日本人は「がん」に怯えすぎ?(depositphotos.com)

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 今夏、米国臨床腫瘍学会(ASCO)が、調査委会社のHarris Poll社に委託して「がんの意識調査」を実施した。まずはその設問の一部と回答例を、あなたにも追体験してもらおう。

 「もし、あなたが高額ながん治療費に日々悩む患者だとしたら、その節約手段として下記のうち、どのような具体策を選択しますか?」

〕縮麁に受診しない

⊆N鼎魑馮櫃垢

処方された薬剤を受け取りに行くのを遅らせるか、受け取りに行かない

そ菠された薬剤を(自分の判断で)使用したり/しなかったりする

ヌ剤を半量だけ使用する

 もちろん仮定の境遇だとしても「自分的にはどの選択肢もありえない」「なんとしてでも治療費を工面する」という方が少なくないだろう。

 しかし、実際に行なわれた上記のがん調査の結果、ここでも貧困大国・格差社会アメリカの深刻な一面が浮き彫りにされた――。

 このがんに関する意識調査は、18歳以上の成人4016人を対象に、7月10〜18日の期間中にオンライン上で実施された。

 解析の結果、「がん経験者(あるいはその近親者)の27%」に、治療費を削減するために「必要な治療を省いた経験がある」との実態が判明した。つまり、前掲の 銑イ倭蹐銅体磴龍饌療な節約例であり、それぞれ,全体の9%、↓いいずれも8%、薬剤を半量ずつ常用して凌ぐイ寮疚鸛悗7%存在した。

「食う」か「飲む」かの苦肉選択肢

 27%といえば米国内の成人中4人に1人(超)のがん患者が、「高額な治療費」に泣かされ、不本意ながらも「節約対策を余儀なくされている」計算になる。この事態にASCOの関係者は「高額ながん治療費のために、米国民は健康状態のみならず生命までもが危険に見舞われている」とコメントしている。

 また同学会のチーフメディカルオフィサーであるRichard Schilsky氏もこう警鐘を鳴らす。

 「がん治療に行くか行かないか、それとも日々の衣食住に必要な経費を優先させるか、何人もそんな選択を迫られることがあってはならない。やむなく治療費の使用間隔を空けてみたり、苦肉の策で半量に減らして使用してみたり――。そんな用量の調整を患者自身が勝手に行なうのは危険だ。しかも、残念ながら多くの医療従事者がそんな実態を把握できているとは言い難い」

 日本人の場合はどうか? まったく同じ設問&回答例は寡聞にして存じないが、今年1月に公表された『がん対策に関する世論調査』(内閣府政府広報室調べ)から、日米の意識差がそれなりに読み取れる2例の集計結果を引用してみよう。

 同調査は昨秋の11月17日〜27日までの期間中、全国18歳以上の日本国籍を有する者3000人を対象に実施されたものである(有効回答数:1815人)。

 まずは、がん検診に関しる設問に「2年以上前に受診した」「今までがん検診を受けたことがない」と回答した層856人への追加質問――。

 「あなたがこれまで、あるいは最近、がん検診を受けていない理由は何ですか?」という設問の集計の結果、回答の上位4項目はこうだった。

ーける時間がないから【30.6%】

健康状態に自信があり、必要性を感じないから【29.2%】

I要なときはいつでも医療機関を受診できるから【23.7%】

と駘僂かかり経済的にも負担になるから【15.9%】

政府への要望にみる日米差

 もう一度、ASCOの調査結果に戻れば、回答者の多くが米国政府に対して「がん治療薬の薬価を抑制する措置を講じるべき」だと考えていることも認められた。上位3項目は以下のとおり。

.瓮妊ケアが直接、製薬会社と医療用医薬品の価格交渉をできるようにすべき【92%】

∪府が薬価を規制すべき【86%】

9餝阿らのがん治療薬購入を合法化すべきだ【80%】

 一方、前掲の『世論調査』が問うた「がん対策に関する政府への要望」に関して、「あなたはがん対策について、政府としてどういったことに力を入れてほしいと思いますか?」という設問(複数回答可)に、日本の成人層が回答した上位4項目は次のようなものだった。

,ん医療に関わる医療機関の整備(拠点病院の充実など)【61.5%】

△んの早期発見(がん検診)【56.3%】

仕事を続けられるための相談・支援体制の整備【49.3%】

いんに関する専門的医療従事者の育成【48.3%】

 BEST4に「薬価」に関する要望がない点からも、日米事情の相違点は明らかだろう。しかも、今回のASCO調査が明らかにしたところでは、米国民のがん予防に対する関心は薄く、「政府は予防対策にもっと資金を投じるべきだ」と回答した人の割合は半数にも満たなかった。

 さらに、肥満やアルコールが「がんのリスク因子であること」を知っていたのは全体の3分の1未満であり、がんのリスクに関する認識が低い米国事情も明らかにされた。

 男性誌・女性誌を問わず週刊誌の吊り広告を一瞥すれば、毎週どこかの雑誌で「がん関連」の記事が散見されるニッポン。こうして米国民の関心の薄さを知らされると、わが国民は、やや「がん」の二文字に日々威かされて過ぎているのかもしれない。とさえ想えてくる。
(文=編集部)