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先日、柄本時生を取材する機会があったのだが、インタビューを終えたあとの雑談で、「友達とカラオケに行くと必ず誰かがハナレグミの『家族の風景』か『サヨナラCOLOR』を歌うんですよね」という話を聞いた。その友達の中には、同世代の俳優仲間である太賀も含まれているそうだ。


そんな話を聞いてすぐに、DISH//のギター&ボーカルで、役者としても活躍中の北村匠海が自身の二十歳のバースデイソロライブで、2年連続で「家族の風景」を弾き語りで披露したニュースを目にした。


昨年12月には、菅田将暉が出演したバラエティ番組「メレンゲの気持ち」で「家族の風景」を弾き語るプライベート映像が流れ、NHKのトーク番組『ミュージック・ポートレイト』では、妻夫木 聡が「人生で大切な10曲」にてハナレグミの「光と影」を選んでいたり、瑛太がTwitterで最近聴いてるアーティストとしてハナレグミの名前を挙げている。



Mr.Childrenの初期からのアルバムを買ったら、あの頃やあの頃の風景や感情がまたうまれてきた。音楽は生活。最近はキリンジのエイリアンズとdrifterとMr.Childrenと長渕剛とくるりとかまってちゃんとハナレグミと岡村ちゃんとラッドと木村カエラ。


- 瑛太 (@mituoda) May 14, 2017



他にも、斎藤 工や夏帆、宮崎あおい、原田知世など、彼をフェイバリットにあげる役者は枚挙がいとまがない。もともとプロの音楽家が好む“ミュージシャンズ・ミュージシャン”として楽曲提供やコラボレーションが多いうえに、“アクターズ・ミュージシャン”とも呼んでいいくらい、世代を超えた俳優に愛されるハナレグミの魅力はどこにあるのか。


 


今さら聞けない! そもそも“ハナレグミ”ってバンド? ソロ?


ハナレグミは5人組ファンクバンド、SUPER BUTTER DOGのボーカル、永積 崇が立ち上げたソロユニットである。


2002年夏からバンド活動と並行してスタートし、アコースティックギターによる温もりのあるサウンドと永積の聴き手の心を震わすボーカルで各方面から注目を集めた。


2005年夏には、竹中直人がSUPER BUTTER DOGのシングルとしてリリースされたスロウバラッド「サヨナラCOLOR」にインスピレーションを受けて製作した同名映画が公開されたりもしている。



 


“ミュージシャンズ・ミュージシャン”としての歩み


バンド解散以降はソロ活動に専念、日本武道館での単独公演や野外ライブ、弾き語りによるツアーなど、全国を旅するようにめぐり、各地の観衆を魅了。


2011年には是枝裕和がプロデュースした砂田麻美の初監督作品『エンディングノート』の主題歌「天国さん」と劇伴を担当し、翌2012年にはサントリー“角ボール”のCMソング「ウイスキーが、お好きでしょ」がオンエア。



“いちボーカリスト”としてライブを主軸に、マイペースな活動を続けていく一方で、2016年にはRADWIMPSの野田洋次郎が楽曲提供とプロデュースを務めたAimerのシングル「蝶々結び」にギターとコーラスで参加している。



 


アルバム『SHINJITERU』の存在


そして、2017年春、固定のバンドメンバーによる全国ライブハウスツアーを経て、かせきさいだぁや沖祐一(東京スカパラダイスオーケストラ)、阿部芙蓉美や堀込泰行らの提供曲に加えて、「深呼吸」や竹中直人の「君に星が降る」のカバーを収録したアルバム『SHINJITERU』をリリースしたばかり。



先のツアーはSUPER BUTTER DOGと似て非なる、まるであらたなバンドを組んだかのような構成となっていた。そして、ハナレグミを長く愛聴してきた人は、北多摩の団地を舞台にした映画の主題歌「深呼吸」と、永積が育った多摩の実家を連想させる「家族の風景」が重なり、全国を旅してきた彼が家に戻ってきたと感じた人も多かったのではないかと思う。


本作はどこか1stアルバム『音タイム』に近い感触があるのだ。乱暴な言い方になるが、“さよなら昨日のぼくよ”と歌う「深呼吸」は、いわば「サヨナラCOLOR」のアップデート版であり、角田 純・川内倫子によるMVが公開された「線画」は、あらたな「家族の風景」のようである。



 


どうしようもなくハナレグミに惹かれてしまう理由とは?


これらに共通するのは、愛らしくて切ない、ブルージーな魅力に溢れたメロディがあり、実家や家族、原風景を引き連れてくる歌詞があり、聴き手の心を優しく解きほぐしてくれる歌声があるということ。


つまり、聴き手にとって、ハナレグミの歌は、まるで実家に帰ったかのようにいつでも本当の自分に戻れる場所なのだ。だからこそ、素の自分とは異なる役柄で闘い続ける役者たちが惹かれてやまないのではないかと思う。


ロケ地で過酷な撮影をし、宿舎であるホテルの部屋に戻ったときに、思わず口ずさんでしまう、ハナレグミの歌。その瞬間に彼、彼女たちは役を離れて、自分に戻る……それは、学校や職場で普段の自分とは違う仮面をつけて頑張っている人たちにも言えること。


ハナレグミの歌には、自分が自分に戻れる、そんな効果があるのではないかと思う。


TEXT BY 永堀アツオ



紹介作品


2017.10.25 ON SALE

ALBUM『SHINJITERU』

SPEEDSTAR RECORDS