インタビューに応じてくれた宮本恒靖氏。現在はガンバ大阪U-23の監督を務めている【写真:Photoraid】

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必要となる“運”。組み合わせで決まるメンバー構成

 ガンバ大阪の宮本恒靖U-23監督は2002年日韓大会、2006年ドイツ大会で主将を務めただけでなく、2014年のブラジル大会ではFIFAテクニカル・スタディ・グループとして分析に携わった。過去の経験を基に、元主将が考える成功へのアプローチとは何か。11月6日に発売された『フットボール批評issue18』に掲載のインタビューの中から、その一端を紹介する。(取材・文:下薗昌記)

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 ワールドカップに関しては、酸いも甘いも噛み分けた男がガンバ大阪U-23の宮本恒靖監督だ。

 自国開催だった2002年の日韓大会では「今でも言われますよ」と照れ臭げに振り返った「バットマン」姿で初の決勝トーナメント進出に貢献。「黄金の中盤」と呼ばれた2006年のドイツ大会では大会初戦のオーストラリア戦で悲劇的な逆転負けを喫し、グループステージ敗退の憂き目を見た。

 ワールドカップの光と影を選手、そしてキャプテンとして見た男は現役引退後も、唯一無二のキャリアを歩んで来た。2014年のブラジル大会では、FIFAのテクニカル・スタディ・グループに属し、大会の技術や戦術などのトレンドを分析。ピッチ外から、ワールドカップを見続けた。

 日本サッカー界の「賢人」が自らの記憶をたどりながら、振り返ったワールドカップでの戦いはロシア大会に挑む日本代表にとって、示唆に富んでいた。

 ハリルホジッチ監督のもと、本大会に向けて強化の最終段階に入っている日本代表ではあるが、ロシア大会での躍進の鍵を問われた宮本監督は、やはり世界のサッカーシーンにおける日本の立ち位置を冷静に見極めている。

「対戦相手じゃないですか(笑)。運の部分は絶対にあると思いますしね」

 開口一番、こう言い切ったのはやはり、ワールドカップ本大会における日本代表の成績は振り分けられるグループリーグの顔ぶれに左右されるということである。

 そしてハリルホジッチ監督の戦い方もウォッチしている宮本監督は「その対戦国が決まった後に、戦いに応じた選手を選んで行くと思います」。

 12月1日にモスクワで行なわれる組み合わせ抽選会でいかなるグループリーグに振り分けられるのかが、まず日本代表にとって本大会での青写真を描く上で最初のポイントになりそうだ。

元日本代表主将が語るオフザピッチの重要性

本大会で選手たちが見せるパフォーマンスが日本代表の成績に直結するのは間違いないが、宮本監督が「(大会の成功に向けて)半分以上の重要性がある」と断言したのは、合宿地の選定や大会中の宿舎などオフザピッチの環境整備の重要性である。

「ピッチ内も大事ですが、僕らもずっとサッカーだけをしているわけじゃありません。テンションが高くなりすぎないようにとか、プレッシャーがかかり過ぎないようにとかコントロールをいかにして上げられるか。そこがピッチでのパフォーマンスにつながる。本当に5割と言っても言い過ぎではありません」

 前回のブラジル大会では前年のコンフェデレーションズカップでサッカー王国の気象環境などを体感していたにもかかわらず、イトゥーをベースキャンプとし、移動距離の長さや試合会場の暑さがデメリットとなったのは否めない。

 ブラジルほどの高温多湿となる会場はないにせよ、広大なロシアの地に乗り込む日本代表の事前合宿や本大会での拠点選びは、やはり見逃せないポイントの一つになる。

 もちろん、チームベースの確立やチームの軸となる選手の好パフォーマンスが大会での躍進に欠かせないのは言うまでもないが、残された期間で大事になるのは「自分たちのサッカーや方向性に自信を持てるかどうかですね。そこにある程度の自信や手応えをつかむことが出来ればポジティブな雰囲気で大会に臨めますし、自分たちの経験を振り返ってもドイツ戦やその前の親善試合はそうでしたから」。

 アジア予選や国内でのテストマッチでは体感し得ない世界のトップレベルと邂逅した先日のベルギー戦、ブラジル戦は日本代表にとっての格好の試金石となった舞台だが、現在の日本代表で宮本監督が期待を寄せるのは「原口とか、井手口」だと言う。「特に井手口なんかは大舞台というか大事な試合で大きな仕事ができると感じさせてくれますよね。原口は前に早くボールを持って行けるという点で日本人に少ない力を持っています」。

 宮本監督がガンバ大阪U-23の練習を終え、約1時間近くに及んだインタビュー。大会初戦の重要性や、ベテラン選手がもたらす意味など「賢人」が体感した経験談に基づく「等身大」のワールドカップを聞かせて頂いた。一読頂ければ、ロシア大会に向かう日本代表への視点や楽しみが変わって来るはずだ。

(取材・文:下薗昌記)

text by 下薗昌記