都内でも指折りのホットケーキの名店『珈琲 天国』。浅草寺のそばにあり、常ににぎわっている人気店だ。

「先に天国行ってるね」と声をかけてご夫婦が待ち合わせするというユニークな光景も。

今回は大人気のホットケーキを徹底解剖。その美味しさはまさに昇天ものなのだ!



生地は作り置きせず、注文が入ってから材料を混ぜ合わせる。
多くの人を惹きつけるホットケーキとは?

伝法院通りからつくばエキスプレスの浅草駅へと通じる浅草六区通り。その一角に佇むのが『珈琲 天国』である。言わずと知れたホットケーキの名店だ。

週末には行列ができることもあり、なかには海外から通ってくる人もいるそうだ。そこまで人を惹きつけ、虜にしてしまうホットケーキとはどのように作られているのか?

まずは、作り方の工程からその美味しさの訳を探っていこう。



熱伝導率の高い銅板で生み出される美しい焼き目は、絶妙なタイミングで焼き上げるからこそ生まれる
食事の後でもペロッといける軽い食べ心地にこだわり抜く

生地は作り置きせず、注文が入ってから材料を混ぜ合わせる。

2種類をブレンドしたオリジナル配合の小麦粉、卵と牛乳、発酵バターを入れ、さっくりと混ぜるのがポイント。混ぜすぎは厳禁だ。

生地を作り上げたらすぐに銅板へ。この数十秒が勝負だという。生地が出来た瞬間に焼き始めないと、生地が死んでしまうのだと店主は語る。

そして銅板で4分ほど1枚ずつ丁寧に焼き上げていく。全てはタイミングが命なのだという。

そうすることで、ふわふわさっくりとした軽い食感のホットケーキが生まれるのだ。



最後に「天国」の焼き印を押してお皿にもって完成。この焼き印が『珈琲 天国』のトレードマークである

店主・上野留美さんは、浅草での開業が決まった時、とにかく軽く食べられるホットケーキを作ることにこだわったという。

それは、美味しいお店が多い浅草という土地柄、天丼やすき焼きなどこってりとした食事の後で立ち寄る人にも食べやすいものを、と考えたから。



軽いながらもしっかりとコクを出すため発酵バターを使用。ほのかにチーズのような香りが、ふんわりとした食感とともに口の中を駆け抜けていく

粉はもちろん、メープルシロップも軽いものを使用するという徹底ぶり。約10cmの手のひらサイズで2枚。

食べ終わった後にも、重たさは一切なく、小腹を満たしたという満足感だけが残る。完食はあっという間だ。

飲み物付きの「ホットケーキセット」で1,000円という価格もいい。


ホットドックも絶品なんです!!



「プレーンホットドック」(360円)。『ホームベーカリー中村』から仕入れる特注のパンは、小ぶりで、大きく反ったソーセージがより強調される!
迫力のビジュアル!ホットドッグも店主肝いりの品

同店がオープンしたのは12年前。お店を始めるとき、ホットケーキの他に、もうひとつ名物をと考えて作ったのが天国特製ホットドッグだ。しかし、浅草周辺でホットドッグ用のパンを作ってくれるベーカリーは、容易には見つからなかったという。そんななか唯一受けてくれたのが『ホームベーカリー中村』だった。

最初の頃は、本当に少量の注文だったにも関わらず、引き受けてくれたのは、上野さんが持参した『珈琲 天国』の企画書を見て「面白い」と思ったからだという。そんな奇跡の出会いから生まれた「プレーンホットドック」は、パンの両脇から飛び出るソーセージのビジュアルがインパクト大!まずはソーセージだけを食べ進めて、中心部でやっと香ばしいパンと一緒に食べられる。



上野さんは「死ぬ前に食べたいものはなんですか?」と言う問いに「ホットケーキ」と迷わず応えるほどホットケーキ好き。そんな彼女だからこそ、理想的なホットケーキを焼き続けることができるのだろう

新店が根付くのが難しい浅草という土地で、12年という年月営業を続けたことで「浅草のレジェンド」とまで呼ばれているという『珈琲 天国』。

彼女が店作りで大切にしたのは「インパクト」だった。ホットケーキの焼き印やお皿などに書かれる「天国」というワードも、そのひとつ。パラダイスのようなイメージもある上、一度聞くとなかなか忘れないキャッチーな言葉。そして、ホットケーキやホットドッグの間違いない美味しさ。それらが一体となり奇跡を呼んだのだ。



「天国オリジナルブレンドコーヒー」(550円)。飲み干した後、珈琲カップの底に注目。運が良ければ「大吉」が出るかも? ※大吉でもサービスなどはないので注意
『珈琲 天国』という場所のもうひとつの魅力

混み合う時間帯の『珈琲 天国』では、不思議な光景を目にすることがある。どう見てもスタッフではないご婦人が、混雑する店でササッと手際よく動き、空いた皿を下げて「じゃあね〜」と帰って行くのだ。もちろん上野さんが頼んでいる訳ではない。

「ありがたいですよね。まだまだ十数年、浅草にやっと受け入れてもらえてきたかもしれません」と上野さん。店をひとりで切り盛りする彼女をそっと見守り、大変な時は助けてくれる。



混み合ってくると常連さんは自らお皿を下げて帰って行くので、それを見ていた一見さんもなぜか下げて帰っていくという光景もよく見られるそう

また、ある日開店準備をしていると老齢の女性グループがおり、お客様かなと出迎えようとすると会話が聞こえてきた。「ここでちょっと休憩しましょうよ」「いいわね」「あら、やだ。天国なんてまだ行きたくないわよ」この会話には、思わず上野さんも笑ってしまったという。



浅草に来たら寄らずにはいられない名店だ

他にも、浅草寺にお参りに来た初老の男性が奥様に「先に天国行って待っているわね」と言われ、ドキッとしたという話も。

このように、『珈琲 天国』で生まれていくエピソードは、浅草という場所に集う人のあたたかさと人間味を含んだものばかり。

立ち寄るだけでもほっこり癒され、ホットケーキで小腹は満たされ、店内の雰囲気でなんだか元気が湧いてくる。浅草巡りで、こんなにも得るものがある名店『珈琲 天国』をはずすわけにはいかないのだ。