朝稽古に向かう日馬富士=福岡県太宰府市の伊勢ケ浜部屋

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 幕内優勝9回を誇る大相撲の横綱日馬富士(33)=伊勢ケ浜=が14日、幕内貴ノ岩(27)=貴乃花=への暴行を認めて謝罪した。10月下旬の秋巡業中、鳥取での宴席で酒に酔い、ビール瓶で頭を殴打した。貴ノ岩は前日、「右中頭蓋(がい)底骨折、髄液漏の疑いなど全治2週間」の診断書を提出。すでに鳥取県警に被害届も提出している。日本相撲協会は危機管理委員会を招集し、真相解明に臨む。度重なる暴行事件を起こしてきた角界。10年には元横綱朝青龍が暴行事件を起こして引退しており、日馬富士も進退問題に及ぶのは避けられない。

 九州場所中の大相撲に激震が走った。先場所、大逆転優勝しファンを感動させた横綱日馬富士に暴行事件が発覚。この日の朝稽古終了後、報道陣に囲まれ事実関係を認めた。

 「貴ノ岩のケガについては貴乃花親方、貴乃花部屋、貴乃花部屋後援会の関係者の皆様、相撲協会、うちの部屋の親方に大変迷惑をかけたことを深くおわび申し上げます」と頭を下げて謝罪した。

 初日から休場している貴ノ岩は前日、「脳振とう、左前頭部裂傷、右外耳道炎、右中頭蓋底骨折、髄液漏の疑いで全治2週間」の診断書を提出していた。

 事件は秋巡業中の10月25日、鳥取で開かれたモンゴル出身力士が多数集った宴席で起きた。席には両者のほか横綱白鵬、鶴竜、鳥取城北高相撲部出身の関脇照ノ富士ら10人前後が参加。1次会から盛り上がったが、2次会に入ったところで雰囲気がガラリと変わった。

 貴ノ岩は兄弟子に対するあいさつが足りないと、日馬富士から日々の態度について注意を受けた。その矢先、貴ノ岩の携帯電話が鳴った。操作しようとスマートフォンを手にした瞬間、日馬富士が激高。ビール瓶で頭部を思い切り殴打し、流血して倒れた相手にのしかかってさらに素手で20〜30発殴り続けた。

 「『ゴーン!』という大きな音が聞こえた。貴ノ岩は両手で防ぎながら、殴られ続けていた」と同席者。騒動の中で照ノ富士も4発食らったという。酔いが回った横綱は荒れに荒れた。止めに入った白鵬まで突き飛ばし、後輩横綱の鶴竜には「おまえがしっかり指導しないからだ」と当たり散らした。まさに酩酊(めいてい)状態での暴行劇であった。

 この日、双方の師匠が協会に呼ばれ、事情を聴取された。その場を含め、日馬富士の師匠・伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)は貴ノ岩の師匠・貴乃花親方(元横綱)に3度、謝罪を入れた。

 貴乃花親方はすでに鳥取県警に被害届を提出しており、「取り下げるつもりはない」という。県警は事実関係の調査を進めており、日馬富士が今後、聴取を受けるのは確実。協会は危機管理委員会を招集し、真相を究明していく考えだが、重い処分は避けられそうにない。

 角界は暴力事件を繰り返してきた。07年、時津風部屋で新弟子の17歳がリンチを受け死亡。この時使われた凶器もビール瓶だった。10年には元横綱朝青龍が一般人を暴行し、引退に追い込まれた。横審からは引退勧告も出された。今回も引退勧告にまで及ぶことは十分にある。

 日馬富士は「左上腕骨内側上果炎、左尺骨神経痛で約6週間の加療を要する」の診断書を出し、3日目のこの日から途中休場した。普段は穏やかながら激高し手も出る性格、酒癖の悪さは以前から指摘されてきた。12年秋場所で横綱昇進を決めた後、綱打ちの際には缶ビールを飲みながら取材対応し、品格を問われたこともある。力士の手本となる横綱の不祥事。今の相撲人気復活に力を注いできた力士、関係者に泥を塗る愚行でしかない。