ビートたけし

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茂木健一郎氏の炎上ツイート

 長く続いたフジテレビの「めちゃ×2イケてるッ!」「とんねるずのみなさんのおかげでした」が来年3月で終了すると報じられた。かつて高視聴率を誇った両番組の終了は、テレビにおけるお笑い、バラエティ番組のあり方を考えさせる出来事である。

 こうした状況を、ビートたけしはどう見ているのか。新著『バカ論』の第4章「バカがテレビを語っている」では、シリアスなテレビ論、お笑い論が展開されている。それこそテレビでは滅多に聞く機会がない、たけしの正論を紹介してみよう(以下、引用は『バカ論』より)。

 まず取り上げているのは、今年2月に話題になった茂木健一郎氏のツイートだ。

「日本のお笑い芸人たちは、上下関係や空気を読んだ笑いに終止し、権力者に批評の目を向けた笑いは皆無。後者が支配する地上波テレビはオワコン」

ビートたけし

 お笑い芸人から猛批判を浴びたこのツイートについて、たけしはこう語っている。

「茂木さんの言うことの半分は当たっていて、半分は『何を言ってんだ』という感じだな。自分で『素人が口出ししてしまって……』と認めているけど。内情を知らずに物を言ったからおかしくなる」

 わかっていない、とたけしが指摘する最初のポイントは、「権力者に批評の目」を向ける風刺精神がない点を欠点のように茂木氏が言っている点だ。

「確かにアメリカやイギリスのテレビを見ると、大統領や王室をじゃんじゃんネタにして笑いを取っている。それも場末の芸人がどこか寂れたショーパブでやっているんじゃなくて、モンティ・パイソンとかサタデーナイトライブとか、その国を代表するコメディアンや国民的人気番組がやっているんだから、日本の芸人やテレビ番組も、もっとやれ、と言いたくなる気持ちもわからないでもない」

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お笑いイコール風刺ではない

「お笑いは反権力であるべきだ」といった主張は茂木氏に限らず目にすることが多い。こうした主張にたけしは一定の理解を示しながらも、こう語る。

「でも、お笑いというのはもともとピエロなんだ。

 ピエロのルーツは道化師で、中世ヨーロッパの宮廷に仕えて、王様のお抱えだった。王様をネタにして笑いを取るんだけど、一方で、媚を売っているところもある。つまり笑いを取る=権力批判かというと、そうは単純じゃない。

 芸人には、もともとそういった両義的な部分があって、ただ単に笑いのネタにすれば、立派な社会批判になるかというとそうではなくて、ネタにして笑い飛ばしながら、愛嬌振りまいているところがある。

 そのことはまず押さえておいた方がいいと思う」

皇室批判もOKか

 さらに、イギリスの公共放送であるBBCでは、王室も笑いのネタにしているが、果たして日本で同じことができるのか、と問う。それを許容するのだろうか、と。

「皇室をネタにするのはダメだけど、政府ならばいくらでもOKというのは、ダブルスタンダード。それだと不公平になる」

 日本ではかつて皇室風刺の作品がもとで人が亡くなる不幸な事件が起きたことがある。イスラム圏でも、同様の事件が起きている。その是非は別として、それぞれのお国柄を考慮しないで、単純に「権力をネタにしていない」と外野が批判するのは、「やっぱりちょっとおかしい」と言うのである。

予算とオワコン

 権力者との関係性に関しては茂木氏の主張はあまりにステレオタイプなのかもしれない。が、それ以外の面でも「テレビはオワコン」と感じている人は茂木氏に限らずいるはずだ。

「最近のテレビはつまらない」といった声は、世代を超えて発せられている。その点について、実際に第一線で活躍し続けているたけしはこう語る。

「そう言いたくなるのもわからなくはないんだけど、今はテレビ不遇の時代なんだ。

 理由のひとつは、単純で、景気の問題。

 景気が悪いから、昔はふんだんにあった予算が取れなくなった。以前はコントのセット一つ作るのに何千万円もかけてやっていたけど、今はそれだけの予算があれば、バラエティ番組が何本も撮れてしまう。

 そういった状況も当然考慮しなければいけない。もちろんテレビはアイデアが第一で、予算を掛ければ面白くなるとは限らないけど」

 出ている芸人も、「本当はこんなことをやりたくない」と思うことも多いのだという。

「バラエティ番組で、芸人は漫才やコントをやるわけじゃなくて、わけのわからないタレントと一緒になってひな壇に座らされる。そうした状況の中で、一瞬のコメントで笑わせなければいけないんだから、なかなかハードルが高い。

『頼むから俺たちに芸をやらしてくれ』って、芸人の奴らは、みんなそう思っているはずなんだ。

 もちろん中には、ひな壇に上がってこそ勝負できるタイプの芸人もいる。それはそれで適者生存の法則に従っているわけだから、否定をするつもりもない。

 客をネットやスマホに奪われて、視聴率が低迷して、スポンサーもつかない。そうすると予算が取れないから、じゃんじゃんじゃんじゃんやることが小さくなってきちゃう。

 テレビが悪い循環に陥りそうになってきているのが今なんだ」

 この悪循環に追い打ちをかけているのが、誰もが「批評家」になる風潮だという。「一億総批評家時代」に関するたけしの見解は次回、ご紹介しよう。

デイリー新潮編集部

2017年11月14日 掲載