ヤマトシロアリをハンティングするオオハリアリ。(写真:京都大学発表資料より)

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 京都大学、岡山大学、琉球大学などの研究グループが、日本の在来種のアリであるオオハリアリが、アメリカにおいて同地の在来種を駆逐、外来種として分布を拡大していることを明らかにした。

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 オオハリアリはアリを捕食するアリである。主にはシロアリを狩るため、シロアリの近くに生息する。毒針を持っているため、時折人間にも被害が及ぶことがある。近年、ヒアリという外来の毒アリが日本にやってきて騒動になっているが、こうした問題は、当然のことながら、日本のこちら側だけの問題ではないのだ。

 外来種というものそれ自体は珍しいものではない。とはいえ、外来種になることが難しい性質の生物というものはある。たとえば、食性が限られる生き物である。極端な例をあげるが、ユーカリはオーストラリア大陸の、それも極東の限られた一帯にしか生息しないから、中国で笹を食べてパンダを駆逐したりはしない。

 だが、オオハリアリは、シロアリを捕食するアリであるにも関わらず、アメリカという新しい居住地にも適応を示している。もちろん、アメリカにもシロアリはいる。だが、調査の結果、アメリカにおけるオオハリアリの拡大は、シロアリの生息数にはインパクトを与えていない、ということが分かった。

 アメリカでオオハリアリは何を食べているのか、が調査の対象となった。シロアリの捕食者は、木材を食べるというシロアリの性質のために、炭素年代が古くなるという特徴がある。だが、オオハリアリは、日本にいた時よりも新しい炭素年代を示した。

 つまり、オオハリアリはアメリカにおいて、シロアリを食べはするものの、植物性の昆虫、節足動物などの、従来は対象としていなかったはずの餌も食べるようになっている、というのが今回の研究における発見である。

 研究の詳細は英国の科学誌「Scientific Reports」に掲載されている。