平(シー・ジンピン)共産党総書記(国家主席)の権威付けがさらに進行している。10日と14日には貴州省メディアの黔西南日報が、「偉大なる首領」と形容、共産党の宣伝部長も同じ表現を用いたと17日に報じられた。「偉大なる首領」は過去には毛沢東主席に用いられた表現だ。しかし「偉大なる首領」の表現については通常はネットで公開されている掲載紙面が閲覧できなくなるなど、「曲折」が進行している可能性もある。

米国華字メディアの多維新聞によると、黔西南日報は10日、「万民が心をひとつに新たな時代を切り開く 中国の特色ある社会主義を前進させる」と題する記事を1面で掲載し、写真キャプションで「偉大なる首領 習近平総書記」の表現を用いた。同紙は14日には「偉大なる首領の習近平総書記 黔西各民族幹部民衆に共通の心の声」と題する記事を掲載した。

「首領」の原語は「領袖」。「偉大なる首領」はかつて、毛沢東主席を形容する際に用いられた表現だ。「首領」という表現そのものも、トウ小平(トウは「登」におおざと)にはしばしば用いられたが、その後は使用頻度が減少していた用語だ。

ただし、黔西南日報は毎号の紙面をインターネットで公開しているが日本時間18日午前8時半現在、10日付については該当記事が掲載されたとされる1面が、14日についてはすべての紙面が閲覧できない状態だ。他の日付の記事は正常に閲覧でき、習近平総書記を「偉大なる首領」と形容した部分だけを、何らかの意図で非公開にした可能性も否定できない。

一方で、香港メディアの香港01は17日、中国共産党宣伝部の黄坤明(ホワン・クンミン)部長が16日、習近平総書記について「大きな党の首領、大国の首領、人民の首領を全党が擁護、人民が愛し戴く」と表明したと報じた。

中国共産党機関紙の人民日報は17日、黄部長による「社会主義の核心的価値観を育成し実践」と題する文章を掲載。文章は「西側国家は長期にわたり積み重ねた経済科学技術の優勢と発言力の強さを利用して、いわゆる“普遍的価値”を中核とする思想文化を売り込んでいる」として、中国独自の文化観・価値観を持つべきと強調。共産党による強力な一党独裁および最高指導者である習近平総書記に対する高い権威付けを肯定したと読み取れる内容だ。

さらに新華社系の新華網は17日、「習近平:新時代を導く人」と題する1万字以上におよぶ文章を掲載。同文は2012年に就任して以来の習近平総書記を絶賛し、「国内外メディアは彼を、中国を『富』から『強』に変化させる首領と表現」「国際舞台における大国の首領」と表現した。

中国において、政治家に対して「首領」の表現を多用することは、毛沢東主席に匹敵する権威付けを連想させる。逆に言えば、習近平氏が党の権威の低落に危機感を強く持っている証左とも理解できる。また、毛沢東主席には、壊滅の瀬戸際にあった中国共産党を立て直し、日中戦争に耐え抜き国共内戦に勝利して中華人民共和国を設立したという、だれにも否定できない「偉大なる実績」があったが、習近平総書記には今のところ、格段に大きな実績は見られない。急速に進める権威付けに対する反発が共産党上層部で相当に強い可能性がある。(翻訳・編集/如月隼人)