【ライターコラムfrom京都】仙頭啓矢、プロ1年目で感じた課題と手応え…目指すはチームを“勝たせられる”選手

写真拡大

 苦しいシーズンを強いられた京都サンガF.C.において、数少ない希望として若手選手の成長が挙げられる。中でも、終盤戦に差し掛かって存在感を高めているのが仙頭啓矢だ。高校3年時の全国高校選手権で小屋松知哉との2トップで“京都橘旋風”を巻き起こして準優勝。卒業後は東洋大学に進んで関東で経験を積んだ。そして今季、プロ選手として再び京都に帰ってきた23歳は、明治安田生命J2リーグをあと1試合を残した時点で23試合に出場して5ゴールという数字を残している。ルーキーイヤーとしては悪くない数字だが、その道のりは平坦ではなかった。

 スタートは順調だった。モンテディオ山形との開幕戦で交代出場によりJリーグデビュー。与えられた30分間で機能不全に陥っていた攻撃を立て直すと、その働きが認められて第2節の徳島ヴォルティス戦ではスタメンに名を連ねている。第3節のアビスパ福岡戦でJ初ゴールを決めるなど順風満帆に思われたが、その後は主力2人が負傷離脱したボランチでの出場が続く中で守備面の課題が露呈してきた。同時期にチームは戦い方をツインタワーを前線に配置するキック&ラッシュへ変更。中盤の選手に求められる役割は上手さよりも運動量や強さが優先されるようになり、仙頭は出場機会を失っていく。夏には「今は運動量や切り替え、球際で戦うことを求められています」と克服すべきポイントを話していた。彼の持ち味は技術面や攻撃の組み立てだが、プロの舞台で戦うにはそれ以外の能力、どちらかといえば苦手分野を引き上げる必要があったのだ。練習で布部陽功監督やコーチ陣の指導を受けて鍛錬に励み、練習試合では懸命に走って相手に身体をぶつけ、その上で攻撃面の良さを発揮できるよう取り組んできた。潮目が変わり始めたのは9月。第31節のレノファ山口FC戦で約5カ月ぶりに先発フル出場を果たすと、そこから定位置を確保した。仙頭自身の成長に加えて、ポゼッションも取り入れるようになったチームの戦術変更も後押ししている。

 布部監督は運動量や守備面の向上だけでなく、精神面の成長が大きいと感じているようだ。指揮官が例として挙げるのは第7節の横浜FC戦。この試合、ボランチで起用された仙頭は最終ラインのカバーリングなど守備の基本的な役割をこなせなかっただけでなく、ボールを持った際もミスが目立った。「最終ラインからのフィードが相手の足元へ飛んだんですが、あれは気持ちからくるミス。(判断が)すごく雑で『だいたい、この辺でいいだろう』というものだった。それが今はほとんどない。ピッチで自分の能力を全力で発揮することを覚えてきた」(布部監督)と説明する。その評価は起用法を見ても明らかだ。5月、岩崎悠人がFIFA U−20ワールドカップによりチームを離れた際、彼の抜けたサイドハーフには中盤の選手はもちろん本職がサイドバックの選手までもが日替わりでスタメン起用されている中、仙頭には一度も声がかからなかった。11月、台風21号により順延になった試合が水曜日に組み込まれて6日で3試合、中2日で移動もあるハードスケジュールの中、仙頭は全試合でフル出場している。しかも1試合目はFW、2試合目はサイドハーフ、3試合目はボランチと全て異なるポジションだ。役割が変わっても今のあいつなら実行できる、そんな指揮官の思いが感じられる。

 そんな期待に応えようと仙頭自身も必死だ。「個人としては、すごくいい経験をさせてもらっている。これまでやったことのなかったボランチでも、まだまだだけど守備の厳しさで成長できたし、複数のポジションで得点を取れたのも良かった。いろんなポジションを普通じゃなくて普通以上にこなせれば出場機会にもつながるはず」とさらなる成長を誓っている。同時に、チームとして結果を残せなかったこと、J1昇格プレーオフ圏内へ浮上できなかった悔しさからも目をそらさない。「試合に出ることが一番大事、ピッチに立たないと結果も残せませんから」。上手い選手から、チームを勝たせられる選手へ。最終節の松本山雅FC戦、有終の美を飾るために戦う。

文=雨堤俊祐