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●危機に直面するMVNO

大手キャリアから顧客を奪って契約を急拡大させてきたMVNOだが、ここ最近その伸びに急ブレーキがかかっている。主な理由はキャリアがMVNOへの流出を防止する策を大幅に強化したからなのだが、現在のMVNOを巡る3キャリアと、MVNOを推進してきた総務省の思惑、そして今後について考察してみよう。

○好調だったMVNOが一転して危機を迎える

昨年まで、大手キャリアより圧倒的に安い通信料金を武器として、急成長を遂げてきたMVNO。だが今年、そのMVNOの伸びに大ブレーキがかかっているようだ。

実際、9割以上のMVNOに回線を貸し出しているNTTドコモは、MVNOの伸び悩みなどが影響し、今年度の純増数を220万から130万へと大幅に下方修正している。

またMVNO大手のインターネットイニシアティブ(IIJ)も、前年度まではコンシューマー向けサービスの「IIJmioモバイル」の純増数が、四半期毎に数万単位で伸びていたにもかかわらず、今四半期からはその伸びが急減。第2四半期にはついに、1万を切るに至っている。

なぜこれほど急速に、MVNOの伸びが落ちているのだろうか。MVNO自体の数が700社近くにまで増たことで、それらが一斉に限られたパイを食い合い、競争を激化させたという市場環境も影響しているだろうが、より大きく影響しているのが大手キャリアである。

これまでMVNOは、格安な料金を武器に、大手キャリアからユーザーを奪うことで契約数を増やしてきた。だがそのキャリア側が、MVNOに顧客が大量に流出していることに危機感を覚え、流出防止に向けた対策を大幅に強化してきたからだ。

○顧客流出防止の効果が表れたKDDI

中でもここ最近、MVNOへの顧客流出対策に最も力を入れてきたのがKDDIである。KDDIは低価格を求めるユーザー向けサービスの提供に最も消極的であったことが仇となり、MVNOの急伸によって低価格を求めるauブランドのユーザー流出が続いていた。

そのことに危機感を覚えたKDDIは、ここ数年のうちに低価格のサービスを大幅に強化。2015年にはauのMVNOとしてサービスを提供する子会社をUQコミュニケーションズと合併させ、「UQ mobile」ブランドによる低価格サービスへのテコ入れを図った。さらに今年1月には、MVNOの大手の一角を占めるビッグローブを買収。ケーブルテレビ大手のジュピターテレコムが展開する「J:COM MOBILE」と合わせ、3つのMVNOを活用して低価格を求める顧客を獲得する戦略に打って出たのだ。

●大手通信キャリアの引止め策

さらにKDDIは、auブランドの顧客流出防止にも積極的に打って出ている。その最たる例として挙げられるのが、今年7月に導入した「auピタットプラン」「auフラットプラン」である。これらは端末価格を値引かないことで、通信料金を安くするというもの。auピタットプランの場合、各種割引やキャンペーンを適用することで月額1980円から利用できるなど、MVNOに迫る低価格を実現したことが話題となった。

こうした一連の施策によって、KDDIはグループ外のMVNOへの流出抑止に成功しつつある。実際11月1日の決算会見で、代表取締役社長の田中孝司氏は「番号ポータビリティによるグループ外への流出はほぼ止まっており、アンダーコントロールな状況になりつつある」と話している。auユーザー自体の減少はまだ止まっていないものの、傘下のMVNOへの流出が主となっているため、業績に与える影響は小さくなりつつあるようだ。

○ワイモバイルで安泰のソフトバンク

出遅れを必死に挽回してきたKDDIとは異なり、低価格サービスを巡る競争で優位に立っているのはソフトバンクだ。同社はワイモバイルブランドを活用し、低価格を求めるユーザー向けのサービスをいち早く展開したことで、MVNOへの流出を抑えているのだ。

実際ワイモバイルは、月額2980円から利用できるなど低価格なサービスを提供する一方、ワイモバイルの前身となるウィルコムやイー・アクセスの資産を生かして全国にワイモバイルショップを展開。MVNOほどではないながらも大手キャリアよりは安く、MVNOよりサポートが充実しているという“ほどほど”のサービスがヒットしてユーザーを拡大。さらに型落ちながらもiPhoneを正規に取り扱ったり、テレビCMを積極展開したりするなどして人気を高め、低価格の通信サービスではトップシェアを獲得するに至っている。

もっとも、ワイモバイルが伸びればそれだけソフトバンク自体の売上は下がってしまうというデメリットもあり、ソフトバンクの国内通信事業は最近、減収減益傾向が続いている。

だがそれでも他社に顧客が流出するよりは、売上が落ちてでも自社内に顧客を抱えていた方がメリットが大きいのは確かなだけに、ソフトバンクがワイモバイルを強化する方針は今後も変わらないだろう。

●痛しかゆしのドコモ

○MVNOの伸び悩みがメリットとは限らないNTTドコモ

一方NTTドコモにとって、MVNOの契約数の伸び悩みは痛しかゆしな部分がある。その理由は先にも触れた通り、9割以上のMVNOがNTTドコモから、接続料を支払ってネットワークを借り、サービスを提供しているからだ。MVNOの利用者が増えればNTTドコモにも収入が入ってくるので、契約数が伸び悩めば接続料収入の伸びも期待できなくなってしまうのである。

もちろん、NTTドコモからMVNOにユーザーが流出してしまえば、1人当たりの売り上げ自体は落ちてしまう。そこで同社は、特定の端末を購入する代わりに通信料を毎月1500円値引く「docomo with」や、「dポイントクラブ」のリニューアルによる長期契約者優遇措置など、顧客のつなぎ止めに向けた施策を増やしてはいる。

しかしながら他の2社と比べるとサブブランドや傘下のMVNOを持たないなど、顧客でもあるMVNOへの配慮もあってか顧客流出防止に消極的な部分もいくつか見られ、同社が置かれている立場の難しさを物語っている。

そしてもう1つ、現状を最も快く思っていないのは総務省であろう。総務省は3キャリアによる携帯電話市場の寡占による料金競争の停滞を懸念しており、これまでにも3キャリアに対して、商習慣の大幅な変更を迫るなど厳しい対応をとる一方、MVNOを支援し市場競争を拡大する方針をとってきた。それだけに、キャリア側が守りを徹底的に固め、MVNOが停滞しつつある現状は、総務省にとって決して面白いものではなく、今後新たな施策検討を進める可能性が考えられる。

MVNOへの流出阻止を徹底したいKDDIとソフトバンク、消極的ながらもMVNOの広がりを期待するNTTドコモ、そしてMVNOを積極支援して強化したい総務省。MVNOの市場を巡る動向は、これら4者の思惑が大きく影響する形で、再び変化を遂げることになりそうだ。