10月27日から公開されている映画『ゲット・アウト』が、じわりじわりとヒットしているのをご存知ですか?筆者はFacebookで映画好きの友達の絶賛コメントを見て、人気を知りました。

試しにインスタで#getoutmovieと検索すると、映画のワンシーンを描いた絵から、登場人物のコスプレまで、熱のこもった写真が投稿されています。これは何だか、スゴイことが起きている予感。

ということで、今回は『ゲット・アウト』の魅力に迫ります。

監督デビュー作が、とんでもない大ヒットに!

『ゲット・アウト』 監督・脚本:ジョーダン・ピール 出演:ダニエル・カルーヤ、アリソン・ウィリアムズ、ブラッドリー・ウィットフォードほか。公開中 (C)Universal Pictures.

【あらすじ】
ニューヨークに暮らすアフリカ系アメリカ人の写真家クリスは、週末に白人の彼女ローズの実家へ招待された。ローズの両親や兄弟に手厚い出迎えをうけたクリスだが、家にいる黒人の使用人は異様な雰囲気……。実家では亡くなったローズの祖父を偲ぶパーティーが開催されるも、居心地が悪い。「何かがおかしい」と感じたクリスは、ローズとともに実家を去ろうとするが……。

ローズのパパとママ。(c)Universal Pictures.

ジョーダン・ピールはアメリカの人気コメディアン。日本では未公開ですが、愛猫を誘拐された男が猫を奪還すべく奮闘する『キアヌ』などに出演。映画の制作・脚本・出演の経験のあるピールが、始めてメガホンをとったのが『ゲット・アウト』なんです。ちなみに本作は全米で大ヒット。アメリカの映画レビューサイトでは、99%が大絶賛だったのだとか。なんでこの映画、そんなにヒットしているんでしょうか?秘密を探っていきましょう。

どのシーンを見ても、「何かおかしい」

この映画のキャッチコピーは「何かがおかしい」ですが、本作は本当に「何かが変」なんです。まず、白人の恋人ローズの実家で働くのは、黒人の使用人たち。まず女性のメイドが挙動不審です。突然ぽろぽろ泣き出したり、鼻歌交じりに自分の顔をなでて、うっとりしたり……。気味悪ッ!管理人の男性も、何だか会話がかみ合わず変な感じ……。

「ノー、ノー、ノー、ノー」と泣き笑いするメイド。(c)Universal Pictures.

管理人の男性も笑顔が薄気味悪い。(c)Universal Pictures.

そもそも2017年の現代に、白人の家に黒人の使用人がいるって、おかしいですよね?もしかしたら、逆にローズの家族が黒人の使用人に操られているパターンかも?と思ったのですが、そんな浅はかな読みも外れます。すべての状況が腑に落ちない。そんな気持ち悪さが続くのが、『ゲット・アウト』の見どころのひとつなんです。

根深い人種差別を見せてくれる

さらに、亡くなった祖父のために行なうパーティーも集まるのは白人ばかり。皆、気さくに挨拶をしてくれるけれど、会話の端々に差別的なニュアンスを感じます。時代錯誤の服を黒人男性に着せているマダムは「お互いに尊重して暮らしている」と言葉ではいうけれど、どこか蔑んだような態度が見え隠れする。

ピール監督は、このシーンで白人のなかには心の奥底では黒人に対する差別意識を持っている人がいることを見せてくれています。

白人ばっかりのパーティーに萎縮するクリス。(c)Universal Pictures.

写真撮ったら激怒。なぜ?(c)Universal Pictures.

クリスの親友ロッドの存在も、この映画のエッセンスになっています。ロッドはユーモアを交えながら、さらりと白人を軽視することを言いますが、ベースにあるのは「白人を信用するんじゃないよ」というスタンス。人種の違いで嫌な思いをしていなければ、信用するな、なんて言いませんからね。日常的に人種問題が起きていることを、ロッドの会話からも知ることができます。

深読みしたくなるシーンが盛りだくさん

あなたも『ゲット・アウト』の世界に落ちてみる?(c)Universal Pictures.

この映画がヒットしている理由が、リピーターの多さにあります。というのも、1回目は想像を超えるストーリー展開に驚いて終わってしまいますが、2回目からは、隠された監督の意図が様々な所に隠されていることがわかるから。

アメリカで実際に黒人青年を白人警官が窒息死させた事件がありましたが、スマホで撮影した映像をきっかけに世界中にこの事件が広がりました。ピール監督は『ゲット・アウト』でスマホを重要な小道具として使っていますが、これは、あの事件を風刺している、という見方もできます。

『ゲット・アウト」は、ハラハラ、ゾクゾクするシーンがふんだんに盛り込まれたホラー映画ではありますが、人種差別を風刺した作品であることを意識して見ると、この映画の深みがさらに倍増しますよ。

あと1〜2週間は上映している劇場もありますから、『ゲット・アウト』の世界が気になる人は映画館へ急ぎましょう!