出上幸典氏:株式会社りらく代表取締役社長兼CEO

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 リラクゼーション業とは従来のマッサージと異なる業態だ。従来産業であるマッサージや鍼灸あんま指圧、あるいは柔道整復などは厚生労働省の所管監督下にある。一方、リラクゼーション業は2013年に総務省の「日本産業分類」に初認定された、新しい業態である。

 リラクゼーション業は定義として「手技と高いコミュニケーションスキルでの接客による施術サービスで、男女・年齢を問わない幅広い利用者の心と身体の癒しをサポートする産業」とされる。「手技」とは、肘から先だけを使う施術だということだそうだ。医療行為は一切行わない。

 この新進業態であるリラクゼーション業界のなかでも急成長を遂げて、現在店舗数で1位となっているのが株式会社りらくである。同社の出上幸典(いでうえゆきのり)社長に急成長の秘密を聞いた。

●リラクゼーション業界のQBハウス

――社名は「りらく」ですが、店名のブランドとしては「りらくる」で展開なさっていますね。

出上幸典氏(以下、出上) はい。2009年に創業者の竹之内教博(たけのうちゆきひろ)が1号店を大阪に開いたときは「りらく」屋号でしたが、16年に500店を達成したのを機会に新しいステージということで、あえて新ブランドとしました。

――リラクゼーション業界では店舗数が一番多いそうですね。

出上 11月1日現在で580店舗となり、毎月ほぼ5〜6店開店しています。すべて直営店で、25年に1,000店を達成するのが現在の目標です。

――実は私は近くのりらくるで2年来、ときどきお世話になっています。お店が大きい、という印象を持ちました。ベッドの数が15ほどもある。スーパーの2階で外階段を上がっていかなければならない。りらくるが入る前は焼肉屋でしたが、車で来なければならない立地という関係もあり、撤退してしまいました。

出上 当初から出店立地としてはロードサイドで駐車場があるところ、ということでやってきました。出店コストも安くなりますし。

――確かに料金は安いですね。

出上 1号店の時から60分のコースで2,980円としています。竹之内が10年に大阪の堺駅近くの雑居ビルでリラクゼーションに入ったら、60分で3,000円だったわけです。当時としては衝撃的な価格で、竹之内は「これだったらロードサイドで展開したらうまくいく」と思い第1号店を出した、というのが経緯です。

――マッサージや整体とは業態が違うわけですが、それらの先行業態での価格相場は1時間なら6,000円とかせいぜい5,000円でした。りらくるは価格破壊を行ったわけで、大きな驚きでした。いってみれば、理髪業界のQBハウス(10分1,080円、調髪のみ)がリラクゼーション業界に登場した、というような状況でした。

出上 そうかもしれません。

●セラピストのバックグラウンドは多彩

――いろいろなセラピストの方がいて興味を持ちました。

出上 現在実働してもらっているセラピストの方は1万2,000名ほどいるのですが、実は専業の方ばかりだけでなく、パートの方も多いし、主婦の方も珍しくありません。

――国家資格ではないのですよね。

出上 日本リラクゼーション業協会のセラピスト認定資格を取る方もいますが、基本的には自社で育成レッスンしています。私どものセラピスト育成センターは全国で35カ所あり、そのほかに臨時も含めると約50カ所で展開しています。各拠点にはトレーナーが1人はいます。

――ずいぶん数が多いのですね。どのくらいレッスンするのですか。

出上 セラピストになりたい、という方に広く働く機会を与えたい、また当社としてはセラピストをできるだけ確保したい、という意向がありまして、できるだけ希望者の近間で育成レッスンをできるようにしています。レッスン時間としては70時間から80時間を標準として、卒業試験に合格してもらうのが要件です。

――育成期間中は無給ですね。

出上 無給ですが、レッスン費用も徴収しません。実務に入ってからも希望があればフォローアップ・セミナーを無料で受けられます。

――技術の上達に力を入れているのですね。

出上 ちょうど10月27日に日本リラクゼーション業協会主催の「リラクゼーションコンテストJAPAN2017」があって、当社は2位に入りました。 

――私がやってもらったセラピストの方には、前職がSEでまだ40代の方がいましたし、定年後にこれを始めたという方もいました。

出上 主婦の方もいますし、学生の方もいます。年齢も国籍も問いません。副業としていただいてもいいし、出勤時間も自由なんです。就業の自由度を最大として、それへのハードルを下げる形態としています。

――セラピストの方にお伺いしたら、どこの店舗で働くこともできるし、出勤時間も自分で自由に選べるとか。

出上 入店希望の時間と業務希望店などを、1カ月前と1週間前に当社サイト上で希望登録してもらいます。各店ではセラピストの需要予測、いわば稼動枠がありまして、そこに先着順に入ってもらいます。関東のセラピストがお盆で九州に帰省している間は福岡で業務するということもあります。

――店ごとの稼動枠というのは、AI(人工知能)で決めているのですか。

出上 現在は本社でヒトにより決めています。いずれシステム運用の度合いを高めていきます。

●セラピストの稼動はシェアリング・エコノミー・モデル

――時間単価が安いので、セラピストさんの手取り、あるいは月収はどんなものなのでしょうか。

出上 セラピストとは雇用契約ではなく、業務委託契約としています。ですから、皆さん個人事業主で、会社としては交通費も払っていません。しかし、その代わりに詳細は申し上げられませんが、需要予測を行うことにより、セラピストが実働できる稼働率を高めるようにしています。

――1万2,000人以上も稼動しているということは、そんなに割が悪いわけでもない、と。

出上 セラピストさんの取り分はだんだん上がっていく仕組みになっていまして、ベテランになると1時間2,980円単価のうち、ずいぶんの額を受け取れるようにしています。なかには月に80万円稼ぐセラピストさんもいまして、サラリーマンの旦那さんより稼ぐ奥さんのケースでは、その旦那さんのほうが会社を辞めてしまって当社のセラピストに転向したという例もあります。

――指名することもでき、その場合は指名料がありますね。

出上 はい。下限は200円からで上限はなく、その指名料はセラピストさんが自身でそれぞれ決めるんですね。腕がよくて自信があるヒトは高く設定しています。指名の多さのランクを店ごと、そしてサイトでは全国規模で前月のランキングを発表して、お客様に参考にしていただきつつ、セラピストの励みにしています。

――セラピストの動員について、とても深いノウハウがあるのですね。

出上 セラピストの業務時間と、お客様の来店予想とのマッチング・モデルだと思っています。その意味ではウーバー・イーツと同じようなシェアリング・エコノミー的なアプローチだと思います。

――シェアリング・エコノミー・モデルだと「誰でも参加できる」ですか?

出上 1万2,000人以上登録しているセラピストの年齢は18歳から74歳まで広がっていますし、65歳以上が200名近くいます。外国籍の方も200名以上登録しています。
(文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント)