ディズニー好きでなくても1度は行きたい、米国の「ディズニー・ワールド」(写真:Abaca/amanaimages)

「生徒に人気がある大学」で3年連続トップ(大学通信調べ)の明治大学を徹底取材して、『あの明治大学が、なぜ女子高生が選ぶNo.1大学になったのか?』を出版した上阪徹氏に、取材中に最も印象に残ったというディズニー留学について寄稿してもらった。

アメリカ・フロリダ州オーランドにある「ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート」。東京の山手線の内側がほぼ2つ分入ってしまうという約122平方キロメートルの敷地を持つ、世界最大のディズニー・リゾートだ。

そのスケールはテーマパークの枠を超えており、全米はもちろん世界中から人々が押し寄せ、長期滞在する人も多い。ディズニーファンならずとも1度は訪れてみたいアメリカ有数のリゾートだが、とりわけディズニーファンにとっては、文字どおり、一生に1度は絶対に行ってみたい垂涎の場所といえるに違いない。

もし、このディズニー・ワールドに大学在学中に勉強として行けることになったら……。それどころか、インターンシップ留学として4〜5カ月間テーマパーク内で働くことができるとしたら……。休みの日や仕事が終わった後には、好きなテーマパークにいつでも遊びに行ける、なんて特典があったとしたら……。

5000人以上の学生が夢の国で学びながら働く


実は本当にこんなことができてしまう大学があるのである。創立から136年の歴史を持つ明治大学だ。2008年に新設された国際日本学部では、翌年から新たな留学制度をスタートさせた。それが、学部間協定留学「フロリダ州立大学ウォルト・ディズニー・ワールド提携アカデミック・インターンシップ」だ。

フロリダ州立大学に留学し、アメリカのディズニー・ワールドでインターンシップをすることができるというプログラム。この制度を使って毎年、日本から四十数人の学生が本当にアメリカに渡り、ディズニー・ワールドに4〜5カ月間、滞在。インターンシップとして働き、空いた時間にディズニーざんまいという時間を過ごしているのである。

この制度のきっかけをつくった明治大学国際日本学部の小林明准教授が語る。

「ディズニーは、アメリカ全土の多くの大学から毎年5000人以上の学生をインターンシップで受け入れています。ACE(アメリカン・カウンシル・オン・エデュケーション)が大学として単位認定してもいいですよ、ということを推奨して社会的に認証されていますので、単位化できるようになっています」

このACEのメンバーに入っているフロリダ州立大学がディズニーと契約しており、明治大学は、そのフロリダ州立大学と提携をしたのである。

「最初の10日間ほどフロリダ州立大学に行って異文化適応、異文化コミュニケーションなどの集中教育が行われます。それからすぐにオーランドのディズニー・ワールドに行きます。それぞれの職場のオリエンテーションが短いところで2週間、長いところで1カ月。訓練を終えて、4カ月ほどフルキャストで働きます」

もちろん仕事をしたり、パーク内で遊んでいるばかりではない。大学で学ぶ10日間で3単位分の正規の授業を受け、それ以外は月に1回フロリダ州立大学の先生が出張講義をしてくれる。2、3時間の授業が行われるほか、レポートが毎月最低1つ以上課される。

だが、インターンとはいえ、給与も支払われるのだ。最低時給は10ドル。週に30時間がギャランティされ、本人が希望すれば、60時間、70時間働く学生もいる。

「職種が10種類ほどあります。ホテルのコンシェルジュ、フロント、ディズニーショップの販売員、レストランのウエーター、フード販売など多岐にわたります。世界で最も有名といっていいエンターテインメント施設ですから、お客さんをとにかく大切にします。しっかりした接客が求められます」

泣き出す学生もいる、リクルーター面接

それだけに、もちろん誰でも行けるわけではない。相当な英語力も問われる。国際日本学部では、入学すると週12時間の英語の授業が待っている。ネーティブによる完全な英語漬け授業だ。これを頑張って乗り越え、学部内の基準をクリアしたうえで、ディズニー・ワールドのリクルーター面接にパスしないといけない。この面接が厳しく、泣き出す学生もいるという。

しかし、毎年四十数人がこの面接にパスし、本当に夢の国に行っているのだ。実はこの話、受験生の間では知る人ぞ知る話になっており、ディズニー留学について高校時代に知って、国際日本学部を受験したい、と明治大学に憧れる女子高生たちも少なくない。このプログラムを目指して受験を頑張り、さらには英語漬けになる授業も頑張るのだ。

2015年にディズニー留学を果たした学生に話を聞くことができた。国際日本学部4年生の佐藤美咲さん(仮名)だ。やはり高校生のときに、プログラムの存在を知ったという。

「受験生向けに配布されるパンフレットを通じて知りました。インターンシップで海外に行ける、しかもディズニー・ワールドというのは、高校生にとっては夢の世界で、本当にびっくりしました」

入学後、6月に行われたオリエンテーションでは、実際にディズニー留学した経験者からの話が聞けたという。楽しいことばかりではない。厳しさも聞いたと語る。

「周りはみんな外国人、という異文化の中で仕事をしないといけないわけですよね。それが半年続くんだ、と。でも、ディズニーだからきっと楽しいはずだと、もう完全に思い込んでしまっていますから(笑)。11月の英語の試験に向けて、絶対にクリアするんだ、という強いモチベーションがみんなにありました」

佐藤さんは、学部内の海外からの留学生とお互いに語学を教え合うカンバセーションパートナーというシステムも使いながら、見事、英語の基準をクリア。翌年春のリクルーター面接を受けた。この留学には家族も賛成してくれたという。

「おカネを稼ぎながら、というところが、このプログラムの大きな魅力です。私は奨学金を借りながら大学に行っていましたから、それなら大賛成だ、と。留学だけだと300万円はかかりますので、おカネの面でも両親はよかったと言ってくれました」

切り替えができるなら、どんどん遊べ

2年生の夏に出発。半年間のアメリカ生活が始まった。フロリダ州立大学の授業の後、ディズニー・ワールドへ。隣接しているゲーテッドハウジングと呼ばれる24時間セキュリティ付きのアパート群の中に分宿し、これが寮になった。世界中からやってきた学生と一緒に生活し、仕事をするのだ。

佐藤さんは、パーク内でスナックを売る係と、ホテルのレストランでウエートレスをする係、2つを経験した。週7日のうち5日、仕事に出る。

「朝番と夜番などで1日8時間のシフトが組まれていて、寮からシャトルバスに乗って仕事に向かいます。働いている人は、園内のフリーパスがもらえます。仕事が終われば、ほかのディズニーパークにすぐに遊びに行けるので、これがまた楽しみでしたね」

こうして楽しみを持ちながら仕事をする、というのも、アメリカらしさだと感じたらしい。

「切り替えができるなら、どんどん遊べ、と言われました。同僚と遊びに行ったりもよくしていましたし、朝番でしたら夕方以降は時間がありますから、寮に戻って他の留学生たちと一緒にご飯を作ったり、というのも楽しかったですね」

寮にはシステムキッチンがあり、共同のリビングルームもあった。ここで、世界中から来ている留学生たちと一緒にコミュニケーションができたそうだ。

「アジアでは、中国、韓国の学生が多かったです。日本人よりもずっと英語をしゃべれますし、差を感じました。日本人はそもそも少なくて、とても珍しがられました」

接客の仕事では、難しさを感じることもあったという。

「アジア人、日本人の1人として、アメリカ人が求めるホスピタリティに対して何を発揮できるのか、改めて自分自身を問い直すことができたと思っています」

このディズニー留学で得られたものは大きかったと語る。

「積極性という部分が大きく変わったと思います。黙っていると相手には何も伝わらない、というのが海外なんです。私はこう思う、こうしたい、と主張し、時には議論して方向修正していく。そういうことの大切さを強く実感しました」

ディズニーが教えてくれた日本人としてのおもてなし

就職活動の際、面接では必ずディズニー留学の話を聞かれたそうだ。留学で会社選びの軸も変わったと語る。佐藤さんは、いまこそ留学にぜひ行くべきだ、という。

「2020年の東京オリンピックが迫っています。おもてなしという言葉が騒がれていますが、日本人として海外の人を迎え入れなければならないわけですよね。海外からは、とても大きな期待をされています。そこにきちんと応える準備ができているかどうか。精神論的にも勉強としても働くということにおいても、日本人としてのおもてなしを、日本人としてできる準備ができているか」

ディズニーのインターンシップは、その大切さを教えてくれたと語る。

「いまなら東京オリンピックにも間に合います。日本に対する興味津々をひしひしと感じながら、アメリカのおもてなしというものを吸収して日本に帰ってきてくれたら、若い人も日本の大きな力になると思うんです」

明治大学国際日本学部では、ディズニー留学以外にも、2015年度からハワイでのプログラムもスタートさせている。ヒルトン・ワイキキ、アウトリガーリゾーツ、さらには日本航空(カウンターおよび空港業務)、JTBの4社と提携、4カ月ほどのインターンシップを行う。こちらは報酬の出ない行き先もあるという。定員は約20人。

また、来年からはバリ島でのプログラムも始まる予定だ。デンパサールにあるインドネシアの国立ウダヤナ大学と協定を結び、3カ月大学で勉強して、3カ月インターンシップを一流ホテルで行う。こちらも定員は20人を予定。

ディズニー・ワールド、ハワイ、さらにはバリ島でのインターン留学。明治大学は、いまやこんなことをやってくれる大学になっているのだ。だから、女子高生にも大きな人気となっている。