入江悠監督、出発点になったのは北野武映画の“暴力” 『ビジランテ』日本外国特派員協会レポート

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 12月9日に公開される映画『ビジランテ』の記者会見が、日本外国特派員協会にて11月14日に開催され、入江悠監督が登壇した。

 本作は、『22年目の告白−私が殺人犯です−』の入江悠監督が手がけたバイオレンスノワール。歪みを抱える地方都市、別々の世界を生きてきた三兄弟が再会したことで、人間の欲望、野心、プライドが衝突し、狂気に満ちた社会の裏側に引きずり込まれていく模様を描く。三兄弟を大森南朋、鈴木浩介、桐谷健太演じるほか、篠田麻里子、嶋田久作、間宮夕貴、吉村界人、菅田俊、般若がキャストに名を連ねた。

 本作制作のきっかけについて入江監督は、「2年前に江戸時代を舞台にした時代劇を制作したときに自分の家族を遡って調べて、家系、家、血について考えることがきっかけでした」とその経緯を説明した。

 『ビジランテ』というタイトルについては、「もともと自警団という存在にとても興味がありました。それと個人的な問題なのですが、私は、集団生活が苦手で“集団”にとても恐怖を感じる人間なんです。『ビジランテ』は三兄弟が主人公になっていますが、個人を飲み込んでいくようなコミュニティだったり、力を描こうと思ったときにこのタイトルを思いつきました」と語り、さらに「関東大震災のときに日本の自警団が自発的に発生して私の地元の方でも事件を起こしたという歴史があって、それを20代のときに知りました」と、かつての歴史がタイトル決定に影響を与えたことを明かす。

 入江監督は10代のころに北野武監督のバイオレンス描写に衝撃を受けたという。「人を傷つけることはこんなに痛いことなんだとか、人を追い詰める暴力はこうやって派生するんだとか、そういうものを学びました。暴力とは何なのか、人を傷つけるとはどういうことかを自分の中で追及したい気持ちがありました。肉体的な痛みだけではなく精神的な痛みもあると思うのですが、今まで避けてきたそういうものを『ビジランテ』に込めました」と、本作への思いを語った。

 最後に本作の“希望”について聞かれると、「個人を飲み込んでいく集団のメカニズム、経済の合理性のメカニズムという“暴力”を映画で捉えられないかと思いました。この映画を観て、自分だったらどう行動するか、映画館を出た後に少しでも考えてもらえたらうれしいです。マリオ・バルガス・リョサという作家がボヴァリー夫人を論じた本があって、そこで「ボヴァリー夫人が死ぬことは私たちの希望だ」と書いていて、それを読んで自分の中で腑に落ちるところがありました。「作中の人物が読者である私の代わりに死んでいった。私に訪れるかもしれなかった未来を先取りしている」という意味で、リョサは救いだと言っています。そのように『ビジランテ』を観てくれる人がいたらうれしいです」と語り、会見を締めくくった。(リアルサウンド編集部)