麺をすすって食べる時の音による「ヌードルハラスメント(=ヌーハラ)」がSNS上で話題になっています。キャプチャー画像がアップされたテレビ番組では、「騒音」「音が気になってイライラする」という外国人観光客のコメントを紹介。これについて、「郷に入っては郷に従えじゃないのか」「ソバってすすって食べることで香りや味を楽しむための料理だよ」「音を立てるのが日本の食文化なら、外国人側がある程度譲歩すべきでは」と日本の“文化”であることを強調する声や、「互いに配慮すればよい」といった意見が上がりました。

 麺類をすすって食べる行為について、マナーのプロの見解はどのようなものでしょうか。英国・オックスフォードでビジネスパートナーと起業し、海外でのビジネスマナーや異文化コミュニケーション、食文化を踏まえた上での各国のテーブルマナーなどにも詳しく、マナー本が国内外で70冊以上(累計100万部超)のマナーコンサルタント・西出ひろ子さんに聞きました。

日本人でも、不快に思う人はいる

Q.マナー的観点から、麺類をすすって食べることについてどのようにお考えですか。

西出さん「海外には、日本のように料理をすすって食べる文化があまりないのです。特に欧米では『ほぼない』と言ってもよいでしょう。しかし、だからと言って麺を食べる時のズルズル音を必ずしもすべての外国人観光客が不快に思うというわけではありませんし、むしろ、自国にはない文化として興味深いと感じる人もいます。逆に、日本人の中にも、ズルズル音を心地よく思わない人もいらっしゃるようです。このように、国を問わず人によって感じ方がさまざまなのは当然のこと。そうした人たちが共に食事をするのが飲食店という空間なのです」

Q.飲食店で他人を前に麺類を食べる場合、どのようなことに注意すべきでしょうか。

西出さん「マナーの基本は相手の立場に立つこと。これは、飲食店でのマナーにおいても重要です。このケースの『相手』とは、料理を作った人だけでなく、同行者やほかのお客さんなど、空間を共にしているすべての人を指します。麺料理を食べる時は、どのような人が店内にいるかなどに配慮し、基本の食べ方のスタイルはあるにせよ、周囲の様子に合わせて食べることもマナーと言えます。食べ方などの所作を知った上で、それに固執することなく、TPPPOに合わせて『一緒に楽しい空間を共にする』という気持ちを持つことがマナーの大前提。心配りの美しさがマナーの美しさであり、それが自然と所作に反映されるものです」

Q.今回のケースから、食事のマナーを総括するとどうなりますか。

西出さん「逆のパターンを考えてみましょう。日本人が海外に行き、日ごろ自分が経験していない食べ方をしている人を見た時、不快に感じたり、驚いたりすることがあるかもしれませんね。飲食店に限ったことではありませんが、ネガティブな感情を抱くことなく、お互いさまの気持ちを忘れずに、どんな場所でも食材や作り手に感謝し、ともに心地よくおいしく食してほしいと思います。それが食事のマナーで最も大切なことです」

(オトナンサー編集部)