上智大学国際協力人材育成センター公式フェイスブックページより

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 キリスト教系の大学は国際布教に加え、多様性への理解や隣人愛に特徴がある。これらを背景に上智大学の国際ネットワークは、国連など国際機関からアフリカなどの貧困国、NPO法人や企業と幅広い。「以前は普通の機械工学の研究者だった」という曄道(てるみち)佳明学長に、自ら染まった全学の社会貢献意識とこれからの大学のあり方を聞いた。

 ―大学教育に独特の危機感をお持ちです。
 「グローバル化は世界の情報共有をもたらしたが、米国など各国の政権交代のように見通しがつかない面がある。さらに人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)と相まり、社会は劇的に変わりつつある。これらに対応する柔軟性の育成を、従来の大学教育はやっていなかった。信念を持ち社会に相対しつつ、柔軟に変わる学生を育てたい」

 ―具体的には。
 「学問の知識や方法論の教育は変わらない。専門性はその人の主張の信頼感につながる。一方で社会そのものが変わりつつある中、思考プロセスを身に付けさせたい。複合的なものへの柔軟な対応力を全学で育む」

 ―国際インターンシップ(就業体験)の事例を教えてください。
 「スウェーデンのボルボ・グループとの産学連携教育で、グループのUDトラックスでのインターンシップがある。学生はフランス人上司の下でインド人と設計図を広げて議論している。また国連とNPO法人はこれまでの対立構造から連携にかじを切りつつあり、学生にはその共同プロジェクトに参加することで今を感じ取ってもらう」

 ―国連の仕事に憧れて上智大を選ぶ高校生も多いとか。
 「国際機関の概論の科目や国際公務員の養成講座の一方で、西アフリカのベナン共和国にも学生を派遣している。日系企業の看板もビルも見当たらず、貧困やインフラ問題に直面する現場に入り、地球の未来について議論する。多様なプレーヤーがいる立体構造を知ってもらいたい」

 ―理工学部は10年ほど前に縦割り解消で3学科に再編しました。 「複合技術のロボットのように、理工の基礎知識の上に 社会の新たな価値を創造するためだ。英語で学位取得できる環境系のコースも整備した。国際協力機構(JICA)などからは『理工系学生をもっと寄こして』と要望されている」

【略歴】てるみち・よしあき 94年(平6)慶大院博士課程単位取得満期退学、同年東大生産技術研究所助手。98年上智大理工学部助教授、04年教授。17年学長。博士(工学)。広島県出身、55歳。