一般家庭でも手軽にコネクティッド・ロックを導入できるtsumugの「T!NK」を紹介!

コネクティッド・ロックの開発および関連サービスを手がける企業、tsumug(ツムグ)は9日、コネクティッド・ロック「T!NK(ティンク)」シリーズの第1弾として「T!NK C」と「T!NK E」を発表、同日より発売を開始しました。T!NK Cは個人宅用、T!NK Eは集合住宅の集合玄関キー用となっています。

端末価格は一般家庭用が49,900円、パートナー企業向けキャンペーン料金が無料。この他に初期設定費用として9,800円、月額利用料として月額500円が掛かります。また「帰宅お知らせ機能」や「シニア見守り機能」などのオプションサービスはそれぞれ月額300円の追加となります。

コネクティッド・ロックとはいわゆる電子式錠前であり、スマートフォン(スマホ)などを“カギ”として用いる「スマート・ロック」のことです。これまでにもスマート・ロック関連製品は業務用を中心に他社からも販売されていますが、本製品にはどのような特徴があるのでしょうか。秋葉原発のベンチャー企業が目指す未来とその展望を交えつつ、写真とともに紹介・解説します。


T!NKがめざすスマート・ロックの未来とは


■新進気鋭、アキバ発のベンチャー企業!
本製品を開発した企業「tsumug(ツムグ)」は、東京・秋葉原を拠点としさまざまなベンチャー企業を支援・起業させている「DMM.make AKIBA」から生まれた企業です。DMM.male AKIBA設立当初からのスタートアップ企業の1つでもあり、本製品の発表までに3年を費やしたとしています。


tsumug 代表取締役社長 牧田恵里氏



DMM.make AKIBAのある富士ソフト秋葉原ビル


tsumugという社名について、牧田社長は「1人でできることは少ない。だから人をつなげて“紡いで”行きたいという想いから『tsumug(ツムグ)』という社名にした」と語ります。DMM.make AKIBAのビル内にはオフィスだけではなく小さな工場もあり、資金の少ないベンチャー企業でも試作品の開発や研究を行える体制を整えていることが、今回の製品開発に繋がったとしています。

T!NKの開発にはアライアンスパートナーとしてシャープが携わっており、tsumugは同社の量産アクセサレーションプログラム第1号企業となります。同社は資金的な支援だけではなく、これまで培ってきた量産設計や品質管理、信頼性の確保などの「モノづくりの知見とノウハウ」を活用・提供していくとしています。


シャープが持つ長年のモノづくりのノウハウがベンチャー企業を育てる


■LTE通信モジュールを内蔵し高い安全性を確保
T!NKが持つ大きな特徴の1つがLTEモジュールを内蔵し単体でLTE通信を行える点です。

一般的なコネクティッド・ロック(スマート・ロック)ではその通信方式にWi-Fiなどを用いる場合が多く、セキュリティー面で不安がありました。本製品では手元のスマホとダイレクトにLTE通信を行うため、通信を傍受されたり中継ルータの故障などのリスクが大幅に下がっています。

LTE通信とその関連技術には、さくらインターネットが提供するIoTプラットフォーム「sakura.io」とafeloが提供するIoT向けクラウドサービス「afelo」が採用されています。

また通信モジュールにはsakura.ioのプロトコルライセンスの提供を受け、低消費電力を実現したtsumug製オリジナル通信モジュールを開発・搭載しています。この取り組みもまた、さくらインターネットのプロトコルライセンスを導入した第1号プロダクトとなります。


LTE通信による高い安全性をアピールポイントとしている



afelo CEOのJeo Britt氏はtsumugのアドバイザーにも就任している


■T!NK開発のきっかけは社長の実体験から
プレゼン冒頭で、T!NKを開発するに至ったきっかけは牧田社長の実体験からだと語ります。当時1人暮らしをしていた牧田氏は、仕事から自宅へ帰った際に自宅の中の様子に誰かが入ったような違和感を覚え、不安なまま調べてみたところ、別れた彼氏が勝手に合鍵を作って入っていた、という事実を知ったと言います。


1人暮らしの女性にとって、勝手に合鍵を作られて部屋に入られていたなどというのは何よりも恐怖だろう


こういった不法侵入の事例は把握されているだけでも年間約7500件にも上り、把握されていない実態はその数倍になるのではないかと牧田氏は解説します。同じくストーカー被害についても年間2500件以上を数える年もあるとして、こういった被害や事案から人々を守れないだろうか、というところからT!NKを発想したそうです。


合鍵がなくとも技術次第ではほんの数分で開けられてしまうのも物理的な鍵の問題点だ


本製品をLTE通信内蔵型としスマホを鍵とすることで、さまざまな用途が提案できるようにもなりました。前述のような「別れた彼氏に勝手に入られたくない」といった場合でも手元のスマホ操作で簡単に「鍵」として利用できるスマホを設定・解除可能で、一時的な訪問者へワンタイムキーを発行することもできます。


別れた同棲相手とも綺麗さっぱりサヨーナラ!



オプション機能の「帰宅お知らせ機能」では指定したキーでの施錠・解錠をスマホなどへ通知してくれる



「シニア見守り機能」では、同じく指定したキーによる施錠・解錠を検知し、設定した時間までに操作がなかった場合に通知してくれる



コネクティッド・ロックが安心・安全の分野で果たせる役割は大きい


またSNSアプリ「LINE」を用いたプッシュ通知に対応しており、自宅のキーパネルを誰かが操作した場合に通知する機能も備えており、不法侵入などが試みられた記録が残る点も大きなメリットです。


実際に解錠操作などを実演する牧田社長



間違った番号を入力するとスマホへ異常検知の通知が届く



スマホ側での操作も検知しているため、スマホを持たない状態で扉側のキーを操作するとこのようなメッセージが通知される


■誰でも簡単に取り付けられる導入のし易さもポイント
T!NK本体は扉外側に取り付けるリーダー部と内側のボディー部とに別れており、配線や取り付けネジ以外は物理的に内部と外部が繋がっていないため、サムターン回しなどの物理的な解錠に非常に強い構造となっています。

扉への取り付けの容易さも売りの1つとなっており、プレゼンでは牧田社長自らが扉の模型にT!NKを取り付ける実演を行いました。


T!NKのリーダー部(左)とボディー部(右)



一般的な鍵の交換作業と殆ど何も変わらない


駆動には専用のバッテリーパックが用いられ、扉内側のボディー部に2つセットされます。それぞれのバッテリーパックは排他的に利用され、1つのバッテリーパックで1〜2ヶ月、2つで2〜3ヶ月の利用が可能とのこと(施錠・解錠操作の頻度による)。バッテリーパックは専用の充電器で充電でき、ボディ部中央のインジケータによってバッテリー残量を確認することができます。


バッテリーは1個4000mAh。ボディー部へ縦に2個並べて挿入される



バッテリーパックはボディー部横から簡単に抜き差しできるようになっている


バッテリーパック以外にも本体に緊急時用の内蔵バッテリーがあり、万が一、2つのバッテリーパックが空になってしまっても施錠・解錠ができる仕組みになっているほか、長期出張などで長期間留守にする場合にはさらに消費電力を抑えるモードに切り替えることで対応可能とのことです。


バッテリーパックおよび充電器はそのままモバイルバッテリーとしても利用可能で、牧田社長は普段からこれを持ち歩いているとのこと


■T!NKが想像するコネクティッド・ロックの未来
牧田社長はT!NKが生み出すサービスや今後の未来についても語り、家電品と連動した施錠・解錠操作や宅配業者と連携した荷物の運び入れサービスなど、さまざまな活用法も提案。今後パートナー企業を増やしながらアイデアを実現していきたいとしています。


スマート・ロックを用いた屋内配達はAmazonも「Amazon key」として米国で試験導入を始めているが、安全面の課題もまだまだ多くある


シリーズ第1弾の製品ではカメラを内蔵していませんが、今後外部カメラとの連動なども視野に入れており、シリーズ製品ではリーダー部などにカメラを内蔵することも検討しているとのこと。

またセキュリティー面での強化策として保険会社と連携した専用の保険や警備会社との連携なども検討されており、荷物の屋内配送や不審者対策にも力を入れていくとしました。


解錠時にUSBカメラを連動させて録画するなどの案が検討されている


プレゼンでは具体的なビジネスモデルも発表され、2021年度末までに100万世帯(100万室)への普及をめざすとしています。パートナー企業には不動産経営のアパマンホールディングスやネットオークションのメルカリが挙げられ、アパマンホールディングス 代表取締役社長の大村浩次氏やメルカリ 取締役CPOの濱田優貴氏が登壇しT!NKの導入メリットやtsumugへの想いを語りました。

アパマンホールディングスはT!NKの大手導入先として、メルカリは自転車のシェアサービス「メルチャリ」のセキュリティーキーシステムとしての導入が予定されています。


「ひしひしとこういったニーズを感じていたが、これまで情報不足だった。生活+αで価値を高めていくことに対し、とても夢があるアイデアです」と嬉しそうに語る大村氏



「アパマンショップ」のブランドで全国に約130万戸の取扱物件を持つ



T!NKを武器にシェアサイクルサービスに乗り出すメルカリ


■熱意こそが成功するための「鍵」だ
牧田社長の実体験から生まれたT!NKは、これまでのスマート・ロックをさらに一歩発展させたコネクティッド・ロックとして製品化されました。単なる物理鍵の電子化ではなく、クラウドサービスやさまざまなソリューションと組み合わせることで新たな価値観やニーズを生み出そうとしています。

発表会の後半では関係者によるパネルセッションが行われ、「スマート・ロックに未来はあるか」と題してさまざまな意見が出されましたが、そのセッションの中からさくらインターネット 代表取締役社長の田中邦裕氏が述べた印象的な言葉を最後に紹介したいと思います。

「経営戦略だとか生産計画だとか、失敗しないための必要条件を揃えても“成功”はしない。成功は人のつながりと熱意と運です」

人をつなげ、紡いでいきたいという想いから始まったtsumugのチャレンジは、まさに成功するために必要な「キー」の1つであり、それを支える人々や企業は「失敗しないための必要条件」なのではないでしょうか。


熱意に人が集まる。そんな起業精神に心躍るのは筆者だけだろうか


記事執筆:あるかでぃあ


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