女性誌『Suits WOMAN』で注目を集めた「貧困女子」。これは普通の毎日を送っていたはずが、気がつけば“貧困”と言われる状態になってしまった女性たちのエピソードです。

今回お話を伺ったのは、派遣社員の村岡愛子さん(仮名・32歳)。地方の国立大学卒業後、東京に出てきて10年になります。

身長155cmでふっくらした体形、毛玉が付いた黄色のカーディガンのバストの膨らみが豊かですが、お腹の部分も盛り上がっています。フリマアプリで購入したというグレーのタイトスカートは中がキュロットになっているタイプ。ボルドーのストッキングに、黒の合皮のロングブーツ。かかとの部分のレザーは剥がれています。

「今日、ここまでチャリで来たんです。これから夜のバイトなので、1時間しかないんです」そう言って、柚子茶と照り焼きチキンサンドをオーダーしました。

「関西育ちの私が東京に来たのは、親から自由になりたかったんです。うちはお父さんが浮気ばかりしていて、お母さんが私にばかり過度にかまっていたんですよね。生理の周期から、日記やメモは全部チェックされるし、お小遣いはもらえないし……。大学生になっても門限が6時だったんですよ。でも、お母さんがかわいそうだから言うことを聞いていました」

20歳くらいまでは、特に友達もできなかったので、そんな生活が当然だと思っていたそうです。

「お金もあまりないので、勉強くらいしかすることがない。ゼミにアドバイスに来てくれた、10歳年上の大学のOBの男性と仲良くなって……まあ、相手は結婚していたんですが、半ばむりやり付き合うことになって、私のことを話したら“それはおかしい、異常だ”という話になり、大学を出たら彼は離婚し、私は上京して一緒に住む約束をしたんです」

デートは大学構内で行ない、母親が乗り込んできたことも……

先輩は地方出張に合わせて、愛子さんのところに来たそう。門限があるので、大学の構内でデートを重ねていたとか。

「そうしたら、私の異変に気が付いた母親が、大学まで来ていたんですよね。あれにはゾッとしました。バレなかったんですが、“愛ちゃんが心配なの”と泣かれると何も言えなくて」

そのことを知った彼は、「オレが愛子を助けてやる」ときつく抱きしめてくれたそう。

「あのときは本気で結婚すると思っていましたからね。でも、結婚している男は絶対に家庭を捨てない。私の父親もそうですもん。ほとんど家に帰らないのに、母親とは離婚しない。そうとはわかっていても、結婚している男とばかり付き合ってしまうんですね」

今の生活を伺うと、手取りの給料は28万円ですが、築35年のボロアパートに住み、外食などはめったにできないし、好きなものもロクに買えない生活をしていると言います。それだけでなく、電気が止まったことも何度もあるとか。

「大学を出て、母に叩かれ懇願されても“家を出て東京で暮らす”って話になった時に、母親は自殺すると言ってきたんです。私のせいで母が死んでしまうのはイヤなので、どうすればいいかと聞いたら、今まで育てた養育費として2376万円を請求してきたんです。それで自由になれるならまあいいかと思って、受け入れました。母としては私とつながっていたかったんだと思うから」

以降10年間、新卒の初任給が手取りで13万円時代は毎月5万円、現在は7万円ずつ振り込み続けているそうです。

「お金がなくて、クレジットカードの借金もしましたし、あまり大っぴらにできないバイトもしています。正社員だとバイトができないし、手取りが少ないので、25歳くらいから派遣になりました。一度派遣になっちゃうと、正社員として働けなくなるんですよね。今は後悔しています」

母親の子供へ対する執着のような愛は、時にエゴと化してしまう……。

上京時、妻と離婚して愛子さんと一緒に住むと言った既婚者の彼はどうなったのか……〜その2〜に続きます。