ベルギーに敵地で0-1の敗戦。悲観ばかりすべきスコアには見えない。


試合後、ベルギー代表の選手と健闘を称え合う久保裕也

 舞台のヤン・ブレイデルスタディオンは徐々に空席が埋まってほぼフルハウスとなり、人々は時に地鳴りのような大声援で古いスタディオンを不気味に揺らした。中世の姿をそのまま残すブルージュの街に溶け込む要塞は、確かにアウェーの空気を醸し出していた。

 世界の列強のひとつと、そんな場所で対峙したのだから、健闘したと言えるだろう。特に、前半には流れをつかんだ時間もあり、決定機を何度か作っている。

 ただし、最近の課題に対する回答は明確に示されなかったように思える。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、ブラジル戦の前に「選手たちにはボールを奪った後の動きを具体的に説明している。誰が顔を出して、誰が抜けていくのか、そういうところまで」と話していたが、実際はマイボールにした後の判断が遅く、周囲の動きが足りないシーンが多かった。

 ブラジル戦後に指揮官は「勇気が足りなかった」と述べたが、ベルギー戦でも消極的なプレーは散見された。相手ゴールを背にしてボールを受けてターン、時間とスペースが少しでもあれば果敢にゴールを狙う……。強豪相手にこうしたプレーをするには、技術に加えて「勇気」が必要だが、今回もまた精神面の物足りなさを感じる場面があったことは間違いない。

 実際に、そんな日本代表選手と戦ったベルギー代表選手たちはどう感じたのか。試合後、屋外に設置された、底冷えのする取材エリアで彼らを待った。

 最初に現れたのは、右CBを務めたクリスティアン・カバセレだった。プレミアリーグのワトフォードでプレーする26歳は、負傷中のレギュラーの代役を任され、キャリアで2キャップ目を刻んだ。前日の会見でロベルト・マルティネス監督は「カバセレの足元のボールさばきを見てみたい」と話していたが、2度目の代表戦の重圧からか、ちょっと自信なさそうにプレーしていた印象だ。そんな彼も、勝利を収めた試合後には冷静に質問に答えてくれた。

「日本のチームと選手にはポジティブな意味で驚かされたよ。選手は誰もが俊敏でテクニカルだ。彼らの動きには、僕らベルギー守備陣も悩まされた。まったく簡単なゲームではなかったよ。名前を挙げることはできないけど、チームとしてすごくまとまっていたと思う」

 続いてアクセル・ビツェルが足を止めた。今年1月から中国スーパーリーグの天津権健でプレーする28歳のセントラルMFは、「英語は完璧じゃないけど」と微笑みながら次のように話してくれた。

「まぎれもなく、歯ごたえのある相手だった。とてもいいチームだと思うよ。僕は中国でプレーしているからアジアのことが少しわかる。日本はアジアでナンバーワンのチームだと僕は捉えているよ。クイックでテクニカルな、クオリティーの高い選手が揃っている。だからこそ、僕らもあれほど手こずったんだ。今日は勝ててよかった」

 最も長く時間を取ってくれたのは、GKシモン・ミニョレだった。正守護神であるティボー・クルトワに代わって、3月のロシアとの親善試合以来の先発を飾り、無失点勝利を収めた29歳は上機嫌に試合を振り返った。

「クリーンシート(無失点試合)よりも、勝ったことが嬉しいな。簡単ではない相手に、勝利を得られたのだから、すごく満足しているよ。今は12月の(ロシアW杯の)組み合わせ抽選を楽しみにしている。うちにはクオリティーの高い選手が揃っているから、本大会では終盤まで残ることを期待している。とはいえ、まだまだ踏むべきステップはあるし、もっともっとチーム力を高めていかねばならない。

 日本について? お世辞ではなく、本当にいいチームだと思うよ。パフォーマンスもよかったよね。特に、彼らの組織的なプレスには、うちの選手も苦しめられた。選手個々のクオリティーも高かったね。親善試合であろうと、代表戦になれば相手は強くて当たり前さ。今日もタフな試合を予想していたけど、その通りになった。日本はそれだけ厳しい相手だった」

 この日、唯一の得点をアシストしたナセル・シャドリはワイルドなピッチ上の風貌とは異なり、知性を感じさせる控えめな物腰の青年だった。この日は左WBに入りながら、時に内側からドリブル突破を仕掛けるなど、日本の守備陣に混乱をもたらした。

「日本は優れたチームだと僕は思う。誰もが俊敏で、連動も素晴らしかったし、組織的なディフェンスはなかなか崩すことができなかった。どの選手もそれぞれの役割を果たしていたと思う。予想を上回ったとは言わないよ。僕は厳しい試合になると思っていたからね。こういう風に別の大陸のチームと対戦するのは実に有意義だ。ロシアW杯に向けて、すごくいい準備になった」

 本大会でも優勝候補に挙げられる2チームとのテストマッチで、日本の選手が得たものは大きかったはずだ。結果は連敗でも、点差はそれほど離れていない。そして、リップサービスもあるかもしれないが、相手からリスペクトもされている。

 そこにはさまざまな見方や受け止め方があるだろう。でも、今は前を向くしかない。本大会を迎えるまでの限られた時間で、指揮官が言うように「すべての側面を高めて」いけるか。ロシアW杯で、ベルギー選手の言葉がお世辞ではなかったと証明してほしい。

◆「ベルギーと10回やっても一度も勝てない」との厳しい意見も>>