ベルギー代表に敗れた日本代表 photo/Getty Images

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やはり日本代表には香川真司、岡崎慎司、本田圭佑が必要なのだろうか。2018ロシアワールドカップへ向けて貴重なテストとなったブラジル代表、ベルギー代表との親善試合はモヤモヤが残るものとなった。その原因は各選手たちの出来ることと出来ないことにある。

日本代表を指揮するヴァイッド・ハリルホジッチ監督はブラジル、ベルギーの2試合とも中盤で山口蛍、井手口陽介を先発起用し、守備面でハードワークすることを1つのテーマに戦った。これはワールドカップ出場を決めた8月のオーストラリア代表戦と同じやり方であり、ブラジル戦ではオーストラリア戦同様に長谷部誠も先発している。ハリルホジッチ監督は世界の強豪相手に守備からゲームを作っていこうとし、0-1で敗れた14日のベルギー戦ではそのやり方が機能している部分もあった。しかし、攻撃面は決して満足できる内容ではなかった。山口と井手口の2人は90分間ハードワークできるものの、展開力に欠ける。パスに特別なアイディアはなく、日本の攻撃は相手にとって読みやすいものばかりだった。アジアではボールを落ち着いて保持することができても、世界の強豪とやり合えば2人の足下の技術では不安だ。

ハリルホジッチ監督も試合途中から森岡亮太を起用しており、ベルギー守備陣を崩すために特別なアイディアをもたらしてほしいと期待したのだろう。しかし、森岡を投入すると守備の強度が大きく落ちてしまう。ベルギー戦では山口、井手口に加えて長澤和輝を中盤で先発させ、この3人は試合開始からよく走っていた。中でも初召集ながら安定したパフォーマンスを見せた長澤は合格点を与えられるべきだろう。しかし森岡はハードワークを得意とする選手ではなく、守備の対応にも難がある。ベルギーの先制点のシーンでは森岡の寄せが甘く、それまではやられていなかったスペースへのドリブル突破を許してしまった。ブラジル戦でも何度か見せたように森岡にはアイディア、ワンタッチの技術など魅力的な部分はあるものの、これだけ守備でチームに貢献できないのは大きな問題だ。

ブラジル戦同様に井手口、長谷部、山口のトリオで臨めば展開力に不安があり、森岡を入れると守備面でトラブルが起こる。この各選手の出来ることと出来ないことの差があまりに大きく、これでは交代カードを切りにくい。これは今回メンバーから外れた香川真司、負傷離脱中の柴崎岳にも言えることだ。仮に香川が出場していれば、ベルギー相手にチャンスを演出できたかもしれない。しかしハリルホジッチ監督が今と同じ守備を優先した戦いを選ぶなら、相手に押し込まれた際に香川が守備面でチームに貢献できるかは微妙なところだ。山口や井手口のように90分間ハードワークするのは難しく、守備面のデュエルを得意としているわけでもない。森岡投入時と同じく守備の強度が落ちるのは間違いない 。

もう1つ気になったのは右のウイングだ。右のウイングもインサイドハーフと同じく出来ることと出来ないことの差がはっきりしており、ベルギー戦に先発した浅野拓磨は走ることはできても足下の技術やパス精度に大きな課題を残す。途中出場の久保裕也は浅野よりテクニックがあるが、そもそもサイドを上下動する役割が合っているのか疑問もある。ベルギー戦でも森岡と同じく失点に絡んでしまっており、ナセル・シャドリにあっさりとカットインを許し、ついていくことができなかった。攻撃面でもここ最近は結果を出せない試合が続いており、右のウイングを誰に任せるのかは再考する必要があるだろう。その際パチューカで結果を出している本田、レスター・シティで好調を維持している岡崎も候補者に入ってくるはずだ。岡崎はサイドの選手ではないが、ハードワークは得意技だ。センターフォワードには空きがなくとも、右サイドで守備的な役割を務めることはできる。他にもマインツで活躍する武藤嘉紀を右サイドで試してみてもいい。

本田や岡崎が全てを解決してくれるわけではないが、香川を含めハリルホジッチ監督は本番へ向けてもう1度ベストな布陣を再考すべきだろう。今回の欧州遠征では守備はできても攻撃に移行できない、攻撃はできても守備に穴を作ってしまうといったようにバランスの悪さが目立ち、本番までに解決策を見出さなければならない。どこかで妥協すべきポイントは必要だが、出来ないことの部分をどうカバーしていくのかは本番へ向けてハリルホジッチ監督の宿題となりそうだ。