それだけに、開始2分のシーンをはじめ、背後を突いた後のプレーの質、言い換えれば、“最後の質”という部分をもっとシビアに突き詰めていかなければいけない。ただ、言葉でいうのは簡単だが、その“最後の質”の輝きが、超一流選手か否かを分ける大きな違いということではあるのだが……。
 
 最後の質で違いを見せられる選手は、ブラジルではネイマールであったり、ベルギーではルカクやデ・ブルイネといったあたりか。彼らはこの“最後の質”が高い選手だからこそ、当たり前のことだが、それ相応に報酬も高いのである。
 
 この日、ワンチャンスで決勝ゴールを奪ったルカクも同様だ。決勝ゴール以外はほとんど仕事ができていなかったが、日本戦でのゴールで25歳にしてベルギー代表歴代最多スコアラーとなった。1点をもぎ取れる決定力というのは、いつの時代であろうと、どの国においても価値のあるものなのだ。
 
 もっとも、日本にはいま現在、ネイマール、メッシ、クリスチアーノ・ロナウドといった超一流選手はいない。無い物ねだりをしても始まらない。ワールドカップ本番に向けて“タレント”を待つのは建設的ではない。
 
 タレントの質で言えば、現有の攻撃陣を含めても、今回メンバーから外された香川真司、岡崎慎司、そして本田圭佑のほうが上だろう。彼らはいずれ復帰してチームに貢献してくれるだろうが。
 
 今回の欧州遠征で見えたことは、これがワールドカップのグループリーグだったとしたら、日本は2連敗で敗退しているということだ。つまりは、このままだったら日本は間違いなく決勝トーナメントに進出することはできない。
 
 ワールドカップ本番は7か月後に控えているが、チームとして活動できる時間は少ない。日本はゴールを奪えないのであれば、極力失点を減らしていくことだ。現状のオールコートのマンツーマン・ディフェンスのようなやり方は、ハードであるが理にかなっている。
 
 また、流れのなかで違いを見せられないのなら、セットプレーの精度を高めていくことも重要になる。しつこいようだが、中村俊輔、遠藤保仁の後釜がなかなか出てこないのは正直ツラいところだ。せめて左のキッカーだけでも揃える必要はあるだろう。どんな場面でも右のキッカーで対応しているような状況は脱しておきたい。
 
◆プロフィール
藤田俊哉(ふじた・としや)/1971年10月4日生まれ、静岡県出身。清水市商高-筑波大-磐田-ユトレヒト(オランダ)-磐田-名古屋-熊本-千葉。日本代表24試合・3得点。J1通算419試合・100得点。J2通算79試合・6得点。J1では、ミッドフィルダーとして初めて通算100ゴールを叩き出した名アタッカー。2014年からオランダ2部VVVフェンロのコーチとして指導にあたり、16-17シーズンのリーグ優勝と1部復帰に導いた。新シーズンよりイングランドのリーズ・ユナイテッドでスタッフ入り。また、今年7月より藤田俊哉×H.I.S.ブログ『藤田俊哉サロン』がスタート http://www.sports-his.com/fujitai_column/index.html