フランスの国際度量衡局で厳重に保管されている国際キログラム原器

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重さを表す単位「キログラム」。その定義が約130年ぶりに変わる!?



去る10月、来秋に開催される「国際度量衡(どりょうこう)総会」において、キログラムの定義改定を審議することが決定した。同会での決議を経て、2019年5月20日からは“新しい定義”が使われることになりそうだという。

そもそも、「1kg」はどのように定められてきたのか? 従来その国際基準となっていたのが、1879年にフランスで制作された「国際キログラム原器」という白金(はっきん)イリジウム製の分銅。しかしこの原器、なにぶん金属なので、汚れなどによる質量変動が懸念される。そこで40年ほど前から、より高精度かつ安定した数値を保つために、モノではない基礎物理定数を使う研究が続けられてきたのだ。

そしてついに、この研究が始まった当初から関わり続けてきた日本を含む5ヵ国が、このほど「プランク定数」に基づく定義を提唱した。専門的な話は省くが、その実現に必要不可欠だったのが、原子の配列が安定した1kgの「シリコン単結晶球体」だ。新定義を決定づけた測定ではドイツ製のものが使われたが、日本にも長年、シリコン単結晶球体をつくり続け、世界各地の研究機関に納めてきた工場があるという。

下町ロケットならぬ「下町キログラム」なその町工場は、神奈川県横浜市根岸の川沿いの住宅地にあった。岡本光学加工所の3代目、岡本隆幸社長はうれしそうにこう話す。

「数十年間、日本が絶えず寄与し続けてきた研究がついに実を結びます。もともとウチは光学レンズのカーブ測定の原器として球体を作っていたのですが、次第にキログラム定義の新たな研究に使われるようになりました。国際単位系を構成する単位のなかで、いまだに物で定義が成立しているのはキログラムだけ。その改定に携わることができ、とても光栄です」

このシリコン単結晶球体、ある程度丸くするまでは専用の機械でカットするものの、さらに研磨し、寸分の狂いもない球体にするのには、職人の手の感覚だけが頼りだという。「代々続く“匠”(たくみ)の精神ですよ(笑)」と岡本社長も誇らしげだ。

気になる改定の影響だが、新定義の研究に尽力した産業技術総合研究所つくばセンターの倉本直樹氏によれば「製薬開発や環境計測などの超高精度測定を実現できるようになる」という。何かスゴいことが起きそう!

(写真/時事通信社)