『コウノドリ』『先僕』『民衆の敵』……社会派ドラマ、増加の背景を考える

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 今期はメッセージ性の強いドラマが豊作だ。『コウノドリ』(TBS系)、『先に生まれただけの僕』(日本テレビ系)、『民衆の敵〜世の中おかしくないですか!?〜』(フジテレビ系)などには、「ドラマを通じて現代の社会問題について斬る」という共通点がある。そして物語に込められたメッセージは、かなりの濃度で視聴者の胸に届いているようだ。

(参考:櫻井翔、“スクールカースト”問題とどう向き合う? 『先に生まれただけの僕』タイトルの意味

 たとえば、『コウノドリ』で描かれたのは、佐野彩加(高橋メアリージュン)の産後うつ。その背景として、産休・育休中の女性の苦悩が赤裸々に描かれた。産休前に彩加が懸命に取り組んできたプロジェクトは、全面的に見直しになり、彩加の同期が新しいリーダーに決まってしまう。保育園がなかなか見つからずに焦る中で、後輩からの「安心して赤ちゃんを育ててください」というセリフは、あなたは育児だけやればいい…と社会に見放されたような感覚に陥るキーワードだった。「待機児童問題」や「ワンオペ育児」など、実際に経験しないとその大変さがわからない。そんな事象についてドラマを通して疑似体験することで、問題の深刻さが心にスッと響くように思うのだ。

 仕事と育児の問題について取り上げたのは『民衆の敵』も同じ。佐藤智子(篠原涼子)の選挙活動を支援していたママ友たちは、それぞれ出産前はバリバリ仕事をこなしていたキャリアウーマン。なかでも平田和美(石田ゆり子)は、出産を機に政治記者職から異動、いわゆる「マタハラ(マタニティハラスメント)」にあってしまった一人だ。結局、和美は上司に直談判して記者職に復帰するのだが、「マタハラ」について大々的に取り上げるわけではなく、“ママになったら当然のこと”といったスタンスでさらりと描かれていたのが妙にリアルだった。

 それに対し、若者から親世代までをターゲットとしているのが『先に生まれただけの僕』。初回で取り上げた「奨学金問題」は、「奨学金は借金だ」という現実についてシビアに訴えかけた。筆者は鳴海校長(櫻井翔)の言葉に震えるほどの恐怖を感じたし、放送後には、奨学金利用者などを中心にたくさんの声が上がるなど大反響となった。きっと、同時間帯で「奨学金問題」についてのドキュメンタリー番組を放送しても、こうは行かなかったはず。嵐・櫻井翔主演の学園ドラマの中で描かれたからこそ、そのメッセージはダイレクトに視聴者へと届いたのだ。

 ところどころにクスッと笑える要素も含んだ物語の中で、日本で起きている社会問題について鋭く切り込む。これが、現在のドラマのトレンドのひとつと言えそうだ。その背景には、若い人がドラマを観なくなる、といった“視聴者層の変化”があることは間違いない。視聴者の高齢化が進む中で、突飛な内容で冒険するというよりも、着実に人の心に響く、良心に訴えるようなドラマが主流となったように思うのだ。だが、これらのドラマを観ていると、小学校時代に授業で観た“道徳のテレビ番組”を思い出す。もちろん、ドラマのストーリーも十分楽しんでいるのだが、鑑賞後に背筋が伸びるような、心を入れ替えなくてはと使命感に駆られるような…正直、ドッと疲れが出るような感覚も否めない。

 ふだんあまりニュースを見ない人が、ドラマを通して現実を知るというケースも往々にしてあり、これらのトレンドは社会的に意味のあること。もちろん、そこに異議はない。だが一方で、“何も考えずに楽しめる明るいドラマ”がもっと観たいという願望もある。社会派ドラマに刺激を受ける傍ら、おもしろさだけを追求したドラマが減ってしまったことを、ちょっぴり寂しくも思うのだ。

(nakamura omame)