ベルギーに0−1と善戦したように見える日本代表だが…

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「残念だ。チームはいい試合をしたと思う。ひとりに4人が抜かれてしまい、もったいない失点をしたが、ブラジル戦よりもいいゲームコントロールができた。良い結果を求めていたので少し残念だが、選手たちにはロッカールームで『大きなライオンを倒すところまでいったぞ』と祝福した。次はもっとよくなると思う」

11月14日、ブルージュで行なわれたベルギー対日本の親善試合はロメル・ルカクのゴールにより1−0でベルギーが勝利。試合後の会見で、敗軍の将ハリルホジッチは開口一番、このように試合を振り返った。

しかし、この言葉を額面通り受け止めるわけにはいかない。確かにスコアだけを見れば、ブラジル戦の1−3から今回の0−1へ進歩したかのように見えるかもしれないが、内容的にこの2試合に大差はなく、とても祝福できるような試合にはならなかったというのが実際のところだった。

しかも、ベルギーは主力のFWエデン・アザール、GKティボ・クルトワ、MFマルアン・フェライニ、DFバンサン・コンパニら、チームの軸になる選手が不在。彼らがピッチにいたら点差はもっと開いていた可能性もある。

指揮官がどういう意図で「大きなライオンを倒すところまでいったぞ」と選手たちを激励したのかはわからないが、現場で見る限り、日本がベルギーに勝てそうな雰囲気はまるでなかった。おそらく試合を観た人なら、この試合の日本に勝利の可能性を感じられた人は少なかったのではないだろうか。

ベルギーの集中力、インテンシティが欠如していたことで日本は最少失点での敗戦で済んだが、予想通りとはいえ、やはり両チームの実力には大きな開きがあったと見るのが妥当だ。

実際、開始1分に相手のクリアミスから浅野拓磨がチャンスを迎えたシーン以外は序盤からベルギーが再三チャンスメイク。ラストパスの精度とシュートのところが雑だったために日本は救われたが、いつ失点をしてもおかしくないという時間帯は長かった。

「試合全体を通してブロックの高い位置、低い位置のオーガナイズができていた。ただ、パスのところで簡単に失ってしまったところが気になった」とは、試合後のハリルホジッチのコメントだが、それこそが守備が機能していなかった証拠だろう。もし狙い通り、良い形でボールを奪えていれば、奪った後に大きくクリアしたり、苦し紛れのパスを出して再び相手に奪われピンチを迎えたりするシーンは激減するはず。守備組織の完成度はブラジル戦同様に低かった。

とりわけ井手口陽介と長沢和輝のふたりが中盤でフィルター役になれなかった点が苦しかった。試合後の会見で評価を聞かれた時、ハリルホジッチが「国内組全員に言えることだが、まだリズムについていけていない。(山口)蛍だけがフィジカル的な能力が高いのかもしれない。こういった試合のリズムに十分ついていけるのは彼だけで、他の選手はまだまだ」と言ったのは、そういうことも含まれているはずだ。

さらに言えば、原口元気とこの日スタメンに入った浅野拓磨が攻撃面で良いプレーを見せられなかった理由も、守備組織が成り立っていないことに潜んでいる。中盤3人と連動しながら前線でコースを限定するという守備ではなく、ほとんどが最終ライン付近まで走って戻る守備に追われたため、奪ったあとに良い場所でボールをもらえない。これも苦し紛れのパスが増えてしまった原因であり、大迫が孤立してしまった要因でもある。

問題点を挙げればきりがないが、少なくともハリルホジッチが言うほど良いパフォーマンスができたわけではないことは明白だった。ブラジル戦同様、指揮官のコメントには“印象操作”の疑いがあると見るべきだろう。

そもそもこのような問題を引き起こした根本的な原因は、ハリルホジッチの采配にある。ブラジル戦で4−2−3−1を採用して失敗したかと思えば、このベルギー戦では4−3−3を採用。もちろん相手を分析した上での選択なのだろうが、システムが変われば守り方と攻め方も変化する。しかし現在の選手たちがその変化に順応できていないことは、これまで何度も証明されていたはずだ。

ハリルホジッチは「選手は毎試合、攻撃の役割も守備の役割も把握して(試合に)入ってくれている。個人の説明、組織の説明をして、自分の役割を完璧に把握して試合に臨んでくれた」と説明するが、頭で理解したとしてもそれをピッチで実行できていないという現象はこの試合に始まったことではない。

こうなると、もはや試合ごとに戦略、戦術を変えて臨むという手法は、本番までに完成させるのは困難と見るのが妥当だろう。

采配でいえば、この2試合でも効果的な選手交代はついに見られなかった。効果的どころか、疑問が残る選手交代もあった。例えば、ブラジル戦でハリルホジッチが切った5枚目のカードだ。1−3とリードを許している中、試合終了間際の86分に井手口を下げて遠藤航を投入。たとえ疲労が見えたとしても、リスクをかけて攻めるしかないという状況で守備的な駒である遠藤を使う意味はあったのだろうか。

ベルギー戦でも同じような場面があった。86分に負傷した酒井宏樹に代わって投入したのは同じポジションの酒井高徳。タイスコアもしくはリードしている場面なら理解できるが、捨て身で攻めなければいけない場面なのだから、DFを1枚減らしてシステムを変更し、中盤もしくは前線に攻撃の駒を投入するという工夫があってもよかったのではないだろうか。何もしないまま、ただ指をくわえて1−0の敗戦をベンチから見守る指揮官に、W杯本番でジャイアントキリングを起こせる可能性は低い。

会見の冒頭で「次はもっとよくなると思う」と語ったハリルホジッチは、本番までの残された時間で何をするのかと問われると「今日から6月まではすべて合宿のようなもの。それを自分たちのクラブでやって、個人のパフォーマンスを上げてほしい。代表候補には毎日コンタクトを続けていきたい」と答えている。

つまりそれは自らの采配ではなく、選手の成長を待つ以外に方法を持ち合わせていないと受け止められる発言だった。

そう簡単に選手が劇的な成長を遂げることは難しいのは明白なのだから、もはや違う指揮官に任せたほうが得策だ。新監督の招聘で停滞するチームに刺激を与え、個の力を組織力でカバーする戦術で臨んだほうが、少なくとも日本サッカーの将来に何らかの財産を残せると思うのだ。

(取材・文/中山 淳 撮影/藤田真郷)