指揮官好みのプレースタイルを持つ長澤は、長谷部の状況次第で代役に最も近い存在か。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 すでに最終予選終盤から見えていたことだが、ロシア・ワールドカップ本番へ向けての戦術はもちろん、レギュラーメンバーも8割方固定された印象だ。4-3-3で、オプションは中盤の三角形を引っくり返すしかない。トップもポスト役を配す以外に、最前線に動いて起点を作るなどのバリュエーションを加える様子はなく、大迫勇也の控えは杉本健勇が濃厚だ。

 今回2戦を通じて立証されたように、GK川島永嗣から4人の最終ライン、MFでは井手口陽介、山口蛍、左FWの原口元気、そして大迫は当確。中盤は長谷部誠のコンディション次第では、新しい戦力が食い込む余地があるが、ここにも創造的なタイプが優先される確率は低い。直前の国内2戦でゲームを組み立てた小林祐希を外した経緯を考えても、今回初招集の森岡亮太がポジションを確保するとは思えず、今のところ長谷部の代役に最も近いのは長澤和輝だろう。また右FWは久保裕也と浅野拓磨を併用中だが、本番での対戦相手との力関係を考えれば裏を狙える浅野の起用が増えそうだ。
 
 基盤になるのはデュエルでしっかり戦う隙を作らない守備で、奪ったボールは直線的にゴールへと運ぶ。攻撃はリスク回避を最優先し、パスの出しどころを失うと、最終ラインからの縦へのロングフィードが目立った。
 
 ベルギーを「大きなライオン」と見れば大善戦になるが、指揮官がワールドカップ予選でのオーストラリア戦の初勝利を「歴史を作った」と殊更強調するなら、この対戦も初黒星ではある。確かに相手のミス絡みで何度かのチャンスを迎えたが、意図して組織的に崩したものは少ない。その点では、4年前にブリュッセルで勝利した同カードと比べれば、当然内容も後退している。率直に本大会へ向けて、惨敗を避けるという意味で善戦する準備は整いつつあるが、客観的には規律正しいハードワーク以上のインパクトを残すのは難しい。
 
 ただし指揮官は、そこでベクトルを合わせるしか世界に食い下がる道はないと見ており、スターなき代表はボールの落ち着きどころを失くしながらも、ひたすら献身的なファイトを続けている。
 欧州目線のヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、日本の弱点が気がかりで、とにかくそこを打ち消す作業に傾注してきた。短所矯正から入り、長所が見えて来ないから、苦悩と焦燥が募り、日本サッカー界に気を配る余裕もない。ほんの少しでも目に留まる選手がいれば、すぐにでも手もとに呼び寄せたくなる。
 
 今、浦和のアジア王座挑戦はファンの大きな関心事だが、その大一番を控えたチームから西川周作、興梠慎三を連れ出しながら起用せず、遠藤航も5分間のみ。さらに長澤も2戦目の起用で、これではもはや代表監督と日本サッカー界の思惑は、まるで乖離しているようにしか見えない。
 
 かつてアジアでも「堅守速攻」でしか戦えなかった日本は、世界に出ても「前からチャレンジ」をするようになり、ジーコやアルベルト・ザッケローニ時代には「主導権」さえも手に入れかかった。だがハリルホジッチ監督は、いくら支配してゴール前に運んでも決め切れない日本を見て、それが武器にならないと見極めた。それから諸事情もあり、香川真司、宇佐美貴史、清武弘嗣らのタレントが去り、ハードワーカーが残った。
 
 もちろんハードワーカーの質も相当に高まってはいるが、まだ世界を驚かせるほどの特別な才には見えない。それでも指揮官は「ゲーム支配」に見切りをつけ「闘う」グループでロシアへ向かう。世界の中での立ち位置を考えても、初出場のフランス大会に似た我慢のチャレンジになりそうである。
 
文:加部 究(スポーツライター)