三陽商会は中価格帯とともに高級ラインを強化、価格の幅を持たせる

写真拡大

 百貨店の主力アイテムである衣料品の売り上げが、緩やかに回復している。日本百貨店協会がまとめた9月の衣料品売上高は、前年同月比2・4%増で23カ月ぶりのプラスだった。10月は台風が響いたが、「新しい芽は見えつつある」(大丸松坂屋百貨店)、「紳士服は前年同月を超え、婦人服の下げ幅も縮まった」(高島屋)。気温低下が秋冬物販売に追い風となっているのが大きいが、メーカーや百貨店も着々と手を打っている。

ユニクロにはなれない
 「我々は安穏とぬるま湯に漬かっている『ゆでガエル』ではない。屈伸運動したりしながら、鍋から飛び出す準備をしている」。10月、オンワードホールディングス(HD)の決算発表会で、保元道宣社長は強い口調でこう述べた。

 同社の中核子会社で、「23区」などのブランドを運営するオンワード樫山(東京都中央区)は売上高の7割近くが百貨店販売だ。食に関する通販サイトを16年に始めるなど、販路拡大に取り組む一方で、百貨店事業のテコ入れも図る。提案に力を入れる大型の売り場を増やしているほか、タブレットを用いたECサイト商品の提案システムも導入した。

 三陽商会は2018年春夏シーズンに向け、富裕層に向けたプレミアムラインを強化する。荒居徹取締役は「一時は『全て価格を下げた方がいい』という空気感があったが、価格の幅を持たせる」と説明する。「あがいてもユニクロにはなれない。ローコストを目指すために複数ブランドで共通の素材を使ったりすれば、個性がなくなる」と力を込める。

 百貨店において衣料品は売上高の3割を占める。利益率が高いことも手伝い、百貨店はバブル期に売り場を広げた。その反省もあり、売り場を縮小してカフェに改装したり、テナントを誘致したりという動きが相次ぐ。

年齢軸で分ける時代ではない
 そうした中、エイチ・ツー・オー(H2O)リテイリング傘下の阪急阪神百貨店は16年、旗艦店である阪急うめだ本店(大阪市北区)の婦人ファッション売り場を刷新した。「母と娘が同じ服を着ている時代に、(ミセス、ヤングといった)年齢軸で売り場を分けるのは合わない」(森忠嗣H2Oリテイリング取締役常務執行役員)と、雰囲気の似たブランドごとに再配置。17年4―9月の同店の婦人服の売上高は前年同期比6%増と、好調が続いている。

 16年の百貨店の衣料品売上高は、ピークだった91年の半分以下だった。ネット販売の躍進や低価格品の普及で、百貨店主体のアパレル各社はブランド削減や店舗閉鎖を余儀なくされている。縮小の先を見据え、試行錯誤が続く。
(文=江上佑美子)