1−3で敗れたブラジル戦。このメンバー、このサッカー、つまりその両方を選択する権利があるハリルホジッチには期待が寄せられない。ロシアW杯での結末は見えていると改めて言い切りたくなる、スコア以上の大きな差を感じさせた試合だった。

 前半3−0で折り返したブラジルは、後半も同じように3点奪って、6−0で勝つような真似をしない。弱者を立ち直れないぐらい踏みつける行為はしない。武士の情けではないが、強者になればなるほど、相手を丁重に扱おうとする。親善試合の嗜みを知っているのである。

 試合後、楽観的な態度を振りまいたハリルホジッチだったが、かつてユーゴスラビア代表のセンターフォワードとして活躍した彼をリスペクトするならば、ブラジルから武士の情けを掛けられたことを、日本サイドで一番理解しているはずなのだ。強気を装い、楽観的に振る舞おうとする姿は、サッカーマンとしてのレベルを自ら貶める行為だと言える。

 だが一方で、期待できそうもないものを、期待できそうなものに見せようとしなければ、自らの立場は危うくなる。虚勢を張らず、惨敗を素直に認めれば、ギブアップと見なされる。

 この矛盾にハリルホジッチは苛まれているのではないか。内面が透けて見えることも、痛々しく映る原因だ。監督交代のタイミングを迎えているというべきだろう。

 ところが、そう声高に叫ぶことに若干、躊躇いたくなることも事実。本番まで残り7、8ヶ月というこの段で、監督交代を行うことにリスクを覚えるからではない。サッカー協会の探す力に、疑問を抱くからだ。

 田嶋幸三会長がその座に就いたのは昨年の1月。西野朗技術委員長は、同年の3月だ。代表監督を招聘した経験は一度もない。過日、森保一氏を五輪チームの監督に招聘したが、その理由、経緯ともに曖昧だった。田嶋会長は、サンフレッチェ広島時代に残した実績と育成する力を理由に挙げたが、戦う相手は世界だ。しかも日本のレベルは決して高くない。にもかかわらず、自国開催なので、目標をメダル獲得に据えなければならない。今回の五輪監督の仕事は難題だ。そこで不甲斐ない成績を収めれば、サッカー人気の低下を招くことは見えている。

 W杯を目指す代表監督を探すことと同じぐらい、いやそれ以上に重要な話なのだ。今回の五輪代表監督探しは、まさに大仕事。W杯を目指す代表監督と同じレベルの人材でないと、難題を克服してくれそうな期待は抱けない。ハリルホジッチが五輪監督でも不十分なのだ。

 ハリルホジッチの代役探しに、大きな期待を寄せられない理由だ。

 無理を可能にする力を備えた監督。ハリルホジッチを凌ぐ監督を見つけ出してくるパワーがいまの協会にあるのか、はなはだ怪しい。

 とはいえだ。一番マズいのは、このまま沈滞ムード増すばかりのハリルホジッチでW杯に臨み、静かにグループリーグで敗退するであろう姿を、手をこまねいて見ていることだ。

 ブラジルに敗れた後、再び本田圭佑、香川真司、岡崎慎司を呼び戻した方がいいのではないかとの声が巷でちらほら囁かれているが、それは後ろ向きの声以外の何ものでもない。変化は前向きでなければならない。

 誰でもいいと言うわけではないが、代表監督は変えるべき。変えることでチームに変化がもたらされる。新しい価値観が芽生えることになる。にっちもさっちもいかなくなった現状を踏まえれば、これがもっとも効果的な改善策。新鮮な空気を代表チームに送り込むことが、いまはなにより重要なのだ。それで、本田、岡崎、香川らが必要だというのなら、話は後ろ向きにならない。彼らをハリルホジッチが呼び返すのと、新監督が呼び返すのとでは、話は全然違う。ストーリーに新鮮みが出る。期待感が生まれるのだ。