米ウォールストリート・ジャーナルが伝えるところによると、米アマゾン・ドットコムでは、このほど、書店やスーパーマーケットなどの実店舗事業と、生鮮食料品などの即時配達事業を統合した。そして、長年、ジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)の直属の部下として実績をあげてきた、スティーブ・ケセル氏という幹部がその責任者になったという。

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Prime Now、AmazonFresh、ホールフーズを連携

 アマゾンは今年(2017年)8月に米高級スーパーマーケットチェーン「ホールフーズ・マーケット(Whole Foods Market)」の買収を完了したが、その直後から、プライベートブランド商品のネット販売や、有料プログラム「Prime(プライム)」会員の店舗内特典などを展開。さまざまな相乗効果を狙って、実店舗とeコマースの融合を進めている。

 こうした中、アナリストらや業界関係者は、今後、アマゾンがどのような戦略を打ち出すのかと注目している。

 ウォールストリート・ジャーナルによると、ケセル氏がこれから責任者を務めていくのは、Prime会員向けの1時間以内配送「Prime Now」、同じくPrime会員向けの生鮮食料品ネット販売「AmazonFresh」。これらのeコマース事業に加え、買収したホールフーズ・マーケット、アマゾンの書店事業「Amazon Books」、実験中のレジ不要のコンビニエンスストア「Amazon Go」といった実店舗戦略も同氏が統括する。

 こうした新組織体制でアマゾンが、ネット事業と実店舗事業をどう改革していくのかは今のところ分からない。だが、同社最高財務責任者(CFO)のブライアン・オルサブスキー氏は、先ごろの決算発表時、「我々は、これまでと異なるサービスの提供方法を研究しており、Prime Now、AmazonFresh、ホールフーズの各事業間では、これまで以上の連携や協力が見られるだろう」と述べていた。

 アナリストの中には、アマゾンが、Prime Now、AmazonFresh、ホールフーズ・マーケットの食料品サプライチェーン(仕入れ網)を統合したり、ホールフーズ・マーケット商品の即時配達を行ったりするのではないかと、予測する人もいるとウォールストリート・ジャーナルは伝えている。

Kindle開発の責任者だった人物がAmazon Booksを立ち上げ

 興味深いのは、ケセル氏の経歴だ。

 同氏は、これまで、アマゾンのデジタルコンテンツ(電子書籍や音楽配信)事業を統括したほか、電子書籍端末「Kindle」などのハードウエア製品の開発チームも率いた。

 2011年にタブレット端末「Fireタブレット」を市場投入した後、しばらく休職していたが、2015年に復帰すると、書籍販売の実店舗事業に取り組み、この年の11月、アマゾンは、Amazon Booksの1号店を、米ワシントン州シアトルにオープンした。

最新テクノロジーで店舗を改革

 また、ウォールストリート・ジャーナルによると、ケセル氏は前述したAmazon Go事業の幹部でもある。Amazon BooksとAmazon Goは、テクノロジーを駆使した店舗作りといった点で共通する。例えば、Amazon Booksでは、書籍の価格表示がなく、顧客はスマートフォンで商品バーコードをスキャンし、価格などの書籍情報を得る。これにより、アマゾンは顧客の購買行動などを分析している。

 一方、Amazon Goでは、自動運転車にも利用されている、コンピュータビジョン、ディープラーニング・アルゴリズム、センサーフュージョンといった技術を使い、買い物客がどの商品を手に取ったかを認識。自動で客の仮想ショッピングカートに商品を入れ、客が店から出ると、アマゾンアカウントで自動精算する。

 今回の報道に先立ち、「ホールフーズ・マーケットは、アマゾンの戦略や最新テクノロジーによって、販売形態が大きく変わる可能性があり、それを知るうえでヒントとなるのは、Amazon Booksだ」と、ウォールストリート・ジャーナルは伝えていた。

(参考・関連記事)「Amazon Booksに垣間見られる実店舗展開」

 今後、ケセル氏が、実店舗に加え、Prime Now、AmazonFreshを統括することで、アマゾンの小売り分野における技術革新の動きが、加速するのかもしれない。

筆者:小久保 重信