香りを活用した文化財クローンの部屋で(左から)小川取締役、宮廻教授、安間シニアパヒューマー

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 美術館のエレベーターを降りてお香の香りに導かれて進むと、法隆寺の国宝「釈迦三尊像」の“文化財クローン”が鑑賞者をお出迎え。3D計測・プリンター技術での再現に加え、消失した頭部の「螺髪(らほつ)」や背後で飛翔する天人「飛天」も復元され、香りとともに本物以上の空間を堪能できる―。

 東京芸術大学が9―10月に開催したシルクロード特別企画展「素心伝心」の作品群は、同大の特許で制作された超高精細復元品だ。これに小川香料(東京都中央区、小川裕社長、03・3270・1720)との連携で香りの演出を加えた。

 同大大学院美術研究科の宮廻(みやさこ)正明教授は「館内5カ所にイメージに合った香りを置き、移動のたびに違う印象を与えるように設計した」と説明する。実は「万人が好む香りは難しく、こういった場での活用に踏み込めずにいた」と同社の小川雄司取締役は斬新さを強調する。

 香料業界では複数の香りを混ぜて扱う常識も同大が覆した。「香りを点で置く、という提案が最初は分からなかった」と同社の安間裕子シニアパヒューマーは振り返る。しかし絵画作品にも触れて、点描画と同じだと理解できたという。

 両者は文部科学省の支援事業「センター・オブ・イノベーション」(COI)プログラムで、五感を生かす同大の産学連携の企画でつながった。香料会社数社の中から、宮廻教授が直感的に同社を選択。国内外での浮世絵の展覧会でも手を組むほどのパートナーシップが育っている。