日本代表「W杯メンバー」の選考基準は? コメントから読み解く“ハリル監督の思考”

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ハリルは「違いを生み出せる選手」を熱望 「点を取るというところでまだ足りない」

 バヒド・ハリルホジッチ監督率いる日本代表は、10日の国際親善試合ブラジル戦(1-3)、14日の同ベルギー戦(0-1)と連敗を喫して11月の欧州遠征を終えた。

 来年6月のロシア・ワールドカップ(W杯)に向けたチーム作りを着々と進めるなか、本大会登録の23枠争いも佳境を迎えようとしている。そこで、最近のハリルホジッチ監督のコメントを基に選考基準のベースを探っていく。

 指揮官は以前、「来年3月に向けて最終的なチームをそのへんで決めたい。私の中には13人から15人、しっかりプレーしてほしい選手がいる」と明かしており、すでに大枠が固まっていることを明らかにした。その一方で、11月の欧州遠征で「このチームにものすごく可能性を感じた」と語っており、一定の手応えをつかんだことが窺える。

 もっとも指揮官はベルギー戦後、「個人で違いを見せつける選手が足りないということを時々感じることがある。ブラジルにも、ベルギーにもいた。違いを生み出せる選手、特に点を取るというところで、我々にはまだ足りない」と力を込め、違いを生み出せる存在を熱望。ただ、短期間でそうした選手の発掘は難しく、ハリルホジッチ監督もそれは重々承知の上だ。だからこそ、選手にコンディションの向上を求めた。

「次は(18年)3月に合宿があるが、まずはフィジカルを上げて合宿に入ってほしい」とフィジカル面を強調した。かつてJクラブに挨拶へ行き、コンディション調整の協力を求めていたことを明かしており、個々の状態に細心の注意を払っている。当然ながら現代表の主力クラスも、コンディション次第では本大会メンバーから落選となるだろう。

「守備面、デュエルは伸ばさなければいけない」

 指揮官がチーム作りの前提としているのがデュエル(1対1)であり、走力だ。「いずれにしても走らなければならない。プレッシングというのは組織プレーであり、しっかりとトレーニングしなければならない。ゲームの読み、戦術、そして献身性といったものがなければできないものだ」とコメント。さらにブラジルを例にとって、守備の重要性を次のように説いている。

「ブラジルも昔、FWは攻撃だけで良かったが根本的に変わってきた。ネイマール、ジェズスでさえ、守備に戻ってプレッシャーをかける。それが現代フットボール。日本はそれをしなくてはいけない。特に、中盤でボールを奪う能力は伸ばさないといけない。できるだけ良いソリューション(解決法)を私も探していく」

 守備陣だけでなく、中盤の選手にも1対1の強さとアグレッシブさを求めている。欧州遠征で招集した攻撃的MF森岡亮太に関しても、攻撃の能力を高く評価した一方、「守備面、デュエルは伸ばさなければいけない」と注文を出したほどだ。

 ポジションにかかわらず、指揮官が求める守備の基準を満たせなければ、本大会メンバー入りの可能性は低くなる。もっとも、守備力不足を補って余りあるオフェンス力を見せつければ、また話は別だろう。指揮官もそこは天秤にかけて判断するはずだ。

本田、岡崎、香川も本来の姿を取り戻せば…

 11月の欧州遠征メンバーから落選したFW本田圭佑、FW岡崎慎司、MF香川真司らについて、ハリルホジッチ監督は「彼ら本来のパフォーマンスを見せるべきだと。他の選手より良いパフォーマンスを見せてくれれば、ここにいるはず」と言及。“本来の姿”を取り戻せば代表復帰もあることを匂わせている。

「国内組全員に言えるが、リズムに付いていけていない。もしかしたら(山口)蛍だけがフィジカル的な能力が高い。こういった試合のリズムに十分付いていけるのは彼だけだ。他の選手はまだまだ」

 そう指摘したハリルホジッチ監督にとって、12月のE-1選手権は国内組を見極める格好の“オーディション場”となる。指揮官のお眼鏡にかなう選手は現れるだろうか。

【了】

フットボールゾーンウェブ編集部●文 text by Football ZONE web

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images