ナンプラーにニョクマム、しょっつる・・・すべて「魚醤」だけど違いってあるの?

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Rettyグルメニュースをお読みの皆様、こんにちは。「むむ先生」こと、杉村です。

ライター紹介

杉村啓
日本酒ライター、料理漫画研究家、醤油研究家。 日本酒の基本から歴史・造り方までを熱く語った『白熱日本酒教室』やタモリ倶楽部でも紹介された醤油の奥深さを書いた『醤油手帖』など、食に関する書籍を多数執筆。「むむ先生」として食のコラムや紹介を各メディアで担当。8月末には、グルメ漫画の半世紀を辿る新著『グルメ漫画50年史』を上梓。 ブログ

「むむ先生の"食"超解説シリーズ」の9回目は、「ナンプラーにニョクマムにしょっつる・・・全て魚醤だけど違いはあるの?」です。

もうすっかりおなじみの調味料となったタイのナンプラー(ナムプラー)。生春巻きなどタイ料理に欠かせない調味料ですよね。

そして、ベトナムのニョクマム(ヌクマム)に、日本のしょっつる。これらは全て「魚醤(ぎょしょう)」と呼ばれるものです。違いはどこにあるのか、なかなか意識することはあまりないかもしれません。

違いを理解するために、そもそも魚醤とはいったいどういうものなのか…という話からしていくことにします。

魚醤ってそもそも何?

魚醤(ぎょしょう)は、「醤(ひしお)」の種類のうち、原材料を魚にしたものです。

この「醤」は、もともとは何らかの食材を塩漬けにしたもののことを言います。何を原材料にしているかによって、呼び方が変わるのですね。

お肉を塩漬けにしたら「肉醤(ししびしお)」
魚を塩漬けにしたら「魚醤(うおびしお)」
果物や野菜を塩漬けにしたら「草醤(くさびしお)」
穀物を塩漬けにしたら「穀醤(こくびしお)」

醤油は、大豆や小麦といった穀物から造られます。そのため、「穀醤」の一種と言えるのです。味噌も「穀醤」ですね。同様に、魚醤(ぎょしょう)は魚から造られるので「魚醤(うおびしお)」の一種になるのです。漢字が同じなのでややこしいんですが、とりあえず魚を使っていると考えてください。

今は、単に塩漬けにするだけではなく、麹などを使って発酵させた調味料のことを「醤」と言ったりもします。豆板醤や甜麺醤といった中国の調味料や、コチュジャンなどの韓国の調味料も、みんな大きな括りでいうと「醤」と言えるのです。

魚醤はどうやって造られるの?

魚は、当たり前ですが、固体であり、液体ではありません。ここからどうやって液体の魚醤になっていくのでしょうか。

生き物の内臓には、酵素や微生物がいて、食べた肉などを分解します。生きている間はこれらの活動が制御できているので、自分で自分を分解することはありません。

でも、死んでしまうと防ぐ効果がなくなり、どんどん内側から分解されるのです。これを「自己消化」と言います。

魚を塩漬けにして自己消化が起きると、どんどん身がやわらかくなり、旨味成分が増したり、栄養素が増えたりもします。そうしてできるのが「塩辛」です。イカの塩辛は、イカを塩漬けにして、自己消化を起こしてやわらかくなり、旨味を増やしたものなのですね。

その塩辛の状態からさらに自己消化を続けていくとどうなるのか・・・。どんどん分解が進み、液状になります。この液体が魚醤なのです。

もともと、塩漬けは保存食として世界中で行われていました。ついうっかり魚の塩漬けを保存しすぎたら、やわらかくなって塩辛になり、さらにうっかり忘れていたら魚醤になったということなのでしょう。したがって、魚醤は世界中にあったりもします。

古代ローマでは「ガルム」という魚醤がありました。もちろんタイのナンプラーや、ベトナムのニョクマムも魚醤です。

それどころか、実は昔は「ケチャップ」も魚醤のことを指していたりもします。いまはトマトケチャップのことを指しますが、もともとは中国の魚醤の一種のことをケチャップと言っていたのですね。

ナンプラーとニョクマムとしょっつるの違いは?

では、ナンプラーとニョクマムとしょっつるの違いはどこにあるのでしょうか。

左がナンプラー、右がニョクマム

ナンプラーとニョクマムは実はあまりありません。両方共、主にカタクチイワシを使って造られた魚醤です。材料や製法に大きな差はないのですね。味わいは、ナンプラーの方が若干塩味がきつい傾向があるとされていますが、こちらもなかなか区別することは難しいです。

読みにくいが確かに同じような内容

しょっつるは、秋田の名産です。使われている魚は、ハタハタです。ハタハタで造った魚醤は、イワシ系で造った魚醤に比べると若干甘味が少ないという特徴があります。

ハードルが高いと思っていたけど何にでも使えそう!

というわけで、カタクチイワシを使っている魚醤であるナンプラーやニョクマムは、あまり大きな違いはありません。しょっつるは、ハタハタ100%のものだと若干甘味が少ない傾向があります。

この点をちょっと念頭に置いておくと、使いやすくなるかもしれません。

魚醤はどうやって使ったらいいの?

かといって、魚醤をどうやって使ったらいいか悩んでいる人も多いと思います。魚醤は魚の旨味が凝縮していて、かなり塩分の強い、癖の強い調味料ではあります。

生臭いというわけではないんですが、魚の臭い、魚醤独特の香りがするのです。そこが苦手という人も多いでしょう。

一番わかりやすい使い方は、隠し味です。醤油の代わりに使うのではなく、少しの量を加えることで、料理にアクセントを加えることができるのです。隠し味は料理だけではありません。

たとえば、普段使う醤油にほんの少量たらしてみましょう。醤油のもつ消臭効果によって、魚醤の香りが弱まり、魚醤の旨味をしっかりと味わうことができます。これでお刺身を食べると、普段よりもちょっと味わい深さを感じられます。

この香りはまた、加熱することで弱まったりもします。焼くと、磯の香りと香ばしさが際立つのも魚醤ならではでしょう。

香りがそんなに気にならない人は、塩の代わりに使うという用法も試してみてください。たとえば、秋田県の諸井醸造のハタハタ100%のしょっつるは、ラベルに「大さじ一杯(15ml)を、食塩3.5gに換算して使ってください」と記載されています。塩の代わりに魚醤を加えることで、旨味がさらに膨らむ料理になるのです。

ちなみに「しょっつる」は、語源が「塩魚汁」がなまったもの…という説もあるぐらい、塩辛いものだったりもします。塩の代わりにというのは、結構昔から使われていたりするのですね。

初心者向けのオススメ魚醤

それでもやっぱり魚醤が苦手という人は、最新技術で造られた魚醤を味わってみましょう。

先ほど、魚醤は自己消化によって液状になって完成するという話をしました。でもこれが、独特の香りの元凶でもあります。

ということは、自己消化ではない方法で魚の身を発酵で分解してしまえば、あの魚醤独特の香りが弱まるのではないでしょうか。弱まるんです!これが見事に。

具体的には、麹を使います。麹を使って発酵させることで、長く時間がかかる自己消化よりも早く発酵によって分解し、魚醤にしてしまう技術が生まれました。そのおかげで、最近は今まで魚醤にしていなかった魚を用いた、いわば新世代の魚醤が次々と誕生してきているのです。

これらの魚醤は、あの独特の香りがあまりしません。それどころか、麹由来のちょっと甘めの香りすらします。

見分け方は、ラベルにあります。原材料に「麹」と書かれているものを選びましょう。まずはその魚醤であれこれ料理などに使ってみて、大丈夫そうだったらだんだんとナンプラーやニョクマム、しょっつるにも手を出すと、料理の幅が広がっていくと思います。

【むむ先生のイチオシ調味料〜魚醤編〜】

いきなり「麹を使った魚醤がオススメ」と言われても、何を買ったらいいかわからない。そう思う人が多いんじゃないかと思います。そこでオススメなのは、佐藤水産の「鮭醤油」です。

名前の通り、鮭を発酵させて造った魚醤です。原材料名に「麹」が入っているように、あの魚醤独特の香りはほとんどしません。それどころか、麹の香りと、鮭の香りがするのです。

オススメの食べ方は、焼きおにぎり。鮭醤油を大さじ二杯、みりん小さじ一杯を合わせてタレを作り、おにぎりに塗って焼きましょう。絶品ですよ!

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鮭醤油は通販だけでなく、佐藤水産の経営するサーモンファクトリーなどでも購入することができます。

■グルメ漫画の歴史をまとめた本『グルメ漫画50年史』を出しました

50年にわたるグルメ漫画の歴史を、10年ごとに区切り、当時の食文化からどういう影響を受けてきたのか、そして食文化にどういう影響を与えてきたのかを記しました。