「第2の創業」に乗り出す理由とは?(編集部撮影)

創業から丸18年を迎えたマネックス証券。10月27日、会長の職にあった創業者の松本大氏がマネックス証券の社長に復帰することを発表した。
合わせて「第2の創業」を掲げ、長文のミッションステートメントを公表。昨今の金融業界を取り巻く劇的な環境変化への対応を目指していく。その狙いについて、松本CEOに話を聞いた。

仮想通貨は市場規模が劇的に拡大した

――「第2の創業」を宣言したが、何がきっかけなのか。

最近の仮想通貨のマーケットの成長が、今までにないものになっていることだ。仮想通貨全体の時価総額は、今年1年間で10倍になった。今は24兆円程度だが、時間の問題で時価総額100兆円も超えてくる。規模が大きくなってくれば、これから数年の間にトレーディングの対象としても重要になってくる。そうすると、株と債券の関係もそうだが、当然他の資本市場、マーケット全体にも影響するようになる。

また、今後は決済手段としても存在感を増してくる。そうすると、ウォレットのあり方も変わってきて、銀行の概念も変わる。うちはトレーディングのプラットフォームだけではなくて、おカネの管理といった銀行的なサービスもやっている。決済の形が変わるこのタイミングで、「眺めているだけ」というわけにはいかないと判断した。

――これまでも、ビットコインなどの仮想通貨には関心を持っていたと思うが。

当社は仮想通貨については古くからやっていて、3年前くらいに業務としてビットコインを買っていたし、小規模だが会社でマイニングもしていた。2年前くらいに、キャンペーンでビットコインをユーザーに配ったこともある。

私個人も2年半前からビットコインを持っているし、まだビットコインが渋谷のごく一部にしか生息していなかった頃から、ビットコイン投資家のロジャー・バー氏やビットコインコアの開発者であるジェレミー・ルービン氏とも会って話をしてきた。

個人的には興味があって、ずっと観察していたが、本体で入っていくことについてはどうなのか……と思っていた。ところが、仮想通貨はこの半年で劇的に環境が変わっている。私は金融の人間なので、マーケットのサイズが小さいものには関心があまりない。ただ単に「価格が上がっているからすごい」という話は金融的には意味がなくて、流動性が伴っていて初めて意味がある。

――マネックスグループと傘下の証券の社長を兼任し、全体に責任を持つ体制に変わる。

今年で創業19年目に入って、うちも老舗になった。組織も大きくなっているし、スピード感が遅くなっている面もある。

変えたほうがいいもの、なくしたほうがいいものがあっても、開始した経緯を知らない社員は「何か意味があって残っているのではないか」と考えてしまいがち。それに対して、僕自身は創業者だからすべてを知っている。創業者が号令をかけて、変えるべきものは変える、やめるべきものはやめる、という判断をしたほうがいい。

そうすることによって、マネックスを新しい環境に適合できる組織にしていきたい。

改革は1年でやり切る

――期間限定の復帰となるのか。

1999年の「第1の創業」のときにはすごい速さで展開したが、あのときと同じくらいでないといけない。より速く、より深く、より広く進めていくと言っているのに、「3年かかります」というわけにはいかない。長く掛かったとしても1年くらいですべての変化を終わらせて、結果を出す。そのくらいの決意だ。

また、コーポレートガバナンスの考え方からは、継続的な組織を作ることも重要なテーマ。極論すれば自分がいなくても動ける会社にすることが必要だ。経営者が今の体制じゃないとどうにもならない、誰にも任せられない、という意識になると某大手電気メーカーのようなことも起きてしまう。いつでも他の人ができる、ということがガバナンス上大切だ。

――ミッションステートメントの中では、世界中のあらゆる金融商品取引について、安全かつ低コストにすることを、ブロックチェーン技術を活用して実現していきたいとしている。具体的には?

年金記録がいい例だが、記録や郵送でコストかけすぎているものは非常に多い。ブロックチェーンを用いれば、国民年金台帳の維持コストは今の1万分の1くらいになるはずだし、リスクも減る。株式や債券、いろいろなものをブロックチェーンで置き換えることが可能で、今後の金融業界を大きく変えていくことは間違いない。

しかし、いざ実現するとなると簡単ではないし、1社でやるような話ではない。

今後、世界でコンソーシアムを組んで、ブロックチェーンについても最終的には1本化していくことになると思う。われわれは資本市場というグローバルの舞台で戦っているのだから、「日本だけのルール」なんてありえない。インターネットも「TCP/IP」という1つのプロトコルになったから、これだけ大きな社会インフラになった。電話だってそうだし、家庭用ビデオだってそう。規格とはそういうものだ。1つに収斂されていく。

自分たちが「主語」になる必要がある

だからこそ、世界の流れに日本からも入っていき、主体的に関わって発言力を持つ必要がある。できたものをわれわれが取り込むのだけということはしてはならない。もちろんワン・オブ・ゼムかもしれないけど、自分たちが「主語」になることが大切だ。


松本 大(まつもと おおき)/1963年埼玉県生まれ。東京大学法学部卒業後、ソロモン・ブラザーズに入社、ゴールドマン・サックスに転職後、最年少で パートナー(共同経営者)になる。1999年マネックス証券を設立。現在、マネックスグループの代表執行役社長CEOとマネックス証券社長を務める(編集部撮影)

――ミッションステートメントには「独自のブロックチェーンの開発とそのICO(イニシャル・コイン・オファリング)を視野に入れたい」とも。

ここでいうICOとは、資金調達の手段という意味ではない。中央機関を介さずに契約内容を自動執行できる「イーサリウム」が実現したような、エコシステムを作るという話だ。きちんとICOすることで世界のプレーヤーがコインを持ち、マイニングもするようになる。最終的にはパブリックブロックチェーンにすることを目指したい。

――こうしたプランを実行するために一番大事なものは人材か。

いや、一番大切なのはパッション(情熱)だ。人材という点では、確かにブロックチェーンのエンジニアが足りないといわれている。だからこそ争奪戦になる。しかし、当たり前だが、生まれながらのブロックチェーンエンジニアなんていない。人材は育つもの。パッションを示すことで、マネックスを、人材が集まって、育つような場所にしていきたい。