経営に関する2つの資格、その違いをご存じですか?( 写真:Ushico / PIXTA)

経営について学ぼうと思うとき、多くの人が「MBA」を思い浮かべることでしょう。しかし、「中小企業診断士」の学習内容が「MBA」に近いことをご存じでしょうか。2つとも「経営」について学ぶことは共通しているのですが、どのような違いがあるのかについて今回は解説します。

学習内容は近いが、違いはさまざま

MBAは「Master of Business Administration(経営学修士)」の略称であり、ビジネススクールを修了したときに授与される学位です。経営全体の知識を習得した証しとされます。

一方、中小企業診断士は日本で唯一の経営コンサルタントの国家資格です。資格試験の勉強を通じ、経営全般を体系的に学ぶことができます。

資格取得者の特徴としては、MBAは商社や金融、大手メーカーなどの社員が社費でMBAを取得するケースが多く見られ、一方、中小企業診断士は自ら経営に興味を持つ方が多いという傾向があります。

勉強内容は、MBAが大企業の経営全般について学ぶことが多いのに対し、中小企業診断士は中小企業の経営全般に特化した内容を学びます。とはいえ、経営の根幹は企業の大小を問わず同じなので、どちらも経済学や人事管理、マーケティング、財務・会計など、「経営」に関する幅広い知識を学べます。

しかし、学び方には大きな違いがあります。MBAは、通学形式がほとんどであり、過去の企業実例を講義に取り入れながらディスカッションなどで知識を深めていくケーススタディ方式がほとんどであるのに対し、中小企業診断士の勉強は、多くの場合、1人での座学になります。

そもそも中小企業診断士の受験生は、仕事の傍ら勉強に励む方が圧倒的多数なため、夜や朝の空いた時間に1人孤独にテキストや問題集に取り組むスタイルになってしまうのです。予備校に通わず、独学で勉強する人が多いのも中小企業診断士の特徴です。

費用面では中小企業診断士が圧倒的に安く、予備校を利用した場合でも20万〜40万円ほど、完全に独学の場合にはテキストや参考書代のみの負担になります。一方、MBAは国立でも100万円ほど、私立になれば数百万円、海外に行く場合には数千万円と大きく費用が異なってきます。

MBAを選ばず中小企業診断士の道を選ぶ人の中には、「金銭面」の問題を抱える方がいるのも事実です。しかし、どちらの道を選ぶかにより「人脈」が異なってきますので、長期的に見てどちらに経済合理性があるかはその人次第と言えます。

難易度は単純比較できない

また、MBAと中小企業診断士の難易度を比べる人がいますが、簡単に比べることはできません。「卒業」までの過程が大きく異なるためです。

MBAは、選抜試験を突破したとしても、卒業要件の壁があり、単位取得の過程で挫折してしまう人が少なくありません。私の知り合いにも、仕事との両立の兼ね合いや、家庭の事情により中退を選んだ人が少なからずいます。また何より、国内から海外まで大学によってレベルはさまざまであるため、MBAと一言で言っても、難易度の差が生じてきます。

他方、中小企業診断士には入学や単位などの通過点はなく、「試験合格」の一点が突破口です。勉強もある程度自分のペースで進めることができますので、単位に追われることもありません(「試験日」というお尻はありますが)。ただし、経営コンサルタントとして唯一の国家資格であるだけあって、合格率は4%前後と難関です。

筆者も投資ファンドでの勤務や起業を通し経営を学んできたのですが、率直に申し上げると、経営の知識をつけるだけであるならMBAも中小企業診断士の資格も必須ではありません。経営者のそばで直に学ぶなり、書籍などで知識を習得しアウトプットしていくことでも十分可能です。では、これらの資格を取得する最大の意味はどこにあるのでしょうか? その答えは、「取得するまで/取得後の人脈形成」にあります。


MBAも中小企業診断士も、密な関係が構築されている珍しいコミュニティです。MBAなら同期やOB、中小企業診断士なら合格者の研究会などで幅広くつながりを持てます。それぞれコミュニティの性質が異なるため、今後のビジネスで得たい人脈が「どっちの層に多いのか」を知ることが欠かせません。

MBAに所属する人たちの多くは、昇進を狙ったキャリア組や、転職で年収アップを狙う上昇志向組です。年齢層も20〜30代がメインとなり、若手がキャリアアップを狙い知識を身につける場として形成されています。共に切磋琢磨し合った仲間とできる絆は強く、今後の人生においてもよき相談相手やビジネスパートナーとして関係を築くことができます。

また、高い費用を支払って学ぶMBAだからこそ、集まる仲間は意識が高く、相乗効果で飛躍を目指せるというメリットもあります。海外留学の場合には、得られる人脈がグローバルになり、世界的な規模のビジネスが展開できる可能性も広がります。

「独立・地元密着」志向なら中小企業診断士

中小企業診断士の受験層は、「定年後に何かしたい」「今まで得た知識をコンサルタントとして社会に還元したい」という考えを持つ熟練層が多く、実際に40〜60代の方が受験生の半数を占めています。長年部長を務めていたなどの管理職の方が多いため、合格後のコミュニティでは熟練者からの手ほどきを受けることも可能です。

全国各地に中小企業診断士独自のコミュニティが形成されており、診断士同士が相互に仕事を紹介し合うような流れも出来上がっています。若手であっても熟練者に囲まれながら仕事のスキルを学んだり、仕事を斡旋してもらったりすることが可能です。むしろ30代の若手だからこそ、可愛がってもらえ仕事に恵まれるチャンスもあります。

このように両者の特徴を知ることで、どちらが自分により合っているのか見極めることが可能です。転職や社内昇進にはネームバリューのあるMBAのほうがメリットは大きいですし、独立したいという方や、中小企業の成長や苦難を支援したいという志のある方には、中小企業診断士の人脈のほうが有利でしょう。人は環境に左右される生き物です。なりたい将来の自分を思い浮かべ、そのイメージに近い道を選ぶことが最適だと言えるでしょう。