イラスト/びごーじょうじ

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 吉行あぐりは日本の美容師の草分けで、1997年4〜10月に放送されたNHK連続テレビ小説「あぐり」のヒロインのモデルとなった。

 明治四十年、岡山県生まれ。女学校に通っていたころ、当時流行したスペイン風邪で父と姉を失い、一家は路頭に迷ってしまう。その時、

「学校に行かせてあげるから」

 とすすめられ、十五歳で詩人の吉行エイスケと結婚。十五歳で結婚というのは当時としても珍しかった。結局、学校には戻れなかったのだが、やがて長男、吉行淳之介を授かる。

 先に東京で暮らしていたエイスケを追うように上京するが、才能ある放蕩(ほうとう)人で知られた夫はほとんど家にいることがなかったので、彼女は1人、家に取り残されてしまった。

 そんなある日のこと、あぐりは新聞で米国帰りの美容師・山野千枝子の「お弟子さんを募集」という求人広告を見つける。興味を持った彼女は山野に弟子入りし、美容師修業を始める。日本の美容師の草分けとなる吉行あぐりが生まれた瞬間だった。

 女性が外で働くという考え自体がなかった時代、修業は厳しいものだったが29(昭和4)年には独立。「山ノ手美容院」という店名で、経営にはエイスケが当たった。35年には女優となる吉行和子を、39年には次女の吉行理恵を授かる。理恵が1歳の時、夫エイスケが狭心症のために亡くなるが、悲しんでいる暇はなかった。死後、夫の多額の借金が明らかになったからだ。彼女は懸命に働き、借金を返済、美容室も手放さずに済んだ。

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