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 一般的に言われる「筋肉」は、人体の40%を占める。人が手足を動かしたり、食べたものを胃や腸の中に進ませたり、体じゅうに血液が送られるのは、すべて筋肉の働きのおかげだ。
 東京都立多摩総合医療センターの心臓外科担当医は、こう説明をする。
 「筋肉は、大きく分けると3種類あります。(1)関節をまたいで骨と骨をつなぎ、体を自在に動かす『骨格筋』。(2)食道や胃腸を形成して食べたものを消化器内で運搬する『平滑筋』。(3)心臓=ポンプを動かし、血液を循環させる『心筋』です。骨格筋は、自分の意志で動かせるのが特徴で、高い瞬発力があり、自分でしっかり鍛える必要があります。一方、平滑筋や心筋は、自律神経が支配しているので、自分の意志では動かせません。こうした、それぞれの特徴をしっかりと理解した上で、日常的に運動を重ね、筋力のアップに努めることが健康につながるのです」

 中でも、血液を送り出して循環させる心臓は、「ある一定の運動をすることで活発に働く」と、専門家は断言する。筋肉も大量の血液を必要とするので、体を動かすと心臓もいつもより活発に動き、より多くの血液を送り出そうとする。
 「言い方を変えれば、心臓も筋肉ですから、適度な負荷がかかることによって鍛えられるのです。しかし、運動をしない人は、心臓を“サボらせている”と言ってもいいでしょう」(同)

 そうした人は、加齢によって筋力が衰えてくると心臓の筋肉も次第に粗くなっていくという。心臓の筋肉を支える構造が脂肪に置き換えられ、筋肉自体がペラペラに薄くなってしまうのだ。
 「そのため、高齢になった人が心筋梗塞を起こすと、心臓の右心室と左心室を隔てている壁が突然破けて、穴が開いてしまう『心室中隔穿孔(VSP)』という状態が起こりやすくなります。そうなると、左心室から右心室に血液が流れ込んで肺動脈圧が上昇、肺うっ血を起こして呼吸状態が悪化し、心不全が進行してしまうのです」(同)

 しかし、心臓の筋肉が働かなくなるのは、単に加齢が原因だけではない。
 「若い頃から長期間にわたって激しい運動を続けていた人も、注意が必要ということです。例えば、アスリートが現役を引退するなどして、突然、ほとんど運動しないような生活にシフトすると、心臓の筋肉が薄くなる。筋肉量が落ちて脂肪に変わってしまう『サルコペニア肥満』と同じようなことが心臓にも起こるのです。そうなると、不整脈疾患を起こしやすくなります」(専門医)

 都内の総合医療クリニック院長、久富茂樹氏も、こんな話をする。
 「私のところに、まだ現役のアスリートさんが訪れ、『心房細動』で困っていると訴えたので相談にのったことがあります。心臓が1分間に250回以上も収縮を繰り返す不整脈の一種で、これが起きると血栓ができやすくなり、脳梗塞などのリスクが高くなります。日頃から体を鍛えるために運動をしている人は、より多くの血液を体じゅうに循環できるようにするため、心臓はそれに見合った大きさになっている。とりわけ、肺から血液を受ける左心房が通常より大きくなっているケースが多い。そうした人が運動をやめてしまうと、拍動をコントロールしているシステムが崩れ、心房細動を起こしやすくなるのです」
 こうしたことから、現役時代に頑張っていた人ほど、心房細動に陥るケースが多いという。

 では、運動から離れ、健康に自信が持てない、という人は、何から取り組むべきなのか。
 理学療法士・大澤弘瀬氏に聞いた。
 「筋力低下の直接の原因は、背骨のバネのような、しなやかさが失われていることにあります。運動は健康維持には欠かせないが、運動したぶん、同じだけの負荷が体へ返ってきます。それを背骨が吸収することで、運動が成立しているのです。ですから、運動をする目標は『失った背骨のしなやかさを取り戻す』、『筋力の制限を改善する』、『もともと持っている筋肉がしっかり働けるようにする』の3点になります」